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2020のわたくしごと


新球

 ここを覗いて下さっている方にはすぐお分かりと思いますが、これはSP10のモーターのスピンドルの先っぽです。このスラストベアリングのボールの状態がちょっとよろしくなく、気になっておりました。表面に回転によって付いた円形のキズや、もとからなのか回転とは関係のなさそうな微小なエクボがいくつも見られるのです。これでは本来期待される性能は発揮できていないのは明らかでしょう。
 できればボールを交換したいところなのですが、なかなか手をつけられずにいました。問題なのがボールを押さえている樹脂キャップで、これを外さないことには始まりません。が、ほぼ半世紀の間オイルに浸っていた樹脂パーツゆえ、下手に外そうとして割れてしまったりすると元も子もありません。

 しかしそろそろウズウズが限界で、ついにというか漸くというか、おっかなびっくりやってしまいました。マイナスの精密ドライバーの一番小さいやつをキャップの縁の隙間に差し込んで慎重にこじるようにしてやったら、どうにか傷つけることなく外すことに成功。

 うちにあるあやしいプラスチック製のノギスでボールの径を測ってみたところ、4.5mmよりは大きく、5mmよりは小さい。どうもキリのよい寸法ではないみたいです。調べてみると、ベアリングのボールは、もちろんミリメートルサイズもあるのですが、古くからインチサイズが使われていた模様。入手可能なボールベアリングのサイズを調べると、これに該当するのはどうやら3/16インチというやつらしいことが判りました。

 ということで早速調達することに。アマゾンで、手頃な値段で使えそうなのが見つかりました。この際だからと窒化ケイ素製、すなわちセラミックボールです。これなら鋼球と違ってキズなんかつかんだろう。
 すぐ入手できるものと思ったら、届くまでに2週間ほどもかかりました。つまり海外からの発送だった…そうやったんか(怖)。時節柄、受け取ってすぐ梱包含めて一通り軽く消毒しましたよ。

 届いたセラミックボールの径を確認しましたが、やっぱりサイズはこれでよかったようです。

 新旧並べて記念撮影。ピントは手前のセラミックボールのほうに合っているので、奥のこれまでのボールは表面の状態が分かりにくいですが、左のほうに回転した跡の円形傷が見えます。それと比べずとも、新しいボールの表面は流石に美しい。アマゾンの商品ページには“G5”とありましたが、これが精度の等級だそう。グレード5、ということでしょうか。因みに一番いいのがG3で、G5は2番目に高精度なランクということのようです。日本製じゃない分、こういうのはまあ安心材料になりますな。

 新しいセラミックボールをスピンドルに装着、の図。

 ちょっと雰囲気が変わりましたね。どのみち見えなくなるけど。

 受け側のスラストパッドのほうも鉄粉などが残らないよう綺麗にしました。モーターを元どおり組んでレコードをかけてみましょう。
 不思議なことに、ターンテーブルとボードの間の隙間がコンマ数ミリばかり拡がったような感じです。ボールのサイズはほぼ同じはずなのに、なんで? 鋼球はターンテーブルの重みで変形していたとか? フォトリフレクタによるストロボパターンの読み取りには特に影響はないようなので、まあOK。

 回してみると明らかな違いが現れました。電源を切った後に惰性で回るぶんが2割ばかり多くなっています。手で回してみた感じも以前より軽い。イイ感じ♪
 もちろん音にも悪かろうはずはなく、激変とは行かないまでも明瞭度が向上した印象です。

2020. 5


清拭より入浴で

 レコードのクリーニングには、VPIとかのバキューム式のクリーニングマシンを使うに越したことはないのでしょうが、使用頻度を考えると私には高価に過ぎます。かなり場所を取りそうなのも問題だし。

 そんな私向きには、やはり直接洗い流す方法でしょうか。場所も取らないし、何と言っても財布に優しい。そのためにはまずレーベルカバーですな。でも市販されているものはバキューム機とは違う意味で高かった。丸いアクリル板にOリングとネジの付いたツマミのセットが3千5百円とか、モノの値段として高過ぎやしないか、と。オーディオ用であることが何かにつけ無闇に高い値付けに結びつく傾向に辟易しております故、こういうものに素直に出費するのもなんだかなあ、と思えて、もうひとつ食指が伸びないでいたのでした。
 そこへ、これならまあ納得できるかという程度の価格で出してくれたのが我らのナガオカ。ぃよ!待ってました♪ という訳で、買ってみました。

 で、早速これを使って数枚のレコードを洗ってみました。実際には水洗いではなく、38℃のお湯洗いです。うちの洗面所、お湯の出る蛇口が少し高めの位置に付いていてレコードを洗うのに都合が良いのです。

 ただお湯で洗うだけでは脂分の洗浄効果が期待できないので、特製の洗浄液を用意しました。消毒用のアルコールを精製水で3倍程度に薄めたところに、少しばかり界面活性剤(ドライウエル)を加えたものです。AT634の空き容器に入れたら使い勝手も良好です。
 さっと盤全体にお湯をかけまわしてからこの洗浄液をポタポタとドバドバの中間くらいに垂らし、ベルベットのクリーナーで音溝に沿ってしばらくゴシゴシしてやり、お湯を流して十分濯ぎます。最後は盤面に残った水滴を軽くコットンパフで吸い取り、綿棒の円筒ケースの空いたやつを台にしてしばし自然乾燥。

 結果はバッチリでした。やはり洗い流すのは拭い取るのとは比較にならない気持ちよさがありますね。気分だけじゃなくて、実際カビも埃もスッキリ落ちてさっぱり艶やかな盤面が蘇り、もちろんノイズも激減。いい買い物でした。これならバキュームじゃなくていいな。

2020. 5


温もりが欲しくて

 MC-L1000の改造修理に成功し、大いに気を良くしてレコードを聴いていたのですが、ある寒い日のこと、どうも音がおかしい。ああ、これは寒さでダンパーが硬くなってビビってるんだわ。
 他のカートリッジでも寒いとトレースが安定せず、ビビるものがあります。手持ちのうちではAT-ART7がそんな感じでした。この改造MC-L1000もビビりの出やすいタチのはずです。スタイラスチップの上にコイルを載せたことでカンチレバーの先端部の質量が大きくなって、パルシブな信号は実はあまり得意ではないのです。おまけにダンパーがへたり気味ときている。

 切っ先鋭いマイクロリッジ針がビビると、音が悪いばかりか音溝にダメージを与えそうで、おちおち聴いていられません。そこで、フィデリックスのサイトにある記事を参考に、再生環境をこんな感じにしてみました。

 プレーヤー周りを照らすために以前から設置しているランプを、カートリッジが温まるようにプレーヤーの斜め上すぐ近くに持って来ました。カートリッジまでは20cmくらいで、白熱灯なのでカートリッジのあたりに手をかざしてみるとまあまあ暖かいです。電球は40Wのレフ球です。買ってきたもののうちでは最も熱が飛ぶ感じでした。ランプにもともと付いていたのは小さく丸いクリプトン球ですが、それだと大して暖かくなりませんでした。

 できればカートリッジそのものの温度が分かるといいのだけれど、と思いつつ某有名通販サイトを覗いたら、いいものが見つかりました。

 非接触式温度計。少し前にとある食品製造施設を覗く機会があって、中に入るときにこの手の温度計で額の温度をチェックされました。なんとハイテクな、と思いましたが、こうしたものが今では1500円ちょっとで手に入るのですね。もっとも値段と製造国からして精度を期待できるものではないと思いますが、まあ使えるオモチャとして高くないでしょう。割合それらしい数値が表示されます。
 ランプで照らしてやったときのシェル背面をこれで計測すると、大体20℃くらいの数値が出たので、まあまあの環境になっているものと思われます。

 これでトレースの状態はそれなりに改善したのですが、もうひとつ完全ではない感じです。現状ではランプをもっと近づけるのは困難であり、できたとしても操作の邪魔になります。レコード盤の温度が上がるのもまずいでしょう。温めるべきはカートリッジのダンパーなので、どうせならカートリッジだけを下側から温めたいところです。

 そこで、更にこんなことを思いつきました。

 カートリッジウォーマー(笑)。
 同目的の市販製品は数年前に登場した1種類しか知りませんが、3万円超という値段でちょっと手を出そうという気にはなれませんでした。自分で作ってしまおうか、作るとしたら熱源はどうしよう…と考えていて、5Wのナツメ球でイケるかも、と。
 パナソニックの0.6WのLED電球にその座を奪われたナツメ球がいくつか茶箪笥の奥に眠っていたはずだから、それを使うことにして、支持する部分はスイッチ付きの電源コードが生えたE12ソケットを、ホームセンターで見つけてきた適当な折曲げ板金具に安直にビスで留めて出来上がり。

 ナツメ球からカートリッジまでの距離は10mmちょっとくらいで、熱過ぎることもなくまずまずいい感じでカートリッジを温めることができているようです。点灯したナツメ球の表面温度を先述の温度計で計測してみたところ55℃くらいでした。ちゃんと狙ったところを測れているならば、ですが。
 寒い日でもレコードをかける前にこれで5分間ばかり温めてやれば、後はレフ球の近接照明でほぼ危なげなくトレースしてくれます。これで心安らかに音楽に浸れるようになりました。

2020. 2


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