大晦日前日に届いたFIDELIXの新作LEGGIERO。イタリア語の音楽用語“軽快優美に”を名乗るこの個性的なフォノイコライザー、私にとっては待ちに待った製品です。
音は期待どおり、繊細で高解像度。今まで聞こえていなかったデリケートなニュアンスが、その名のとおり軽快優美に溢れて来ます。
荒さ皆無。晴れやかに広がる音場。スネアドラムのキレのよさ、人の声の滑らかさ、弦楽器の艶やかさにハッとさせられ通し。まさしく、出て欲しい音が出た!という感じ。
翌日の大晦日、ちょっと聴こうかと電源を入れ、ターンテーブルにレコードを載せ、モーター制御アンプのスイッチを入れたのですが…あれ、回転が全然遅い、エ〜?(焦;
オシロスコープも引っ張り出して、原因究明のためのジタバタに1時間以上も費やしたのに、特にどこもおかしいようなところは見つからず、万策尽きた。こりゃレコードが聴けない正月になってしまうのか… と途方に暮れつつ、何の気無しに、制御アンプの後面パネルの位置信号用コネクタを抜いて挿し直したら、あら、元気に動き出した(爆)。
このあたりのコネクタは普段は手が届き難い場所になってしまうこともあって、普段意識し易い音声信号のプラグ/ジャックよりもだいぶクリーニングの頻度は少なくなってしまっていたのですね。
もちろん全部のコネクターを抜いて、改めてクリーニング(はたして綿棒がだいぶ黒くなった(^^;)。
せっかくオシロも出したので、ついでに制御量の調整もオシロを使って入念にやった結果、回転は絶好調となりました。
フォトリフレクタGP2S22によるストロボパターン信号。うっかりACモードで見ていた。DCモードではあとほんの少し持ち上がってしまうので、いずれゼロクロスポイントを波形の急峻なところに持ってくるべく調整しようと思う。
とんだ大晦日になってしまいましたが、ま、LEGGIEROがやって来たタイミングでターンテーブルの整備ができたので、よしとしましょう。
今月、江川三郎さんが鬼籍に入られました。
そうそう自由にお金を使えなかった若造にとっては、金をかけずに知恵と工夫で音を良くする江川さんの行き方は、大いに夢や希望を与えてくれたものでした。
江川さんの周辺には、フィデリックスの中川さんや、オーディオマニアの写真家、故朝倉俊博さんがいて、この方々の書いたものにも私は少なからず影響を受けていました。
思えば、私のオーディオの原風景に居た方といえます。ご冥福をお祈りします。
LEGGIEROの回路は、昨年の6月におおよその構成がフィデリックスの「技術情報」に発表されていました。
MC入力のヘッドアンプ部は上下対称回路のようなので、過去のLN-2のようなJFETゼロバイアスソース接地を、今回は対称配置としたのだろうと見当をつけました。しかし、その後のEQアンプ部へどう信号を受け渡すのかは謎でした。
12月、発売間近になってより詳しい回路概略図が載り、それを見てようやく合点がいきました。EQアンプはトランスインピーダンスアンプだった…つまり、フロントエンドはJFETのゼロバイアスソース接地でカートリッジの発生する電圧を電流に変換、その信号電流を続くEQアンプでI/V変換…これって、最近の金田式電流伝送プリと同じ構成ではありませんか。
ヘッドアンプがサテライト方式ではなく、信号電流の伝達はカップリングコンデンサー経由、という違いはありますが、フィデリックスのMCフォノイコライザーは1993年のMCR-38から既にこうなっていたとは。
ヘッドアンプ部のJFET多パラはもちろんノイズ低減に有効であり、それを上下対称としたことで、事実上異極性のパラとなることによる一層の低ノイズ化とともに外乱への耐性を獲得。カップリングコンデンサーによる結合はDC派にはウケが悪そうだが、アクティブなDCサーボが不要、トータルでは最もシンプルで要領のよい信号受け渡し方法と思われる。EQ部は、元来低ノイズな増幅に有利なトランスインピーダンスアンプとし、終段PPソースフォロワにはシャントレギュレーターを入れて電流変化を抑え他段への影響を排除…といった具合に、隙間なく考えられた回路なのでした。
オールJFETならではかと思わせるその澄んだ音が魅力的なのはもちろんですが、これは回路を見てもワクワクさせられるものがあります。
2015.1