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2023のわたくしごと


AT-ART7その後/MJ誌季刊化

 前回、AT-ART7のエージングが上手くいって、さて次はどれを、などと書いてみたのですが、実際のところはあれからずっとAT-ART7でレコードを聴いておりました。
 表現がダイナミックになったというようなことを書きましたが、聴くほどに音がよくなっているように感じられます。相変わらず解像感は程々だし、ハイスピードという言葉が思い浮かぶようなカートリッジではないのですが、f0 Checker によるエージングを経た今は、とにかく音が艶やかで楽しげで、まさに「好」音質です。MC-F1000だとちょっと表現が誇張されているように感じられることもあるDECCA盤が、ART7だと相性バッチリでとても心地よく聴ける、と言った塩梅で、もうすっかりお気に入りの一本になっています。
 普通に使っていただけでは、こんなに良いカートリッジであることを知らないままだったでしょう。f0 Checker様様です。

 ところで、ラジオ技術誌は書店に並ばなくなり既に月刊誌ではなくなっていますが、いよいよMJ誌も今月号から季刊となってしまいました。
 季刊だからといって1冊にこれまでの3ヶ月分の内容を詰め込むことはまあないにしても、値段も高くなることですし、少し厚さが増すのだろう、と勝手に思っていたのですが、ほとんど今までと変わっていませんでした。一応12月号より8ページばかり多いようですが、パッと見には分かりません。

 という訳で、記念に、でもないですが、月刊MJ誌最終号と季刊MJ誌初号を並べて写真を撮ってみました。
 賑やかしに一緒に並べたのはたまたま手近にあった古い「無線と実験」誌(まだ“MJ”じゃなかった)ですが、目を引くのはその厚さ。直近の2冊を合わせたのとほとんど同じくらいあります。ただ厚いだけではなく、中身の方も濃くて読み応えがあります。何より誌面に音をよくしたいという情熱が漲っているような気がします。この当時に十分に読みこなせるだけの知識を持てていたら、きっともっともっと楽しかったことでしょうね。

2023.12


FIDELIX f0 Checker

 遅ればせながら、かねてより気になっていた f0 Checker を購入しました。製品の詳細については、是非FIDELIXのサイトにある関連記事をお読みいただければと思います。

 発表されてから既に半年近くが経っているのですが、誰かのブログにでも使ってみたというレポートはないかと探してみても全然見つかりません。ついに自分で買ってみた、という訳ですが、私の使用目的は、f0のチェックよりも主にカートリッジ(のダンパー)のエージングです。あまり使っていないカートリッジで、どうもカンチレバーの動きが渋い感じで、寒い日にはビビりが出たりするようなものが複数あるので、それらのリハビリ用に好適だろうと。

 カンチレバーを揺さぶるアクチュエーターユニットの中はこんな具合。

 意外に簡単、というか、シンプルで要領の良い構造です。
 筐体から突き出るスタイラスを乗せて加振する“ベロ”を駆動するのは小さな小判型コーンのスピーカーです。本来ならテレビか何かの音声を担当するはずだったのでしょうが、こんな狭い箱に閉じ込められて、聞こえもしない低周波の動きをさせられることになろうとは、多分思ってもいなかったでしょうな。不憫なユニットよ。でもこの大切な仕事を任せられるのは君だけなのだ、腐らないで頑張ってくれたまえ。

 さて、とりあえず寒い時期にビビりがちでリハビリ対象と目していたJT-RIIIに4+5時間、引き続いて、XL-MC7の発電機構一体のカンチレバーユニットを、断線してしまったため、デッドストックの新品を入手できたXL-MC5の交換針ユニットと入れ替えたやつに7+6時間、それぞれエージングを試してみました。
 JT-RIIIでは、僅かに感じられたギスギスした雑味が取れて繊細感が増し、よりしなやかで優しい音味になった印象を持ちました。XL-MC7/5のほうはもっと変化が大きくて、繊細さ、スムーズさが増すのは期待どおりでしたが、それよりも出音が意外なほどダイナミックになったように感じられました。どちらにも期待した以上の効果があり、これだけでも元は取れているように思います。

 ちなみに、これらのカートリッジのf0ももちろん確認してみましたが、それぞれ7.5Hz、6.8Hz近辺と出ました。ほぼFIDELIXでベストとしているあたりに来ています。どちらも軽いSTAXのシェルに付けているのですが、アームの0 SideForceは質量がそこそこあるので、f0は大抵低めになるようです。

 気を良くして更にAT-ART7のエージングにかかりました。せっかく音が良くなったんだからそれでレコードを聴けばいいようなものですが、もはやエージングが面白くなっちゃってます。そういえば昔聞いたか読んだかしたことがありましたが、誰やらが「趣味とは手段と目的を取り違えることだ」と言ったとか。この場合は当たっていそうですね。
 AT-ART7は使用時間の極少ない中古を入手したものですが、空芯型MCということから期待していた音とはちょっと違って、なんだか少しナマクラな印象でした。どうもカンチレバーの動きが渋いようで、ある寒かった日に、再生中のところまでとまだのところで音溝の色が違って見えるというヤバそうな事態に遭遇し、慌てて使うのをやめたこともあります。もちろん針圧はちゃんと管理して、標準値+αに合わせてあったにもかかわらず。
 そんな訳であまり出番がなかったのですが、FIDELIXのページにAT-ART7は本領発揮までに200時間を要するというようなことが書いてあるのを読んで、このこともf0 Checkerを入手する動機の一つになっていたのでした。

 さて、0 SideForceにAT-ART7をセットし、f0 Checkerのアクチュエーターをターンテーブルシート上に置いて、アクチュエーターのベロにスタイラスを置くべくアームの先をベロのほうに近づけていくと、ありゃ、アームがベロを通り越してアクチュエーターの外壁の真ん中辺に引き寄せられる!

 なんと、スタイラスをベロに載せようとして乗せられないとは、想定外の事態です。これじゃエージングできんわ…

 そんな訳で、AT-ART7についてはエージングを一旦諦めたのですが、食器洗いをしている最中にちょっと思いつきました。エージング中はアームが動く必要はないのだから、もう止めておけばいいじゃないかと。

 ということで、こうなりました。

 006P電池を置いて、アームがそこから先には行かないようにしたという訳です。これなら針をベロの真ん中に置けます。電池にはクッションとしてコットンパフを貼り付け、更に、ごく低摩擦でアームを上げ下げできるように、シェルが当たる部分にスベスベの台紙が付いたままの両面テープを貼っています。これでART7のエージングが問題なくできるようになりました。ただし、アームが揺さぶられることがないのでf0チェックはできません。

 ここまでの顛末をFIDELIXの中川さんに報告したところ、中川さんから「鉄板を貼ってみたら」との返事をいただきました。
 工作材料は少しストックがあるけど、鉄板はなかったな。どっかに使えるものは… あるとすれば、あそこか…

 ありました、一応鉄板です。

 金属ゴミを溜めている袋からサルベージしてきたGABANのオリーブ缶のフタ(爆)。こんなのしかなかった。指掛けがあったのを切り取って既に整形済みの状態の写真です。一緒にあったオイルサーディンの缶のフタのほうが形や大きさは都合が良さそうだったのですが、残念ながらそちらはアルミでした。

 カートリッジが引き寄せられるのは内蔵されているスピーカーユニットのフレームがある辺りです。ということは、おそらく磁力線はフレームから出てマグネット裏に回り込んでいくルートで空間に広がっていて、それに沿ってカートリッジのマグネットがフレームのほうに引き寄せられているような感じなのかと思います。
 であれば、フレーム端辺りの位置に被せるようにして、マグネット裏のほうへと磁路を導いてやるように缶のフタを貼れば、磁力線が鉄板のほうに取り込まれて空間に広がるぶんが少なくなってくれるのかな。磁力線のふるまいについての知見を残念ながら持ち合わせていないので、なんとなくそう思うだけですが、まあ貼ってみましょう。

 とてもカッコ悪くなりましたな…

 カッコ悪さを厭わない生き方こそがカッコいいのだ、という風に価値観を転換することで対応することにして、さて、これでターンテーブル上に置いてアームの先のART7を近づけていくと、缶のフタの端のほうにちょっと引き寄せられますが、そこを過ぎて針がベロの上に来たときにはもうその感じはありません。もう2cmばかり進むとまた引き寄せられるのですが、筐体壁の中央1/3強くらいの範囲ではどうやら特定方向の力が加わることはないようです。やった、うまく行ってる♪

 という訳で、AT-ART7でも006Pのストッパーに頼ることなく、問題なくエージングが可能となりました。これなら多分もうどんなカートリッジでも大丈夫でしょう。

 これでf0のチェックもできるようになったので、やってみると6.2Hzあたりのようでした。結構低かった。カンチレバーが長めであるせいもあるのかな。

 AT-ART7に対しては、トータルで100時間あまりエージングを行いましたが、はたして効果は満点。変化はXL-MC7/5と同じような傾向で、音がかなりダイナミックになり、以前のちょっとナマクラな印象が吹っ飛びました。心なしか出力が大きくなったようにさえ感じます。やった甲斐がありましたね。じゃ、次はどれをエージングするかな、っと…(爆)

 ここで、当ページを覗いて下さっている方々の中にもいるかもしれない0 SideForceユーザーの方に向けて、ちょっと知っておいたほうがいいであろうことを書きます。

 こちらは私がAmazonで入手した中華製のデジタル針圧計ですが、現在使用しているのが手前のほうです。

 奥のほうはそれより前に買ったもので、今では使っていません。理由はスタイラスを乗せる計測台の高さです。

 並べてみるとよく判りますが、現在使っているものは計測台の高さが2mm程度で、実際の盤面に近い位置で測れます。それに対して以前のものは5,6mmくらいの高さがあり、盤面からはかなり離れた位置で測ることになります。

 どちらの針圧計も校正用の5gのウエイトを乗せると、それぞれ5.000あるいは5.00という数字を返してくれるので、精度は十分に見えますが、ターンテーブルシート上で実際に0 SideForceの針圧を測ると、これらが示す値には0.3g近い違いが出ます。計測台が高いもののほうが針圧が大きく出るのです。つまり、計測台が高いほうの針圧計で針圧を合わせると、実際の盤面での針圧は設定したはずの値よりも0.3g近く軽いことになってしまう訳です。

 これはアームの重心が支点のピボットよりもだいぶ低い位置に来るように設定されているためです。こうすることの利点はアームがヤジロベエのように安定することで、ゼロバランスを取るときの扱いやすさが向上しますが、それとトレードオフで、アームの姿勢による針圧の変化が大きくなる訳です。0 SideForceに限らず、カウンターウエイトを下方にオフセットしているアームはほぼこのような傾向を持つと言えるでしょう、
 つまり、0 SideForceは針の高さによって針圧がかなり変化し、位置が高いほど針圧が大きくなるという特性を持っているので、使う針圧計によってはこのことに注意が必要になります。なお、ロングタイプでは針圧の変化幅は小さくなります。

 こうした性質を理解していれば、計測台が高い位置にある針圧計でも適正に使うことは可能ではありますが、どうせなら実際の値に近い表示のほうがいいに決まっています。そんな訳で古いほうの針圧計は使わなくなったという訳です。

 ところが、今回のf0 Checkerの導入で、この古いほうの針圧計の使い道ができました。計測台の高さがf0 Checkerの励振ベロの高さとほぼ同じで、f0 Checkerを使うときの針圧の設定に最適じゃん、となりました。
 AT-ART7のエージングでは、レコードを聴いたりf0 Checkerでエージングしたりを5日ほど繰り返したのですが、カウンターウエイトに2種類の針圧計で適正針圧に合わせた位置を赤と青のマスキングテープでマークしておいて、場面に応じてワンタッチで針圧を設定し直せるようにしていました。赤の位置でレコード演奏、青でエージング、という訳です。おかげでリスニングとエージングの行き来が快適に行えました。

2023.11


MC-F1000のこと

 実は念願叶ってMC-F1000を自分のところで組み立てることができました。
 慎重を期して1ヶ月ほどをかけて組み立て、完成したのは2月でした。その顛末をまた「できるかな」のコーナーに載せようとhtmlを書いていたのですが、例によって進行は遅々として捗らず、そうこうしているうちにちょっとした家庭の事情の変化があり、ある程度まとまった自分の時間を確保することがなかなか難しくなってしまいました。ただでさえ捗らない作文がいよいよ遅筆度を増し、気づいてみれば5月ももう残り僅かです。

 当サイトの記事は大体いつも結構長文で、ある程度キリよくまとまったところでアップしていたのですが、こんな調子では掲載できるのはいつのことか。あまりに遅くなると気持ちの鮮度も落ちてしまいそうなので、ちょっと方針を変更して、当面は記事を細切れに少しずつアップすることにしました。
 細切れにすることで、気分的にいくらか書き進め易くはなろうかと思います。不定期連載ですね。どのみち完結するのはだいぶ先のことになりそうですので、気長にお付き合いいただければ幸いです。

 ところで、完成したMC-F1000ですが、期待通り、極めて高解像度でしなやかかつ鮮烈な音を奏でててくれています。気温が高くなってダンパーがほぐれてきたのか、いよいよ本来のトレース能力が発揮されてきたように感じます。
 MC-F1000(同じくダイレクトカップリングのL1000改でも)で聴いた日には、最後にスタイラス周りを実体顕微鏡で覗きながらクリーニングするのが習慣になりました。道具は、“小林製薬の糸ようじ”のとんがったほうの先っぽに、細い楔形に切ったマスキングテープを貼り付けたもの。これを使ってスタイラスおよびその周辺に纏わり付いた埃や盤のカスを取ってやるという訳です。トリモチ方式ですね。

 これでスタイラス周りはすっきり綺麗になるのですが、たまに針先に汚れの塊が頑固に粘着していて、こんな方法では取りきれないことがあります。顕微鏡で見るから判るのですが、レコードに何かのコーティングがされていて、その成分が針先にこびり付くのではないかと思っています。こんなときはメラミンスポンジでスタイラスを擦ってやれば大抵は綺麗に取れます。
 普通のカートリッジだとここまで手間をかけたクリーニングはたまにしかやらないのですが、デリケートなダイレクトカップリングの構造を実体顕微鏡で覗いていると、常に綺麗にしておきたいという気持ちを止められなくなってしまうのでした。

2023.5


「"project F" その2 のその後」のさらなるその後

 年明け早々、あること(それについては後日また別に書く予定)がきっかけで、MC-L1000改のコイルの接続を逆相にしてしまっていたことに気がつきました。「その2」だけのことでなく、最初の「L1000復活…」のときからそうだった。早速記事に訂正の後記を書き加えましたよ。
 原因はフレミングの法則の勘違い(爆)。L1000改の絶対位相についてちゃんと考えていたつもりだったのですが、うっかり「左手」で考えていました。そもそもカートリッジは発電機なのだから「右手」じゃないといかんではないですか。情けない、まさしくボーッと生きてんじゃねぇよ案件そのものです。

 まあ、逆相でもいい音だと思っていた訳なので、そのままで問題ないと考えることもできそうなものですが、一度気付いてしまったら、どうにもモヤモヤが募って精神衛生上よろしくない。
 という訳で、正相に直しても違いが分からない自信はありながらも、またぞろカンチレバーベースを外すことにしました。コイルからの引き出し線を中継基板へ繋ぐところで位相を入れ替えます。例によって顕微鏡越しのハンダ付け。中継基板はハンダ作業の繰り返しで汚くなってしまった。そしてカンチレバーベースを元に戻す作業でもまた神経を擦り減らされます。ふぅ…

 さて、音はどうなったか。はたして、ぱっと聴きには特に変わったとは感じられません。が、落ち着いてあれこれじっくり聴いているうちに、どことなく温かみが増しているような気がしてきました。いい感じ、なんではないでしょうか。
 同時比較はできないので本当のところは分かりません。が、まあ一応正しく直したことで気がかりも無くなったし、やっぱりこれでいいのだ、と思っておくのがオメデタくていいですね。

 という訳で、これが私の新年の書き初めならぬハンダ初めでした。

2023.1


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