電池式GOAフォノイコライザーアンプその後
よせばいいのに?
ことの発端はkontonさんのサイトで松下製の小信号用トランジスタ2SC1478を知ったこと。いわゆる“金田式の石”ではないけれど、なんでも差動アンプの定電流回路に使うとすごくヨイ、らしいんであった。とうの昔に絶滅した種族なのだろうが、たまたま安く手に入ったので(^^)早速プリのEQアンプ部初段定電流回路に入れて試してみた。試行錯誤の泥沼への第一歩だとも知らないで…。 |
2SC1478/2SC1775A(定電流Tr:「EQ部初段/フラットアンプ初段」 の順、以下同) | |
これはこれは、確かにすごい!(°°;;。音の明瞭度、解像度、立体感、どれもこれもえらいグレードアップ。これまでになく、音が空間に浮き出して聞こえる。録音のあまりよくないレコードからも、今までは聞こえてこなかった微妙なニュアンスが掘り起こされてくる感じ。 私が聞いているレコードというのは、そもそも好きな曲、好きなアーティスト、好きな指揮者が優先のコレクション。高音質盤はそんなに多くない。あまり音の冴えない盤については、音がよくないのはソースのせい、と今まで思っていたのだが、実はプリ次第で掘り出せる情報がまだまだ埋もれていたのだと分かってちょっとショックだった。 |
|
それに、今まで差動アンプの定電流回路のTrには2SC1775Aしか使ったことはなかったから、ここの石を替えることで思った以上に大きく音が変わってしまうことにも驚いた。回路はまったく同じなのに、あきれるほど音が変わるので本当にあきれる。やはり音は回路だけで決まるものではないな、今さらだけど。
でまあそのようなことで音はとてもグレードが上がって、今まで以上に音が空間に浮き出して来るし、今まで聞けなかった表情が聞こえるようになったわけなのだけど、それでメデタシメデタシとはならなかったんですなあ、これが。以前と較べてどちらがオーディオ的に性能がヨイかと言ったら、それはもう文句なくこっちなのだけれど、困ったことに、これがどうも必ずしも私の“好きな音”というわけではないのだった。ちょっと聞きでは確かに「うほー!」と思うのだけれど、なんだかどうも落ち着いて楽しめないのだ。 ということで再度交換となってしまった(とうとう始まってしまいました)。
|
まっすぐ2SC1775Aへ戻すのではなしに、まずはもうひとつ、2SC1478と同時に入手していた、2SC1400の姉妹Trの2SC1399を試してみることにした。2SC1400は私が金田アンプを作り始めたころには既に幻の石になってしまっていて手に入らなかった。以来ずっとお目にかかることはなく、この仲間を聴くのは私にとって今回が初めてなんですな(^^;。 |
C1399は「ローノイズ加工がされていないC1400」というのもkontonさんのサイトで知ったこと。いろいろ教わってます。 2SC1399/2SC1775A とりあえずEQ段のC1478をC1399に換えてみた。 金田氏がモールドTrでGOAプリを組んでいた頃は、NPNのほうは2SC1400が正式指定でC1775は代替品という位置づけだったが、こうして聴いてみるとC1400が(C1399で判断してはいけないのかもしれませんが)より無色透明というわけでもないようだ。当たり前といえば当たり前だが、それぞれに特徴のある音がしている。 2SC1399/2SC1399 フラットアンプのほうもC1399に換えてみた。2段重ねになった効果でしょうね、より音の特徴が強く出て来ることになった。C1775よりコントラストの鮮やかな音だが、高域が艶と引き換えにごく微細なレベルでダンゴになる(?)…と言ったのでは誤解を招くかな、ともあれソリッドに分解しきる感じではないぞこれは。“サクサク”ではなくて“ポチポチ”した感じ…言葉で表現するのは難しい。ギターで言えばオベーションならそれらしく聞かせてくれるけれど、マーチンは表板がやや湿気ってしまったかネックの剛性が落ちたか、あるいは弦がゴム製になったよう、と言えば分かってもらえるかな。 それぞれの石の、定電流回路用途でのおおよその音の傾向は分かった。シャープでドライ、彫りの深いC1478、やや粘りと弾力のある躍動感を演出するC1399、そしてあまり面白味もないかわりにバランスの崩れもないC1775といった感じかな。この中からベストというのは、私は選べない。どれもこれも一長一短という感じで、あちら立てればこちら立たず。いやはや、困ったことになった。よりよい音に出会うつもりが、訪れたのは不満。 2SC1399/2SC1478 EQ段にC1399、フラットアンプにC1478、という組み合わせを試してみた。もしかして音の性格の違いが補い合ってバランスよく鳴ってくれないかと。まあまあそれなりには聞けた。低域の躍動感のおかげでそこそこバランスは悪くない。私が目指す方向とはちょっと違うけれど、ジャズを聞くならこれはこれで面白くはある。もうブリブリ鳴ってます。いわゆる「よく鳴る」と言われる方向の音ではあると思う。 2SC1775A/2SC1775A(つまりもとに戻った) ようやく一息つけた、と思ったら、ああ、なんたることか!これがほっとするどころか全然楽しめないじゃあないか。より立体的な音を聞いた後で改めて聴くと、今度はC1775の立体感不足が気になって仕方ない。こんなにべたべたの音だったか?音が全然浮き出してこないぞ。音の細部も汚くつぶれている。こんなはずではなかったのに…(‥;;。 よりよい音を求めたはずが、どうやら実のところは迷路に入り込んでしまったみたいだ。オーディオの泥沼。それぞれの石の音の特徴、それもよくない部分に妙に敏感になってしまったようだ。そんなこと気にしていないで音楽を楽しむほうがいいに決まっているのに。こんなの、いい聴き方じゃありませんね。 と観念しかかったところで、ちょっとひらめいた。もしかして…と試してみたのが有り難いことにそこそこ聞けました。やることに事欠いてというか、ヤケクソというか、まさかねえ…ってな感じですが、EQ段のほうの定電流回路になんと、あんなものを持ってきてしまったのだ! |
2SC959(!!)/2SC1399 |
|
そうなんです!プリアンプのモールドTrをメタルキャンに置き換えてしまった金田氏もこれはさすがにやらなかったと思う。思い余ってクソでかいC959で定電流回路を組んじゃいました(さすがに見た目はアホだよな…(^^;)。 驚いたことにこれがノイズが少ない(極間容量のせいかな)。音はなんだか太い感じで、中低域にエネルギーが寄ったようなちょっと独特のバランス。少しくぐもった感じもあるが、立体感に富んでいるぞ。その点では最初に試したC1478/C1775の音に負けてはいないと思う。高域がちょっとおとなしくなってしまうのだけれど、意外にも十分な分解能があり、よく聞くと細かい表情も描き分けている。そういうわけだから嫌らしい突っ張った感じやにぎやかさもない。 |
|
中低域は盛り上がってちょっと固有音を感じるし、でも超低域の伸びや広がりはない、という傾向もあるので、ニュートラルとは言えないだろうから、誰にでもお勧めできるものではないと思う。この中低域はシステムによってはたぶん耳につくのではないかな。それでも今となっては私にはここまでのベストに聞こえます。C959を定電流回路に使っている人なんて、たぶん他にはいないだろうなあ。かなり非常識な行き方ですが、ひとまずは、これで落ち着いてもまあいいんじゃないか、と思える音に出くわした。はぁ〜、安心したぁ(^^)ルンルン。 |
やっと霧の中から抜け出した、よかったよかった。 |
|
私の知らない“いにしえ”の時に、金田式DCプリアンプの出力段エミッタフォロワに使われたことがあるという、今となっては“伝説”のトランジスタ、2SC984。鉄のキャン、鉄の足。まだ幼いころ親父が専らプロ野球を聞くのに使っていたソニーのトランジスタラジオの中の基板には、これと同じ形のトランジスタが7,8個ささってた。このパッケージ、TO-1というのかな。 hFEをDMMの専用レンジで測定してみる。60、と出た。うーむ、たしかに“いにしえ”だよなあこれは。だいじょうぶかぇ…? |
|
|
古いし、あんまり性能が高いわけでもなさそうだし、鉄だし(C959も同じか)…と、いささか不安材料のほうが多い石ではあるけれど、まあダメならC959に戻ればいいさと試してみました。 狭い間隔で生えているヨタった足ピンは、鉄だからそこそこ硬いけれど、いまひとつ頼りない。本体も縦長だから実装すると無用に背が高い感じ。見かけはC959を載せたときよりは異様ではないかな。 それにしても、見るからにイイ音がしそうな感じ…はしないぞ…。これを見ていたらなんだかまた元気がなくなってきて、やっぱりもういいかげんハンダ吸い取り線とたわむれるのはやめにしたいなと思い始めた。 |
|
さあ、ダメモトの音はどう?レコードに針を降ろす。 ん…?静か…!、はぁっ!、やさしい音。なんだこりゃ、コンデンサーカートリッジみたいな音が出てくるぞ!。 おしまい(^^; |
コーフン去って…
激変した音に気持ちが舞い上がっていたのが、そろそろ地上に戻ってきたところで、あらためて冷静に音の評価をしてみることにしますね(^^;。 EQアンプだけではなくて、既にモータードライブアンプの初段定電流回路についても、C1775をC1399に換えることで好結果を得た。ここもC984にしてしまうという手もあったが、それはやめた。 C984はもうあまり数がないのでもったいなかったのと、そこまでやってしまうと“天上の音”が重なりすぎて実体感が乏しくなってしまう懸念があったからだ。 さて、この状態で前述のEQアンプを組みあわせての本レコード再生システムの音であるが、意外にも音の方向性が以前とはずいぶん違っている。回路は全然変わっていない、ごく一部の石が変わっただけなのに、である。 ほんとにおしまい…のつもり(^^) 後記: |