メタルキャンTr使用のプリアンプ 金田式のフォノイコライザーアンプを作ったのは実はこれが2台目である。1台目はもうバラしてしまったが、同じく電池式GOAでモールドTr主体の“スーパーストレート”型だった。ロールオフとターンオーバーが1stEQと2ndEQのそれぞれに割り振られたタイプである。出力レベルを固定したことのみがオリジナルとの相違点で、それ以外は使用部品も含め、事実上のデッドコピーであった(ケースはケチったけど)。とりあえずレギュレーターは無しで、NEO Hi-Top20本で動作させた。 そのうち金田氏の新しいプリアンプが発表された。回路はそれまでとほぼ同じだが、なんと、増幅素子にパワーアンプに使うでかいメタルキャンTrを投入したアンプだった。金田氏自身が「やっとこの音が出た」というようなことを書いていたので、これは期待できそうだぞと、ひとまず今までのケースを流用してアンプ部のみ組んでみることにした。
アンプの相性、素子の相性? この当時使っていたパワーアンプは電池式の8Wアンプだった。パワーアンプとの相性はなかなかよいようだった。ところが、やがて300Bシングルアンプをメインに使うようになる。するとどうだろう、どうもこのイコライザーアンプと相性が良くないようなのだ。なにやら音に硬くこわばったような感じがつきまとう。弾むような躍動感がない。出力トランス付きアンプの過渡特性の悪さがプリのスピードについていけないのだろうか。 それから半年か1年くらい経った頃だろうか。いつしか手元にはBLランクの2SK117がゴロゴロしていた。あるときふと思い立って、例のカスコードに入れた2SK117YをこのBLに替えてみたのである。聴いてみてビックリ、弾む弾む!ザックリ鮮やかに切れ込む。伸びやかで美しい音、しかもかつて感じたあの華やかすぎる感じさえも影をひそめ、なめらかでしっとり艶やかな音だ。カスコードのFETのIdssでこんなにも音が変わるとは思わなかった。どうやらIdssが大きいほどよいらしい。眠りから覚めたEQアンプは、この後は主役の座に座り続けることになる。 |
基板は裏面を上にしている。見栄えはしないが小さなケースゆえこうしないと配線が困難。基板は銅板のサブシャシーに固定し、本体ケースからは粘弾性のある樹脂クッションで浮かせてある。電源のON,OFFはDINコネクタの抜き差しで行う。 |
ケースは相変わらず当初からのアイデアルの安いアルミの箱のままなのだが、それでも音にはかなり満足していたので、ちゃんとしたケースを用意しないまま月日が過ぎている。ただやはり軽さが気になったので、基板を銅板のサブシャシーに固定することにした。これでアンプの見た目からすると意外な感じの重量を持たせることができたし、音も確実により好ましい方向へ変化した。 後でイコライザー素子の定数を変更した。ソースによってはなんだか低音が過剰に思えたからだ。5100pFとパラの820kΩを680kΩに交換。アンプのゲインさえ十分なら、RIAAの低域時定数としてはこのほうが正しいのではないか? バイポーラートランジスタEQアンプにはSEコン? カップリングコンデンサーにSEコン以外のものを使えるかどうかを試してみた。基板を裏返しに固定した関係上、かさばるカップリングコンデンサーは必然的に裏面配置となったのだが、これは他のコンデンサーを付け替えて試してみるのに好都合だった。 |
基板をめくって部品面を見る。ゲインは固定式としており、フラットアンプのNFB抵抗は2本のスケルトン抵抗。 |
電池式パワーアンプでは、水銀0になった“National NEO 黒”の音には以前のような躍動感が若干失われてしまったような印象があった。これも相性の問題かもしれないが、このイコライザーアンプに使っているかぎりはそうした感じはなく、実に伸び伸びしたイイ音を聞かせてくれるように思う。あるいはスピーカーのような重い負荷をドライブするわけではないからだろうか。一度配線すれば1年近く使えるし、私にとっては実用性も十分で、特にもっと他の音を求めたいという気も起きない。もっとも、他にも「作ってみたい」気持ちならいっぱい起きるから、音に不満はなくてもまた別機種を製作することはあるだろう。 |