PHONO SYSTEM


 私が本格的にレコードを買い始めたのは、もう既にCDが出現していた頃だった。ほとんどの国内メーカーがレコード製造の機器を持たなくなるまでにそう時間はかからなかった。その間買い集めたレコードは100枚に満たない。今になって思えば、あのころちょっと気になっていた盤はケチらないで全部買っときゃよかった。だいたいロックもクラシックもジャズも、合唱もフォルクローレも聴くけれど、どのジャンルもかなり偏向した趣味なので、買うのは特定のものに限られていた。欲しいだけ買っても大した数にはならなかったはずだ。
 そういうわけで、逆に手もとにあるレコードは、みなそれなりに思い入れを持って買ったものだけに、今なお愛聴盤であり続けている(何千枚もレコードを持っている人というのは、そのうちのいったい何枚が愛聴盤なんだろう、って負け惜しみだな(^^;)。音だって、諸説あるけれど、私にとってはCDよりずっとよい。そんな大事なレコードだから、大した枚数でなくったって、聴くにはやはりできるだけよいプレーヤーやカートリッジ、イコライザーアンプが欲しい。

 金田氏がMJ誌にSP-10用ターンテーブル制御システムを発表して以来、「SP-10なんて手に入らないだろうなあ」と半ば諦めつつも、いつかは自分の手で作ってみたいものだと念じ続けてきた。世に高価なプレーヤーは多数存在するが、私にとっては、この金田式プレーヤーが最高のものに思えたのだった。ひょっとしたら比類ない音を、自作によって手に入れられるかも…この「自作によって」というのが肝心なところだ。
 ずっと考えていることというのはいつか本当になる!そのSP-10をたまたま手に入れることができたのである。もはや金田氏が記事で指定していた部品類の多くが市場から姿を消していたが、私の手持ちに何種類かのパーツがかろうじて使えるぶん残っていた。何に使おうか、と思っていたパーツ類であったが、SP-10制御システムになら使う甲斐があるというもの。出し惜しみする理由はない。

 1年くらいかけて、休み休みだが、じっくり楽しんでターンテーブル制御アンプ(1,2)SP-10改ターンテーブルを作った。出来上がったレコード再生システムからは、嬉しいかな、それまで聞いたことのない妙なる音が出てきたのだった。

 イコライザーアンプはやはり金田氏のバッテリードライブ式で、GOAプリアンプの最終型ということになるであろうメタルキャンTrプリだ。写真の安っぽいアルミの箱がそれ(上に乗っている電池の箱は伊藤ハムの空き箱)。とりあえず試しに作ってみよう、ということで安いアルミケースに組んだのがそのままになっており、こうしてみるとちょっとさびしい。でもそれは更なる製作の余地を残しているということでもある。

*「更なる製作の余地」へと歩みを進め始めました(^^; →真空管DCプリ(概ね製作完了)
 でもって、出来た端から更にいじり続けてる…(爆)→その後の真空管DCプリ