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2009年のわたくしごと


DCマイク使用ソフト新旧

 書くのは遅くなりましたが、私も、ご多分に漏れず、というか、遅れをとってはならじと、というか、ともかくも聴いてみました。
 五島さんが録音に関わったこれらのソフト、確かに鮮度の高いとても自然なサウンドですね。無指向性マイクを使った新しいDCマイクシステムへの期待が否が応でも膨らみます。もっとも、個人的には、録音機を使う必要に迫られる状況からはひとまず離れてしまったので、製作のモチベーションはやや低いのですが。

 写真の“INTERBEING”と「試聴会音源ディスク」の下に見えるLPレコードですが、実はこれもまた録音にDCマイクが使われたものです。
 アニタ・オデイがピアノのみをバックに歌った日本録音のアルバム“MISTY”です。MJのスタッフ製作になるDCマイクが伴奏のピアノ用に使われているそうで、MJ誌'82年5月号にそのレコーディングの様子がレポートされています。レコーディングエンジニアは及川公生さん。当時、若林駿介さんらとサウンドレコパルにたびたび登場していましたね。

 音は、ダイレクトカットであることも相まって、これまた自然で鮮度の高い音です。もっとも、ボーカルは別のマイクで録られていますから、録音形態としてはマルチマイク録音の範疇に入るのでしょう。

 ところで、同号MJにはフィデリックスの中川伸さんによる「オリジナルモーターで駆動したエアー・フロートプレーヤーの製作と実験」という記事が載っています。
 この中で中川さんは、ターンテーブルのドライブ方式と音質についての見解を述べておられます。当時主流のDCサーボモーターによるダイレクトドライブの音質上の問題を指摘しつつも、「ダイレクトドライブ自体は理想に近いのではないかと思う」とあります。ただし、この文の前には「一周あたり100極ほどの極数を持ちサイン波でドライブできるDCモーターかエディカレントモーターで、しかもサーボ回路をアンプ技術者が設計したとなると」という条件が付けられています。してみると、SP-10用60スロットDCモーターのK式制御はかなりこれに近そうではありませんか?
 ちなみに、これはDCアンプシリーズNo.80「ヤマハGT-2000用モーター制御アンプ」発表の2年と3ヶ月前の記事ということになります。


2009.12


パワードスピーカー購入

 新しいスピーカーを買いました。といってもメインに使うものではなくて、Macのお供にSONY SRS-M50です。かのエガワ先生が首からぶら下げて聴いておられたやつ。PCで音楽を聴く気もなかったのですが、録音したものをデジタルデータの形で取り扱うことが多くなってくると、手軽に聴いて確認するにもPC本体内蔵のスピーカーではちょっとさびしく感じられるようになりまして。

 音量はとれませんが、音は晴れやかで、インチキ臭いけど低音もそこそこ出ているっぽく感じさせてくれ、それなりに楽しく聴けます。
 web上の情報によれば、付属のスイッチング式ACアダプターを使うとキーンというノイズが出ることがあるようです。内臓のD級アンプのPWMの周波数と電源のスイッチング周波数で干渉でも起きてるのかな? ま、私の場合ACアダプターは邪魔くさいので、どのみち電池で運用しますから問題なしです。単4アルカリ乾電池3本で40時間ほどもつということなので、のべつ聴いているわけではない私の使い方なら、これで十分実用的です。

 

2009.8


SDCでバランス出力プリは

 CERENATEはバランス入力を備えています。長岡氏も金田氏もバランス伝送は本質的に音が悪いと主張していたような…中川さんの見解はどうなのでしょう? わざわざ設けているということは、少なくとも否定的ではなさそうです。
 ところで、K式にも、そういえばあるじゃないですか、バランス出力のプリアンプ回路が。そう、No.200のADCのアナログ部分の“SDC”です。あれをもとにプリアンプを作ってみたら面白いかも、なんてことを思いつきました。
 が、あの回路にはちょっと疑問が…バランスを取るために出力の片側だけに1.1kΩをぶら下げるあたり、どうもすっきりしません。バランスを取るために条件をアンバランスにしなくちゃいけないというのは本質的に何かおかしいのではありますまいか?

 というわけで、私なりにない頭を絞って回路のリクツを考えてみました。ら、それらしい結論が得られたのですが、これでいいのかどうか、識者の方のご意見をいただきたいところです。


2009.7


遠隔検知

 CERENATEはリモートセンシングという大きな特徴を持っていますが、これを使うようになって、いよいよその本来の能力を発揮しています。
 うちのスピーカーシステムは現状ネットワーク式ですので、リモートセンシングもネットワークの端子のところまでで、そこから各ユニットまでにはコイルやコンデンサー、アッテネーターが介在しています。それでも効果は明らかです。通常の接続とはどのように変わるかは中川さんが書いておられることまったくそのままなので、私が説明するまでもないでしょう。微妙なニュアンスがスピーカーから易々と表現されてしまうので、下に紹介したスタックスのヘッドフォンの出番が早々に激減してしまいました。
 今となっては、リモートセンシングを外して常用することは考え難いです。リモートセンシングを使わなくても十分いい音だったのですが、使った音を聴いた後では、使わないときの音はBGM用かなあ、という気がしてしまいます。そして、リモートセンシングを使って鳴らしているうちに、スピーカーシステムの音そのものがだんだん良くなってきたような気がしています。って、どこかで聞いたような話しですね。

 そのセンシングケーブルですが、現在はKHDのものを自分で加工して使っています。行きつけのパーツ屋で、目当てだった標準指定のフジクラのがなくて残念に思いながら買ってきたものでしたが、直後フジクラ以外の推奨品種の第1号として追記され、ガッカリが一転(^^)。

 ところで、センシングケーブルの使い方については、どうやら以下のことを守ったほうがよさそうです。

(1)スピーカーケーブルより長くしない。
(2)方向を左右ともそろえる(シースの文字がSP側からアンプのほうへ読める向き)。
(3)SP側の接続に下手なバナナプラグなどを使わない。

 実際これらの正反対のことをして、リモートセンシングの効果が十分に発揮されないのを経験しました。実は最初、リモートセンシングを手っ取り早く試したくて、こちらで入手したアセンブル済みのRG58Uのケーブル(メッキ線なので中川さんは推奨せず)を使ってみたのですが、それよりも良くなかった。
 特に(3)は変なものを使うとかなり音を悪くします。私は模型店で扱っていた「大電流(50A)対応」を謳ったものを使ってみたのですが、音は残念な結果でした。結局、写真のように3D-2Vの端末に付けたダイエイ20芯の引出し線の先にLANケーブルの0.65mmの素線をループにしてハンダ付けし、綿棒の綿玉の部分を抱かせてバナナプラグ穴に差し込むことにしました。ローコストで素直な音が得られ、お勧めです。先バラのままでSPケーブルと一緒にSPのターミナルで締め付けるほうが(うまく締め付けられるのなら)よいかもしれませんが、扱いやすいのがメリットです。


2009.5


汚れ落とし

 下で紹介したSTAX SRM-T1、一見美品のようでしたが、よくよく見ると微妙にパネル表面に曇りが…というわけで、実は本当に美品になるまでにはひと手間かける必要がありました。
 愛用しているツムラ・キッチンアクアショットをティッシュにちょいと吹いて、筐体を拭いてみると、はたして真っ茶色(嘆。ティッシュに付いた汚れを嗅いでみれば、やはりあのツンとした臭い。そうです、タバコでございます。あー、やれやれ。というわけで、そのまま小一時間汚れ落としに精を出すことになったのでした。

 しかし、このアクアショット、実に重宝します。本質的に水ですから、拭き終わって乾いた後に変な残留物がないのが何といっても有難い。中古レコードのジャケットのクリーニングにも大活躍です。
 棚に収められているレコードジャケットも、背の部分は部屋の空気に曝されている訳で、前所有者が喫煙者の場合まずヤニで汚れていますね。最近入手した写真の盤なども、触った感じがどうもザラザラネバくて嫌な感じだったので、拭いてみたところご覧のような有様でした。


2009.4


買い物オーディオその4

 K601がやってきてまだ日も浅いのに、さらにヘッドフォン関係の買い物をしてしまいました。先々月の終わりのことですが、もう勢いですわ(^^;。

 スタックスのSRM-T1。発売は'87年。現行品のドライバーアンプSRM-006tAの系譜の、これが初代と言える機種です。スタックスのヘッドフォン用の管球式ドライバーアンプをいずれ自作したいとかねてから思っていましたが、オークションに美品の出物があり、ついつい入札→落札。結局作る前に本家のを入手してしまいました。これでいよいよ自作が遠のいたっぽい…
 当時のフラッグシップ機たるSR-Λ Signatureが、「埃よけのスポンジが朽ち果てている」という理由で「オマケのジャンク」として付属していました。あまり使われていなかったようで、T1共々かなり程度のよいものです。

 聴いてみると、やはり音はスタックス、ダイナミック型にはない表現力です。Signatureの振動膜は歴代Λ系の中では最も薄い1μmでした。現行の後継機SR-404や、手持ちのSR-303は1.35μmの振動膜です。出てくる音は現行機のほうがより真っ当なのかもしれません。が、このあたり、私としてはSignatureの音のほうによりSTAXらしさを感じます。
 T1はnormal biasのソケットも備えているので、より古いSR-Xmk3とも聴き比べてみましたが、SR-Xもなかなかによい音です。Λ系は発音体が箱形のハウジングに囲まれていますが、虫かごのような隙間だらけのハウジングとはいえ、SR-Xと比べると僅かに箱っぽい響きが聞こえます。SR-Xにはそれがないので、音がより素直に感じられるところがある。まあ一緒に聴かなければ気づきませんが。

 入手早々、球を換えてみました。消耗した様子は全く見られなかったのですが、ソケットに挿してあって取り替えられるとなると、そこはやはりうずうずしてしまい…性ですね、ハイ(^^;。
 もちろん直結構成のアンプですから、球を差し換えたらDCバランスの調整が必要です。基板上の半固定VRで調整するのですが、かなりクリティカルです。

 写真の左端が純正のゴールドエアロブランド6FQ7で、金文字でfor STAX Signatureとプリントされている専用品です。その隣がまず差し換えてみた松下球。音は、私の耳にはゴールドエアロとほとんど違わないように思えました。決して悪いという訳でもないのですが、いまひとつ換えた甲斐がない。
 右の2本は富士通テンの「通信用」の印字がされたものです。ゴールドエアロやナショナルとは形状の異なるやや大きく平べったいプレートを備えていますが、はたしてこれは少し音が違いました。彫りが深く、低いほうの音にしなやかな力強さが加わった感じで、音楽が活き活きして聞こえます。当面これで運用することにしました。


2009.4


買い物オーディオその3

 自分で録音したものを聴くときはヘッドフォンを使いたくなります。細部までよく聴きたい、ということが大きいのですが、自分がまさにその音が鳴っている現場にいたことで、頭内定位にあまり違和感がなくなるということもあるように思います。MR-1を入手したことばかりが理由でもないのですが、にわかにヘッドフォンへの関心が高まって、前々からダイナミック型でいいのをひとつ欲しいなと思っていたことを思い出し、これを買ってしまいました。

 K式信奉者ならたぶんベイヤーにするところなのでしょうが、これもまたDCマイクのカプセルを作っているメーカーの製品だし…というわけで、オーストリアはAKGのK601であります。巷の評判から、たぶん私の好きな方向の音だろうと。

 音はほぼ期待通りでした。最初は若干窮屈な印象の鳴り方でしたが、数十時間過ぎた辺りから伸びやかさや繊細さが感じられるようになってきました。「低音が出ない」とよく言われているようですが、確かに控えめだけれど、深くて質のよい低音だと思います。
 高い方の音もなかなかきれい。明瞭ですが刺々しさはありません。とはいっても、さすがにコンデンサー型ほどのきめ細やかさはないです。単なる薄い膜と、ある程度の重さがあるコイルを背負った振動板の違いでしょう。が、これはこれで持ち味。

 インピーダンスが120Ωと高いのでドライブ電圧が多めに必要ですから、ポータブルオーディオで直接ドライブするのはやや苦しいところです。ヘッドフォンアンプが必須、とも言われますが、私はそのまま使っています(わざわざドライブアンプを使うくらいならSTAXのヘッドフォンを使えばいいじゃん、というわけです)。ボリウムは、聴く曲にもよりますが、いっぱいに近いところまで上げることになってしまいます。

 このところ、このヘッドフォンとCDウォークマンで、寝る前に好きな木下牧子さんの合唱曲を1曲聴くのが習慣になっています。オーディオファンの人にはあまり知られていないと思いますが、音楽としてとてもよいと思いますので、興味が湧きましたら是非聴いてみてください(オーディオ的にはあまり見るべきものはないと思いますが)。
 ちなみに、CERENATEはヘッドフォンアンプとしても使用できますが、このCDをCERENATEとK601で聴いてみたところ、たぶんデジタルリバーブのせいでしょう、音の加工があらわになってちょっとうまくありませんでした。録音のよい音源ならよいのですが、この場合「高忠実度」が仇となってしまうようです。


2009.4


買い物オーディオその2

 半年ほどさかのぼって、昨年後半の買い物になりますが、KORGのDSDレコーダー、MR-1です。借り物のPCM-D50を使っていて自分でも「今どきの録音機」が欲しくなっちゃったところへ、ネットオークションで値ごろの出物を見かけ入手したものです。

 記録媒体は個体メモリではなくて、中でハードディスクが「シュー」と回っています。だもので、今どきらしくなく本体にはマイクを内蔵していません。付属している外付けマイクは、録音機本体のスペックからすればちゃちに思えるものですが、どのみち録音に使うのは、そう、DCマイク。

 というわけで、長い眠りから呼び覚ましました。ということは、電源を用意せねば。さっそく電池を買ってきてハンダ付けです。
 買ってきたPanasonic NEO単3電池をみたら、あれ、何かヘン。なんと、2種類ある!Made がin Japanのと、そしてin Chinaなのと。

 中華NEOのほうは、正電極の縁取りが赤く、昔の水銀入りNEO Hi-Topみたいな風情です。プレスの細部の仕上がり具合も、なんとなく昔の製品みたいです。が、中身はおそらく国産現行品と同じであろう、と思うことにして、あまり愉快ではないけれど混ざったまま使ってしまいました。それぞれで音に違いが出るのかどうか、検証してやろうという奇特な方がおられましたら、是非お願いします。

 MR-1の使い勝手は思ったよりもよいようで、録音レベルも、専用つまみを備えるD50ほどではないにせよ、スムーズに調整できます。ただし、中古とはいえ状態の良さそうな個体でしたが、内蔵のバッテリーはあまり持ちません。外付けの補助電源が必須です。

 DCマイクを使ったDSD録音の音のほうは、一応D50で内蔵マイクを使って録音したものよりよく聞こえましたが、どちらにしても自分たちの練習録音用にはたぶん過剰(苦笑。

2009.4


買い物オーディオ

 更新せぬまま放置してしまっていましたが、もう7か月ですか。たびたび訪れてくださっている皆様にはまことに申し訳ないことで(汗。

 まとまった時間が取れない日々が続いておりまして、ほとんど自作はしていません。この状況はまだ当分の間続きそうです。そんなわけで、このところはオーディオ的活動といえそうなことというと、もう「買い物」のみとなっています。

 そんな私のもとへいちばん最近やってきた新規のオーディオ機器がこれです。

 フィデリックス久々のパワーアンプ“CERENATE”。英語読みはせず、「セレナーテ」と発音します。オーディオ情報に敏い人はもうよくご存じでしょうが、中川伸さん発明の超低ノイズスイッチング電源“セリニティー電源”を初めて搭載したパワーアンプです。詳細については本家フィデリックスのサイトに記載がありますので、興味をもたれた方はそちらをご参照あれ。

 例のコンデンサーカートリッジ以後、このところ中川信者に回帰気味の私ですが、今はこの小さなアンプの音に夢中です。音の傾向はといいますと、「ない」というのが一番正しそうです。極めてニュートラルで、純度の高い音。力強い音も優しい音も、ソースに入っていさえすればそのまま出してくれる感じです。私としてはかなりイイ線行っていると思う我がK式300Bシングルアンプでしたが、CERENATEを聴いた後では、やはりOPTによるロスが判ってしまいます。まあ、あれはあれで魅力的な音味を持っているのも確かなんですが。

 ということで、自作ネタもないことですし、こんな調子であと二、三の買い物報告でも続けてみようかと思います(^^;。

2009.4

(追記)
 本日、上の文章をアップしてからMJの今号が届いたのですが(今月はなぜかいつもより3日ほど遅かった…)、なんと、ZOOM UPのコーナーでCERENATEが取り上げられているではありませんか。アンプ部の回路図が載っていて興味深かったです(^^)。
 でも、柴崎氏による試聴記にある「通常のスピーカー接続では音がややドライであり、これが好みの分かれ目になると思われる」という記述は、私の印象とはまったく異なります。取材したのはかなり前でしょうから、試作機の段階でそんな傾向の音だったものと思われます。当初は1月発売の予定だったのを、中川さんが音を詰めていくうち、出荷が3月の終わりまでずれ込んでしまった訳で、柴崎氏が聴いた個体は流通した製品とは音が違っていそうです。実際、記事に載っている内部の写真を見ると、配線材や一部のパーツが私のところに来たものと異なっているようです。オーディオ誌の試聴記事には、こういうことはままありそうですね。あまり鵜呑みにしないほうがよいでしょう。


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