製作プランなにしろ長年憧れてきたSP-10のための制御アンプである。どうせなら手持ちにある金田アンプ用パーツで使えるものはこの際すべて注ぎ込もう。回路も最新版であるMJ'92年3月号に掲載されたNo.124のMK2用のものをもとに、「オーディオDCアンプシステム上巻」に収録されているMK1用ターンテーブル制御アンプの定数を参考に少しモディファイして作ることにする。 そろそろ入手難になってきた2SA606/2SC959もちょうど必要なぶんくらいのストックがある。何に使おうかと思っていたものだが、ターンテーブル制御アンプなら使う甲斐があるというもの。 速度検出部は、ターンテーブルのページにも書いたが、TLR111とTPS601をアルミアングルに固定して作るオリジナルの厄介な工作を避けて、現代の便利パーツ、シャープのフォトインタラプタGP2S22を使ってみる。ストロボパターンに近接して検出できるので信号レベルも大きいだろうから、FGアンプなしで大丈夫だろう。それに、今やTLR111というのはどこのパーツショップの広告リストを見ても載っていないようだ。 ところで、モータードライブアンプは後でゲイン調整の作業がある。全体が組み上がってからのことになるので、オリジナル通りに作ると、これをNFB抵抗の付け替えで行わなければならないのがやたら煩雑に思える。そこで、最初から半固定VRを組み込んでおいて、1割程度のゲイン調整ができるようにしておこう。制御部のほうの位置信号のレベルシフト量の調整も同様だ。これも半固定VRを組み込んでおくほうが得策だろう。DCオフセットのほうはアンプ単体で調整してしまえるから問題ない。最近のアンプでは初段ソースにVRを入れているが、ここはオリジナル通りでよい。もっとも、適当なソース抵抗が入ったほうが音がいいのかもしれないが。 と、ここまではいいとして、それなりに意気込んで作りにかかった割にはやはり生来の貧乏性なところが顔を出す。私はしょせん「ちょっとDC」なだけで「とことんDC」なヒトではないのでしょうがないのだ(^^;。 さて、外装関係で、まずスイッチは電源すなわちスタート/ストップと回転数の切り替えだけでいいだろう。電磁ブレーキはいらない。ターンテーブルが惰性で回っている間にスタイラスをクリーニングしていればよろしい。 ところで電源はどうするか。金田氏も近年は、ターンテーブル用にはGSの鉛蓄電池を使っているようだ。以前電池式真空管DCプリのヒーター用に使っていたものだね、きっと。私も電池をハンダ付けするのはイコライザーアンプだけでたくさんだなあ、という気分になってきている。(後記:GSの鉛蓄電池は私の思い込みでした。金田氏はターンテーブルを回すのに近年はニッカド電池を使っているそうです。金田氏の試聴会に参加された方から教えていただきました。また変なところがあったら教えてくださいませ)
部品を探す 制御部の半導体はあらかた持ち合わせがなく新規購入になる。中でも分周器CD4059AEが問題だった。MJに広告を出しているパーツショップに問い合わせてみたが、どこでも返事は「ありませんねぇ」。4000番台のロジックICはまだ売られているが、この4059は特殊と見えて広告にもなかなか見つからない。たまたまトラ技で某半導体ショップの広告に載っているのを発見し、喜び勇んで発注したら電話がかかってきて「すいません、品切れです」「入荷の予定は?」「ないですねぇ」(呆)。こうなったら位相制御なしで速度制御だけで作ろうか、それともこの際既に出来上がっているカセット用モーター制御アンプをバラすべきか、とひとしきり悩んだが、あまり使えるものを置いていない地元の(と言っても車で2時間)パーツ屋に注文してみたところ、これがあっけなく手に入った。それも先の品切れショップの半分ほどの価格である。地元のパーツ屋も馬鹿にできないものですね。そのすぐ後にトラ技の若松通商の広告で14059と74HC4059を見つけた。なんだ、あるんじゃないか。ただし、地元パーツ屋よりだいぶ高価だった。 RE55もいよいよ進工業のものがなくなって、一部ニッコームが混ざってまだらになっている。 それから、オシレーターのパスコン用V2A0.22uFが2個足りなかった。日通工のポリプロピレンFPD0.47uFがリードの間隔がほとんどぴったりだったので、これで代用する。レギュレーター出力用の丸4本足V2A2.2uFはあったのだが、10mmのサポートではケースに収まらないので、ここには入力側の0.47uFも合わせて代替パーツAUDYN-CAPを使うことにする。
組み立て Trの工作は基板の配線をちびちび休み休み気軽に進められるのがよい。小さいから出したり片づけたりするのがラク。タマの工作だと「ヨッコラショ」という感じなり、もっとエネルギーが要る。 |
モータードライブアンプ。No.124では、初段は定電流回路に2N5465を使って多めの電流を流して動作させていたが、ここでは初期のアンプと同様の小電流の初段とした。よって定電流回路は2SC1775とツェナーDとRで構成。ただし、キャンタイプTrに圧迫されて基板にスペースが不足し、抵抗を基板裏に配線することになった。 ドライブTrの間に見える半固定VRでゲインを調節することができるようにしたのもオリジナルと異なる点。 |
各基板の動作を確認している段階で、位置信号用のウィーンブリッジ発振回路がちゃんと動作しないという問題が浮上。以前のカセット録音システムで挫折したのも、バイアス発振器で同様のことを経験したからだった。オシロで見ると一応は正弦波が見えるのだが、レベルが恐ろしく小さい。AGCで設定されたレベルに遥か届かない数十mVという微小レベル。配線ミスをチェックしても、どこもおかしくはない。なぜかは判らずじまい。 |
制御回路基板。ご覧の通りSEコンデンサは見当たらず、ディップマイカばっかり…位置信号の検波回路のCもSE5100pFに代えてASC X363 0.01uF 、許して… (^^;;。 |
そんないくつかの小さなトラブルも経て、長らくかかってそれぞれの基板が完成し、制御アンプは組み上がった。同時進行でプレーヤーの方もどうにか仕上がり、いよいよ全体の調整にまで漕ぎ着けることが出来た。
苦難の調整 まずは速度信号がちゃんと出てくれるかどうか。速度検出にフォトインタラプタGP2S22なんていうオリジナルと違うものを使っているので、これを確認しなくてはならない。電源と速度検出のコネクタだけをつないでターンテーブルを手で回してみる。オシロでコンパレーターの入力を当たると、ちゃんと回転に応じてパルスが来ているようだ。ひとまず成功。正側に較べ負側の振幅が少し小さいが、動作には問題ないだろう。コンパレーター出力のほうも反応している。 ん?「ぶーん」…回りはした。が、この振動は何だ? |
ターンテーブル制御アンプ内部全景。右側がリアパネルで、4基のDINコネクタが付く。上から位置信号検出(6pin)、速度検出(4pin)、モーター駆動(3pin)、電源(5pin)の順。 |
どうもおかしい(焦;;;)。というわけで、ここから制御基板のチェックが始まる。 怪しいと思われるところを配線し直してみることを繰り返すこと数度、まったくダメ。クロックは出ている。位置信号も大丈夫。位相比較は行っているようだ。しかし、その先のサンプルホールドがまともに働いているようには見えない。サンプルパルスが出ていないようだ。 ついに回路図と突き合わせて一から配線パターンをたどることに。あれれ、4528周りの配線、回路図と違うみたいだぞ、基板図のとおりに配線しているのに… 回転させながら、あらためて位置信号をオシロスコープで見てみると、やっぱり!、全然正弦波ではないぞ。正側の波はコブが2つある。大山小山、フタコブラクダ。 |
こんな感じの波形です…。オシロの写真が撮れなかったのでグラフを描くソフトで適当に関数を作ってみました(^^; 。 |
こんなことは書いてなかったけどなあ…と思いつつも、モーターの中を覗いたときに見た、歯車型の形状をした位置信号発生用のローターを思い出して半分ほど納得した。おそらく、歯車の“歯”がコイルに近づくとき、まず初めの角の部分で磁束の通りが良くなり、コイルと平行になったところでいったん磁束が弱まり、“歯”が離れていくときまた後のほうの角の部分で磁束がよく通ることになるのだろう。ひょっとしたらMK2のような、ひし形スリットを開けた銅帯を被せた円筒方式なら正弦波に近い波形が得られるのかもしれない(しかし後日他の方のホームページで、MK2だと負側もピークが2つ出るらしいことが判明)が、これはいかんともしがたい。 これはもう悩んでもしょうがないので、調整を進めることにする。速度信号のコンパレーターのヒステリシス特性を、抵抗を付け替えて再調整。と言っても、どういう状態が最良かは判断しきれなくて、カンでよさそうな値を選んだ。なぜかヒステリシス特性を鈍感にしていくと、入力波形の負側のピークが小さくなる。 位置信号は正負のピークをそろえるより、平均値を0に近づけたほうが自然なのではないかと考え、オシロで見ながらACとDCで切り替えても波が上下しない位置に調整した。 ドライブアンプのゲインのほうは、オシロで出力を2つずつ見比べながら、だいたい振幅がそろうように半固定VRを回す。あまり大きくは変化しない、というか最良ポイントがはっきり分からない。動作させながらだとフィードバックがかかっているから正確に調整したことにならないと思うが、そう神経質にならなくてもいいことにする。そもそも金田氏の記事の手順で調整しても、それはアンプの出力までのことで、コイルの駆動力のばらつきまでは調整できないのだ。 そして速度調整はMiniCADで自作したストロボスコープを見ながら。コスモスの青くて丸い半固定VRは回転が少しきつめだが、ゆるくて頼りないよりはいい。スムーズに調整できた。最後に位相制御、正直言ってこれは最適量がよく判らない。とりあえず、クロックにロックしたと思われる位置からもう少しだけVRを回しておいた(後で音を聴きながらやってみたけれどやっぱりよくわからん)。
聴いてみる無事モーターが回るようになり、1週間ほどは無性に嬉しく、トーンアームを付けないままただ回してみているだけであった。おお、回っとる回っとる、イーッヒッヒッヒッ(狂)。 その後、いよいよアームも装備し音を聴いてみる。これで情けない音だったらガックリだな、いや絶対そんなことはない、金田式SP-10だぞ、でもはたしてそんなに大きく違うものなのかどうか、と期待と不安の間で揺れ動きながらレコードに針を降ろすと… 吃驚仰天、歓喜雀躍、いや、もう何も言うことはありません。それでも言うなら、これまで使っていたトーレンスTD321、低音はやや曖昧なものの滑らかな音だと思っていたけど、これはもう別次元の世界、滑らかでクリアで歯切れよくて優しくて力強くて繊細でetc.… 後日、ターンテーブルにはお約束通りAT666を載せることになった。サクションユニットを失ったものを格安で譲ってくれる人があった。 しかしこの音のよさの理由は何だろうか。吸着しないとレコードは浮き上がっているわけで、押えると沈み込む。レコードを支えているのは内周と外周のゴムの部分、それとあとせいぜいセンターシャフトとの摩擦だけだろう。アルミ(後記:正しくはジュラルミンだそうです(^^;)のプレート部分には接触してはいない。つまり、剛性の低い状態であり、カンチレバーの振動の反作用を受けとめるのには有利であるはずはないだろう。むしろ適当にレコード盤を鳴かせ、なおかつそれをほどよくダンプしている状態で音のバランスがとれるのだと考えればよいのだろうか…というようなことを入手前からも考えていたのだが、実際聴いてみて、まあ理屈はわからないけれど、またしても「もう戻れない」のだった。 そんなわけで、2SB541じゃなくて2SA649だとどうなるか、とか、ひょっとしてまじめにSEコンを使えばもっとよくなるのかもしれない、とか、はたまた、電池も今や水銀0使用でかつてのNEO Hi-Topとは別物になってしまったとはいえNational NEO黒だとやっぱり違うんじゃないか、とか思わないではないのだけれど、ひとまず満足してしまって、そういうことは忘れつつある…(^^; 。
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後日談2:ドライブアンプ初段の定電流回路を、その後入手した2SC1399に入れ替えたところ、より音がはっきりし、情報量も増し、しかも音の表情もいっそう躍動的な感じになりました。2SC1400の兄弟石であるこのTr、ほどほどのゲインのアンプでは定電流回路用としてC1775よりよいように思います(EQアンプのように高ゲインのアンプでは、私にはちょっと高域の質感に気になる部分があった[『その後のメタルキャンプリ』の頁参照])。金田氏の言うとおり、モーターをドライブするアンプの素性が如実に音に現れてくることを実感。ただ回りゃいいってもんじゃない、ってホントです。 |
◇ ◇ ◇ 発振器の謎? 金田式プレーヤーシステムを製作・使用しておられる方から回転むらに悩まされているというメールをいただいた。 そういえば、発振器については実はちょっと気になることがあるんだった。 ご存知のように金田ターンテーブル制御アンプは、モーターに内蔵されたローター位置検出コイルからの位置信号を増幅してモーターのドライブ電力を得ている。モーターの回転はその増幅度をコントロールすることで制御される。 ところで、金田氏のオリジナルの設計では、その高周波発振器の出力コンデンサの容量と位置検出コイル1次側のインダクタンスとの直列共振を利用して発振振幅の倍増を図っている。先にちらっと書いた通り、私のターンテーブルシステムが初めてまともに動作したときは、発振器の回路定数がオリジナルと若干異なっており、この本来起こるはずの共振がない状態だった。 ターンテーブルの動作中に発振器の出力をオシロで観測すると、共振している場合は波形がぶるぶる揺れている。共振のない場合も波形がまったく揺らがないわけではないが、もっと程度は軽い。そして波形そのものも、共振させた場合は正弦波と呼ぶにはだいぶ崩れた美的でない形になってしまっている。 発振波形揺れる→位置信号揺れる→モーターの回転(=位置検出ローターの回転)揺れる ということになりそうな気がするぞ(--;。でもって、モーターの回転が揺れるなら、位置検出コイルのインダクタンス変動の原因であるローターの回転が揺れる訳だから、発振波形の揺れに輪をかけて揺れのモード自体がまた揺れることになりそうな…これってつまりモーターのドライブ電力のもとであるところの位置信号自体が自家中毒状態に陥っているということなんぢゃ…(いささか無理矢理考え過ぎの観もありますが(^^;)。 というのが思いついたことのあらまし。んーっ、これは気になる、ソワソワ…。ここはやっぱり共振なしでの音を確かめてみんと。 |
さて、じっとしていられなくなってきたので、やってみました、コンデンサ交換。発振周波数をもう一度高くするのはメンドウだから、発振器の出力の6800pFを5600pFへと小さくすれば共振しなくなるだろう、と。 しかし、あれれっ、まだ共振してるよ。どうやら前に発振周波数は適正にしたつもりだったのが、実はまだ金田氏の設計よりは多少高めだったみたいで、共振の中心がコンデンサ容量6000pF近辺のところにあったようだ。それで6800pFでも5600pFでも共振してしまうのだろう。 それでは、と今度はもともと位置信号検波部のフィルタに使っていたASCの0.01uFをこちらに持ってきた。そしてフィルタのほうに日通工ディップマイカの5600pF、もちろん3相ぶん。これでようやく共振はなくなった。 |
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再調整中。ターンテーブル上には自作ストロボスコープ。 |
共振がなくなって発振振幅が変わると当然位置信号のレベルも変わるので、検波部のレベルシフト量から再調整となる。しました。そして、聴いてみました。
〜♪ ん〜、やっぱりこっちのほうがいいような気がするんだが…。すっきりとピントが合って、微細なニュアンスも産毛が見えるように浮かび上がる(…ように聞こえます、ただしもちろん当社比(^^;)。なにしろ一対比較しているわけではないから単なる印象に過ぎないのですが、なんかよくなっているような気がしてしかたがない。しかし明確に違うとも言えず、自信はないです。それに、位置信号の検波のコンデンサがASCからディップマイカに変わっている、というのもまずい。音の変化があるにしても、原因が共振のせいかコンデンサの品種のせいか分からん。こんなんじゃまったく実験になっとらんですね(^^;;;。 ということで、甚だ無責任な話なのですが、いかがでしょう、金田ターンテーブルを製作・使用していらっしゃる皆さん、よろしかったら共振なし発振方式を追試してごらんになりませんか? |
◇ ◇ ◇ 終段ゲイン付与DCアンプシリーズNo.171のSL-1200制御アンプでは、かつてのGOA時代のパワーアンプの最終型であるドレイン出力型FETパワーアンプと同様の、ゲイン有する出力段を持ったバイポーラートランジスタ構成のドライブアンプが搭載された。このゲイン有りの終段、2段目の出力電圧振幅よりも終段の出力電圧振幅を大きくできるので、電源電圧の利用率が向上する。電池を電源としているモータードライブアンプには有用な方式だ。 私のSP-10用ターンテーブル制御アンプには、電源としてパイオニア製ポータブルDVDプレーヤー用のニッケル水素電池を使っているが、小型ながら4500mAとそこそこの容量を持っており重宝している。ただ、公称9V(たぶん8.4V/7セルのものと思われる)という低めの電圧が、動作上は問題ないにせよ少々物足りない。そんなこともあって、電源電圧利用率を高めればまあ気休めにはなるわな、という程度の熱の入らなさではあったが、終段ゲイン付与はいつか自分の制御アンプで試してみたいと思っていた。 いずれそのうち、と思いつつもそのまま時間が過ぎていたのだが、kontonさんのシミュレーションでこのゲイン有り出力段が取り上げられ、拝見するとアンプの動作上も利点がありそうな結果が得られているではないか。これはやっぱり試してみなくては〜、とちょっと熱が高まった。 ところで、私の制御基板は旧単行本のSP-10MK1の制御部をもとにプログラマブルデバイダー4059周りの配線をしたが、その後実はこの4059の45rpm時の設定に誤りがあり、僅かに回転が速くなることが判明している。耳で聞いて明らかにピッチが上がっていることが判るほどの誤差はないと思われるので、実用上はそう大した問題ではない、というか、うちにはそもそも45回転のレコードそのものがなかったのだが、やっぱり機能的に半端な部分を残しておくのは気分がすっきりしない。そのうち何かのついでのときに修正しようと思っていたが、最近たまたまEPレコードを入手してしまい、45回転を実際に使うことになった。 回転数問題については、45rpmのための4059の「ジャムインプット」設定に関してkontonさんのHPの掲示板に書き込んだことがある。前後がないと判りにくいが、その要点部分のみ次に引用する。 |
・・・ 45rpmでFG周波数は120Hz。分周比は1MHz÷120Hz=8333.333・・・ この段階で小数点以下四捨五入して8333とし、4059の設定はmode2で「4166あまり1」 とするほうが「4167あまり0」より正規の回転数に近いです。誤差は0.0048%です。 とおるさん式の表現ですと ピン J1 / J2 J3 J4 / J5 J6 J7 J8 / J9 J10 J11 J12 / J13 J14 J15 J16 ということで。 |
はて、この「誤差は0.0048%」というのはどこから出してきた数字だろうか。今計算してみると+0.004%にしかならないんだが…何か勘違いしていたみたいで、みなさんどうもすいませんです…m(_ _;m。
話を戻して、4059のJ1〜J16のピンについて、この二進数の“1”が+5V、“0”が-5Vに接続されることを意味するが、33・1/3回転時の設定(0/101/1010/0100/0110)と切り替えられるようにしなければならない。それゆえ、回転数に関わらず0,1が固定しているピンはそれぞれ-5V,+5Vの電源ラインに直接つなぎ、回転数によって0,1が入れ替わるピンは回転数切り替えスイッチにつなぐことになる。正しい接続は下の図のとおりだ。 |
回路図上は単行本の回路との違いは3番ピンと17番ピンの接続だけであるが、実装上は回転数切り替え系のジャンパー線の取り回しが少し変わってくることになる。ところで断っていなかったが、これらはすべて速度検出に金田氏の記事どおり60Hz45rpm用のストロボパターンを使用する場合についての話である。
さて、終段のゲイン付与のほうは、出力段コレクタ−ドライブ段エミッター間に33Ω、ドライブ段エミッター−アース間に150Ωを追加し、GOAの対アース抵抗5.6kΩを56kΩに交換すればよい。基板裏の7本より線のパターンもほんの少し変えるだけだ。 |
この改造に伴って位相補正のCの最適値が変化することもあるのではないかと思われるが、それを検討するのは非常に面倒なのでひとまず深く考えないことにする(玄人の態度ではないです、ハイ(^^;)。 だいたいが今付いている2段目の20pFと39pFも、本来は初段の負荷抵抗が620ΩであるNo.124の値であって、それを3.9kΩにしたのにそのままにしてあったのだ。音のほうは判らないが、方向としては安定寄りの変更だから、まーいっか、と。実際これで十分いい音だったのだから、今回もなんとかなるだろう。 対アース抵抗の値を増すのでオープンゲインが上がるが、kontonさんのシミュレーションによると終段の動作としてはより安定な方向になるような様子なので、トータルで丸く収まる、のではないか、そうあって欲しい、のだが、まあやってみるべ…(^^;
定位置にセットしてある制御アンプを、上に載せた真空管DCプリをよけて引っ張り出してきて、ケースを開けて基板を外してしまいさえすれば(ここまでがいちばん億劫)、手術自体はそう大した手間でもない。4059周りはほんの数カ所の接続変更にジャンパー線の配線し直しで完了。ドライブアンプのほうは、D217に隠れる部分に配置される150ΩをD217を外さないで付けようとして少々手間取ったが、ランド1列ぶんシフトすることでうまく取り付けられた。 しかし、好事、魔多し、とはよく言ったもの。いざ、ターンテーブルを回転させてみると、妙に起動がゆっくりだ。オシロでドライブ電圧波形を観察すると、なんと一つの出力が正電源電圧付近にへばりついているではないか。隣のドライブアンプと入れ替えてみたが、それに伴って症状が現れる出力端子も入れ替わったので、アンプが原因であることは間違いない。しかし外見上は問題はないし、改造直前までちゃんと動作していた基板である。いじったところはそうした症状の原因となるような場所でもない。 ということで、思わぬところで時間を喰ってしまったが、どうにか無事調整にまでこぎ着けた。位相補正の吟味はサボったままだが、幸いドライブアンプに発振などの不穏な気配は見られず、安定に動作している。 〜♪ (°°;; こ、これは! いや、正直なところ、電源電圧を有効に利用するという満足感だけのための改造のつもりだったので、この場には「音質的にはさほど大きな変化は感じられない」というようなことを書くことになるのではないかと予想していたのだ。ところがギッチョン、明らかに音が変わったではないか。 以前の音もあれはあれでよかったのだが、私には元に戻す理由はない。もちろん音の嗜好は様々であるから、人によっては以前のほうを採るかもしれない。今度の音のほうは、かなりしっかりコントロールされた音という印象があるので、無帰還の3極管シングルアンプを以て最上とするような人なら、改造前のほうがよいと言うこともあり得るだろう。 ドライブアンプのNF回路に入れていたゲイン微調整用の半固定VRを取り除いたり、いちどきにあちこち少しずつ変えてしまっているので、音質の変化は終段ゲイン付与によるものばかりとはいえないかもしれないが、最も影響を与えているのがこの改造であることは疑う余地はないと思う。
それにしても、やっぱりたまにこういうことがあるといいものです。レコードを聴く楽しみに新鮮な気持ちが甦ります(^^)。 |