雑想つれづれ…

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作者のココロ




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2005のわたくしごと


形あるものは…

 ある夜、いつものように音楽を聴こうとパワーアンプの電源を入れたときのこと。
真空管たちに灯がともり、しばらくして出力段に電源を供給するためのリレーが作動、さて聴くか、と思いきや、スピーカーから不穏なハム音…いや、アンプ自体からもかすかに唸りが聞こえるような…アンプに目をやると、ああーっ!、またもや(以前初段に松下6267を試したとき、再調整をサボって安易に電源を入れて同様の光景を目にした)整流管のCV717のプレートが真っっか!!!

 慌てて電源を落とし、深呼吸してからおもむろにアンプをチェックすると、案の定300Bのバイアス電圧がほとんど出ていない。更に調べたら、なんと電圧増幅段の電源電圧がゼロに近い。私はすべてを悟った。ああ、ついにこの日が来たか…
 そう、電圧増幅段の電源に使っている整流管WE412Aが、とうとうお亡くなりになったのでした。やはり真空管は消耗品であったか。

 使えなくなったWE412Aですが、ゲッターが薄れた様子はないし、管壁に煤けた部分があるわけでもなく、外見はまったく新品同様に見えます。電極を支持しているマイカがやや黒ずんでいるかな?と思って新品を見たら、まったく同じ色でした。

 しかし、こんなことがあっても、新しい412Aを挿すだけで、我が300Bパワーアンプは何事もなかったようにいつもの音を奏でてくれました。ほんと、真空管は丈夫でよろしいなあ。412Aにしても、考えてみると10年もったのですから、十分な信頼性といってよいでしょう(金田300Bアンプの回路のことは置いといて(^^;)。


CDプレーヤーを新調

 少し前に新しいCDプレーヤーを買いました。といってもうんと安いやつで、普通は「CDプレーヤー」とは呼んでもらえない種類のもの。ソニーのD-EJ800という、ディスクマン改めCDウォークマンなのでした。
 ポータブルではありますが、一部では更に下位機種のD-EJ700ともども「据え置き機よりも音が良い」との評判もあるようで、安いちっぽけなキカイがいい音を出すという話が好きな私には、ちっと惹かれるものがあったわけです。

 聴いた感想は、なまじの高級機をしのぐ音、というほどのこともなくて、まあそれなりの音でした。ちょっと響きが付くような感じに聞こえることもあります。録音によってはむしろ自然に聞こえることもあるようですが、トータルでは以前「近況」に書いた初期の“ディスクマン”D-150と較べて音がよくなっているようには思えません。まあ常識的には、「CDでちゃんとした音を出そうと思ったら、この100倍くらいの価格のプレーヤーが必要だ」と言われるでしょう(^^;。

 では買った甲斐がなかったかというと、そうでもありません。音そのものも、期待したほどではなかったにせよ、レコードでは手に入れ難い古い録音の復刻CDとの相性が悪くない印象です。他にも良い点を挙げると、まず省エネ。ガム型電池2個で動作しますが、あきれるくらい電池が保ちます。この点、古い「ディスクマン」からは長足の進歩と言えます。

 私にとってポータブルならではのメリットとは、持ち運びができることではなく(小さいこと自体はメリットですが)、何より“リジューム機能”です。長い音楽を聴くのを途中でやめても、次には続きから聴くことができるというのは、普通のCDプレーヤーではできない芸当です。D-150の時代にはまだこんな機能は出現していませんでした。

 写真奥はTESTAMENTから出ているクナッパーツブッシュの'51年バイロイト/ワグナー「神々の黄昏」4枚組CDです。DECCAが収録した音源が発掘されて日の目を見たものですが、時代を考えればずいぶんと鮮明な録音です。こんなのを聴くときは、高音質な高級プレーヤーはもちろん悪くないでしょうが、リジューム機能はつくづくありがたいものです。結局いちばん「甲斐があった」のは、ここのところです。

2005.11


魔が差した?

 このDL-103、ちょっとヘンですね。実は一部ルートでのみ入手可能な「専門家」モデル(もちろん直訳です(^^; )。
 指定針圧が2.0g、コンプライアンスがやや増して公称の周波数特性が高い方へより伸びている、コイルのインピーダンスは38Ω、といったあたりが普通の103と違うところ。見た目では頭の中央ラインが赤いが、これは普通の103の白いラインの上から透明な赤い塗料をかけてあるだけ。わりとテキトーな手塗りでだいぶラインの外にはみ出してます、黒地で目立たないけど。

 実は2個持っていたDL-103のうち、新しいほうのカンチレバーを不注意で微妙に曲げてしまった。使えないほど重傷でもなくて、聴感では異常は感じられなかったのだが、見るとやはり気になる。古いやつに再登板願ってもよかったが、トホホ感はまぬがれない。で、また買うことにした。そこで、ただ同じのを買ってもつまらないような気がして、前から興味のあったこの「専門家」モデルに手が出てしまったというわけ。

 もちろん金田氏指定はあくまで「ただの」DL-103だから、はたして良い結果が得られるかどうか不安はある。なにしろ旧単行本には「その後の製品は(DL-103の改良型も含め)音楽情報が大幅に欠落」といったふうな記述もありましたしねえ。
 しかし、あの文が書かれた時期のことを考えれば、言及された「改良型」とはおそらく“S”や“D”といったモデルのことだろう。もっと時代の下る“GL”や“FL”、“R”などのモデルに至っては、金田氏ももはや「試すまでもない」としていたのではないか。まして通常の販売ルートには乗っていないこの専門家モデルが「改良型」に含まれているとは考え難い。ましてあの文脈は、他社のカートリッジすべてを斬り捨てているわけで(^^;。とすれば、案外めっけモンであるかもしれない…との希望的観測で買ってしまいました。

 おなじみAS-4PLに取り付けて、期待と不安の試聴。音数多く、あけすけに飛び出してくる感じ。普通の103とはやはりちょっと違うが、少なくとも情報量が減る印象はない。
 けれど、しばらく聴いていたら、どうもこれはよろしくないんじゃないかい、と思い始めた。スタイラスはストレスなくきちんと音溝をトレースしている感じの音なのだけれど、なんだろうこれは、諧調表現が浅いというか、陰影に欠けるというか、暗くひっそり鳴って欲しい音まで明るくスカッと出してしまうようなところがある。微妙な凹凸のある壁を正面から強い光で照らしたら、壁全体は明るくはっきり見えるけれど凹凸の表情は見え難くなった、みたいな。単に音数とか解像度のことではなくて、こうした表現の深度のようなことも重要な「音楽情報」だわなあ、はぁ…ハズレ、なのか。

 あ!…と気づいたのは次の日のこと。さっそくカートリッジを取り付け直して聴いてみれば、おお、全然まともじゃん、ホッ。これならどうやらヤフオクに出さなくていいみたい(^^;。
 いや、実は今回このカートリッジをシェルに取り付けるのに、何の気無しにカートリッジをパッケージに固定してあったアルミ製と思われるビスを使ってしまったのだった。が、それをこれまで常用してきたオーディオクラフトの真鍮製(たぶん)に交換した、いや、戻したら、なんのことはない、ちゃんと以前の深みのある表現が戻ってきた、というわけ。
 取り付けビスの材質で音が変わるという話は知らない訳ではなかったけれど、自分ではそんな部分でのチューニングに嵌り込んでしまうのも気が進まなかったので、あまり意識しないようにしていたのだった。が、今回図らずも自ら確認させられることになってしまった次第。

 ところで、改めて聴く103専門家の音は、それではノーマル103と同じかと言うと、やっぱりちょっと違うようだ。音のあけすけ感はビスだけのせいではなくて、このモデルが本来持つ性格らしく、ノーマルの音を全体にストレスフリーな方向に少しシフトしたような音という印象。特に余計なキャラクターが付け加わるようには感じられない。私としては、悪くない、と思うけど、さて?

2005.4


やはり相性?

 300Bアンプの2段目のWE404Aを新しいものに交換した。
 これまで使っていたものは、もともといわゆる「ヌキ球」で、ゲッターもごくうっすらとしか残っていなかった。今のところ動作に異常が見られるわけでもないが、そう過酷な動作をさせているわけでもないとはいえ、使い始めてからけっこう時間も経っている。そろそろ換えてもバチは当たらないだろう。

 ということで換えてみると、おお、音がずいぶんと明瞭になり、ダイナミックな鳴り方になったではないか。こっちのほうが断然よい。
 以前は中古球のほうが落ち着いた味わいのある音で好ましく思えたものだが、アンプのパーツもあのときとは一部変わっているし、周辺でもプリアンプが真空管式になり、ターンテーブル制御アンプも改良された。そして今やスピーカーまで違っている。404Aが古くなって衰えたというよりは、そうしたことが重なって、以前は硬めに聞こえたはずの新球のほうがよく聞こえるようになったのだろうと思う。どちらが「正しい」かはなんとも言えないが、とりあえず、進行方向はこちら、と言うしかない。

 左が新しいもので'60年代製、右が使い古しでゲッターのかすれた'50年代製。
ゲッターのリングの支持部分の造りがわずかに異なっている。

オイル交換

 しばらく前から、我が愛車のエンジンオイルには、このシェル“ヒリックス・ウルトラ”を使っている。
 大概のオイルはというと、換えてすぐはスムーズだけれど、5,000kmも走ればエンジンの回転にガサツキ感が出てくるので、そのあたりで換えたくなってしまう。「トリセツ」では純正オイルの交換サイクルは一応20,000km、非純正のものだと10,000kmということになっているのだが、とてもそんなには換えずにいられない。
 ところがこのオイルは、換えたばかりではさほどパッとした印象がない代わりに、かなりの長距離を後にしても、思いの外“滑らか感”を維持してくれる。通勤でけっこう距離を走る(年間2万5千km程度)ので、オイルが長持ちしてくれるのはありがたい。私の車は4,000kmくらいで0.5Lほどオイルを補充してやる必要があるが、このオイルを使って、そんな調子で10,000kmほど走ってからオイルを総入れ換えする、というトリセツどおりのスタイルが定着しそうだ。

 途中のオイル補充はもちろん自分でやる。1Lパックを開けて、半分を注ぎ込み、残りはPETボトルで保管。先日その保管分をつぎ足した後、流れきらずに壁面に付いていたオイルが時間が経ってボトルの底に降りてきて溜まっていた。意外に量が多くて、数ccほどもある。このキレの悪さがすなわち潤滑性能なのだろう。
 このオイル、茶色がかったオレンジ色で、完全には透明ではない。液体なのにゼリーっぽいというか、糸を引くように金属にまとわりつくかのような不思議な様相を見せる。さらっとしているようなベタベタしているような、何やら矛盾した質感。身の回りにある普通の油とは異質なもの、という感じだ。一般的な鉱物油で感じるあの頭が痛くなるような石油臭がなく、ちょっと甘いような匂いがする。そんなこともあって、ちょっとプレーヤーに試してみたくなってしまった。エンジンが気持ちよく回るなら、もしやターンテーブルも?

 ということで、やっとオーディオの話になるのだが、早速残ったオイルを小さな容器に移して部屋に持ち込んだ。粘度は5W-40だが、車に使った感じでは普通の10W-40よりむしろ硬い印象だった。はたしてターンテーブルのシャフトにはどうだろうか。
 回転はエンジンよりはずっと遅いから大丈夫かも、とも期待したが、やはりちょっと硬すぎたようだ。ターンテーブルは一応定速で回りはするが、音に活気が失われ、ちょっと鈍い感じになってしまった。というわけで、これは失敗。翌日にはスクアランに戻した(最近はチタン・オーディオオイルはやめてます)。

 ターンテーブルに使うなら、やはりもっと柔らかいものでないとダメだ。強いて自動車のエンジン用を試すことはないだろうが、もし音のいいものがあるとしたら、やはり0W-20 あたりものということになるのだろうか。となるとモチュール300V HIGH-RPM なんか試してみたいところだが、自分の車にはそんな柔らかいのは適さない。誰か使っている人がいたら、ボトルに付着して流れきらなかった残りを2,3ccばかり分けてくれませんかね〜(^^;。

 というようなこともきっかけになって、少しプレーヤー周りをいじりました。詳細はまた本コンテンツにて近々。


2005.3


through

 ゴトウユニットを鳴らし始めてから、ほぼ1ヶ月半が経過しました。エージング(リハビリ)の効果が現れているようで、いよいよ音の出方がスムーズになってきた観があります。ウーファーのほうもコーンがしなやかに動くようになってきたようで、当初より低いほうの音域の伸びが感じられます。

 コンテンツでも触れた「ウーファーのスルー使用」を試してみました。PW-201はもともとメカニカルに2kHz以上が減衰するよう作られているので、この性質を利してコイルを入れずにアンプ出力から直にウーファーをドライブすることで音質的なメリットが得られるのではないか、と。
 だいたい2kHzで上と繋げればよいので、中域のハイパスフィルタのCは手持ちのASC X335の4.7uFに換えて、聴いてみました…

…が、ダメでした。う〜む、中高域が賑やかな、荒れた音になってしまう。さらに、それぞれのユニットの音が溶け合わないでバラバラに鳴っているように感じられます。コイル無しのメリットがちっとも感じられません。音圧としては減衰しているとはいえ、やっぱりウーファーユニットの高音はキレイじゃないですね。速やかに元に戻して、ホッと一息。

 というわけで、この先はやはりマルチアンプしかなさそうです。今年の課題はそれか…


 エピソードをもうひとつ。

 正月休みに帰省した弟に聴かせたら、
「トゥイーター、ほとんど鳴ってないんじゃ…?」
と言うので、SG-17のケーブルを外してみると、
「…やっぱり全然違うな」と。
 それだけ各ユニットの音が自然に溶け合っている、という我田引水のお話でした(^^;。

2005.1