入力VRをなんとかしよう


 入力ボリュームをいいやつに換えたら良くなって、さらにアッテネーターにしてみたらやっぱりもっと良かったという特にひねりのない話ですが、そのアッテネーターがちょっとヘン♪


VRを換える

 もちろんバーチャルリアリティじゃなくてバリアブルレジスターの話。
 CERENATE をRCA入力でパワーアンプとして使っていると、入力ボリュームの存在が気になってくる。使われているアルプスの RK27 は、うるさいことを言わなければまあまあ高品質な可変抵抗器ではあるのだが、CERENATE のポテンシャルからすればやはり音質制限要因になっていると言えるだろう。RK27 は過去自作アンプにも使ったことがあるので、音質傾向が大体分かるが故に、これをあれに換えたら音はきっとこんな感じに良くなるはずなんだが、なんて思ってしまうのだ。
 で、思っているうちに、例によってウズウズが高じてきて、やっぱり換えよっと、となる訳で。

CPのCP

 「あれ」というのは、かつてパッシブプリに使ってまずまずの好結果を得た VISHAY(スフェルニース)の P9A。RK27 と比べるとずいぶん小さく頼りなげだが、抵抗体がコンダクティブプラスチックで、普通のカーボンのVRでは出難い滑らかな音がする。コストパフォーマンスの良いコンダクティブプラスチック。

 ということで、取り寄せた P9A、2連タイプの50kΩ。

 メインの音量調節用ではないのでBカーブを選んだ。Made In France とあるのがなんだかありがたい。「舶来の」という言葉が頭を過ぎる。

 RK27 は P9A からするとかなり大柄だが、6本の端子群の取り付けスペースだけだと2.54mmピッチ基板のランド5×5穴分で、意外に大きくない。P9A の端子の配列は3×2穴だから、RK27 を P9A で置き換えるには、これらの変換アダプター的なものがあればよい。が、そんなものはおそらくどこにも売ってないので、自分で作る。

 2.54mmピッチのユニバーサル基板を眺めているうちに、頭の中でシミュレーションが出来上がった。

端子変換

 5×5穴の基板を切り出し、これに銅線で RK27 と同じ配置の端子を生やして P9A を載せれば RK27 互換のVRユニットの出来上がり、の予定。

 端子にはAE線を剥いた0.9mm銅線を用いる。剥いたらティッシュで表面をよく拭く。何か粘っこい汚れが結構付いていて音に悪そうだし、ハンダ付けにも邪魔。

 まずは端子となる銅線5本を基板に取り付ける。基板の空きパターンの穴を通して曲げて、直接 P9A の端子にまで届くように形を整える。これで銅線はまだハンダ付けしていない状態でも安定するが、P9A を載せる前に要所をハンダ付けしておく。

 パネル側ユニットの2番端子だけ、その延長がそのまま変換後の端子になる。ここのみ P9A を取り付けた後に直接銅線をハンダ付けしなければならない。CERENATE の基板に載せるときには、加熱しすぎてこの銅線が外れてしまわないように注意が要る。基板との間に5mmほど隙間ができるので、ヒートクリップを使えばいいだろう。

 プラスチックの抵抗体は熱に弱いはずなので、P9A をハンダ付けする際も加熱時間には要注意だ。変換基板には密着することになるので、ヒートクリップを使おうにも挟むことができる隙間がない。

 概ね想定通りに仕上がった換装用P9Aユニット。

VR換装

 交換するには当然 RK27 を基板から外さなければならないが、CERENATE の基板はスルーホールなのでこれがちょっと大変だ。「はんだシュッ太郎」を使うのだが、ランドの面積が広いところは十分時間をかけて加熱する必要があるので、ランドを傷めないよう気を遣う。久々にやると一発で成功することが少なく苦労する。

 P9A ユニットを CERENATE の基板に載せる。シャフトの高さが RK27 と同じになるよう、一定幅の紙の帯を脚に巻いて高さと傾きを規制しておいてハンダ付け。

 柔らかい銅線の脚でこんな風に持ち上がってたら脚がひしゃげたりしないかと心配されるかもしれないが、銅線の脚でも6本もあると結構頑丈だ。とはいえやはり強い衝撃は禁物だろう。ツマミをぶつけたりとかに要注意。

 シャフトの先端位置は RK27 より奥まってしまうので、ジョイントに咥えさせる部分の長さを少なくして延長シャフトをなんとか届かせる。後で、変換基板のランドをもう1列多く取って P9A がその分前に出るようにできたなあ、と検討不足を反省。

 こうして RK27 はより小さなコンダクティブプラスチックVRに無事置き換えられた。ツマミのタッチが軽々しいのがもうひとつ趣に欠けるところだが、音は期待どおりカーボンのざらつき感がなく澄んだ感じになった。滑らかさ、艶やかさが向上し、より色彩豊かに聞こえるのが嬉しい。

 以上が2016年のこと。
 それから6年後、更なるアイディアが浮かぶ。

やっぱりATT

 コンダクティブプラスチックのボリュームを得て、我が CERENATE はある程度の音質向上がかなったのではあったが、パッシブプリでスイッチと固定抵抗で組んだアッテネーターの圧倒的優位性を思い知ることになって以降、やはりできることならここもアッテネーターにしてしまいたいという思いが募るのだった。

 私の入力VRの使い方といえば、具体的には、CERENATE 2台をそれぞれ片chだけ使って左右に割り当てているので、片側のボリュームを絞ることでバランスコントロールができる。また、システムの調整時など簡単に片側だけ音を消せる。GMC-10EXのような出力電圧が大きいMCカートリッジを使うときに、パワーアンプのボリュームを絞ってメインの音量ツマミの位置がいつもとあまり違わないようにする、といった使い方だ。
 あっさりVRをやめて抵抗1本にしてしまうのが音はベストだろうが、こうした使い勝手の良さも捨てがたい。アッテネーターだったら音質も抵抗1本に大きく聴き劣りするということはないだろう。せっかく付いているツマミも生かせる。

 アッテネーターでそうしたことを行なうなら、と考えてみると、メインの音量調節用のような多くのステップ数は必要ない。減衰率は、-6dB以上絞りたい場面はなさそうなので、スイッチは0dBとミュートのポジションの間に3段階あれば-2dBずつ-6dBまで絞れるから、5接点あれば十分だろう。

 ということは、2回路5接点、ショーティングタイプのロータリースイッチでよい。これだけなら普通にありそうな仕様だけれど、CERENATE に載せるには RK27 より小柄という条件が付く。これが難題で、そんなスイッチはどこにも見つからない。まあ需要のないものは普通作らないわな。

スイッチ出現

 秋月電子のサイトのトップページには新入荷商品が表示されているが、あるときその中になんだかイイ感じに小さいロータリースイッチがあるのを見つけた。

 や! これは… と思って見てみれば、2回路4接点、ノンショーティング… ん〜、やっぱりそうやわねぇ。希望に沿うロータリースイッチはなかなかない。サイズ、形状は都合が良さそうなのだけれど。
 TAIWAN ALPHA ELECTRONIC とあるのでメーカーサイトをあたってみたが、やはりショーティング仕様はそもそも存在していなかった。これではまあしょうがない。

 接点数については、4接点あれば、無音ポジションを設けた上で音量を2段階絞ることはできる。それだけできれば、私の用途は最低限だが賄える。
 問題なのはノンショーティングであること。切り替え時にオープンになる期間があるので、アッテネーターに使うには難ありだ。ただ、CERENATE はバイポーラ入力の LM3886 をDCアンプとして使うために、入力部の直流電位を0Vにするためのバイアス電流補償回路が備わっている。ノンショーティングのスイッチで作ったアッテネーターでスイッチの回転中に接続が途切れても、この補償回路が繋がっていれば LM3886 の入力が浮いて電位が定まらない状態になってしまうことはない。
 ただし、バイアス補償回路は1MΩとかの高いインピーダンスなので、ノイズを拾う可能性は多分にある。それでも完全オープンになる訳ではないので、大きなショックノイズにはならないだろう、と楽観的に構えることはできる… かどうかは自分次第だが、これはやってみないと分からない。

 満足な仕様のスイッチではないのだが、これを使って CERENATE の基板に載るアッテネーターが一応作れそうではある。そして、近い将来もっと好適なスイッチが登場することなどおよそ期待できそうにない。となれば…

 そんなわけで、CERENATE の入力用アッテネーターを、この TAIWAN ALPHA のスイッチを使って作る方向で検討してみることにした。

抵抗決定

 スイッチの端子配列は2.54mmピッチなので、アッテネーターの筐体は2.54mmピッチのユニバーサル基板を切り出して接着剤で貼り合わせて作ることになるだろう。このスイッチを前面に付けて、中に抵抗を入れて、例によってAE線の0.9mm銅線で RK27 の端子と同じ配列で脚を生やしてやる、というのが大体のイメージ。

 して、抵抗はどうする? サイズに限りがあるから小さい抵抗でないと。やっぱりパッシブプリで使った PRP 1/4W が無難か。小さいアッテネーターの筐体内でハンダ付けするのはあの大きさでも厄介そうだ。でも4接点なら片chあたり3本で済むから、まあ収まりそうか…

 そんなことを考えつつ、秋月のサイトで抵抗のページを眺めていたら、またピンと来た。この手があるじゃん!

 ススムRG 1608サイズ。2.54mmピッチ基板のランド間に直接ハンダ付けして使える。というよりも、この大きさだと、自分で基板を起こしでもしない限り、自作ではそうする以外に使いようがないだろう。音質は“通電してみんべ”の ca3080 さんが絶賛されているので、試してみたいと思ってはいたのだが、これまでこんな小さい抵抗は私には使いどころがなかった。人によっては芳しい評価でないのも知っているが、まあ聴いてどう感じるかは人それぞれ。本当のところは自分で実際に使ってみないと分からない。

 この抵抗は、私の見た範囲では秋月電子が最も安く手に入るようだが、現状ではごく限られた抵抗値しか扱いがなく、都合の良い抵抗値を好きに選ぶことはできない。が、この4.32kΩなら音が良いと言われる値の上限くらいだし、5個セット売りだから、こればかりをchあたり2セット10個直列にしてやれば43.2kΩのアッテネーターが作れる(P9AのBカーブ50kΩも実測ではそのくらいの抵抗値だった)。パワーアンプのRCA入力のインピーダンスとして適当な値だろう。同じ抵抗が10個なら、例えば上から3個目、5個目で信号を取り出すことで -3dB, -6dBというアッテネーターが構成できる訳で、自由には刻めないが分かり易くもある。
 低抵抗値の多数直列は音が良いというのはパッシブプリで確認済みだ。高い抵抗値のPRPを3本使うよりいい音が期待できるかもしれない。

 こんなサイズだから、アッテネーター筐体内のスペースと工作のし難さの心配は雲散霧消する。10個が2組でも組み立てる前に基板にハンダ付けしてしまえるし、基板に貼り付くので空間占有率は極小、1/4Wの PRP 抵抗数本分より圧倒的に有利だ。
 色々いいことばかりに思えてくるんだが、何よりこのアイディア、まず他にやった人はいなさそうだし、なんだか愉快じゃないか。無性に試してみたくなってしまったぞ♪

 ということで、検討終了ね。もう作るしかないです。^^

ATTユニット製作

 必要なパーツは、秋月から調達したのが、ロータリースイッチ2個で480円、そしてススムRG1608 4.32kΩ は5個1セットが100円なので、2ch×2台分の40個で800円。新規の出費はこれだけ(送料除く)で、その他2.54mmピッチユニバーサル基板、AE線、銅箔テープなどは手持ちのもので賄える。

 設計図は頭の中にあらましだけ、細部は作りながら詰めていく。
 まずはアッテネーター筐体底面となる基板を切り出し、これに4.32kΩのススムRG1608抵抗をハンダ付け。ピンセットと拡大鏡が必須だ。

 片ch分10個を付け終えたところでとりあえず抵抗値を確認してみた。

 ん〜と、100Ωズレてますな。誤差0.1%にしては大きいような?… でもまあ一番下の桁は四捨五入なり切り捨てなりされているのだろうからこんなもんなんでしょう。

 2chぶんを仕上げる。手ハンダで均一に整えるのは、ムリだわ…

 冒頭の摘んで透かして見ている写真は、同じのをもう1枚仕上げたやつ。


 正面の基板にスイッチが付く。

 正面基板と底面基板を垂直に保持して接着し、内部の配線をする。端子用の0.9mm線はスイッチにまで延ばして配線も兼ねる。1番と3番の端子になる線は抵抗群の両端の穴を通してハンダ付け。

 アッテネーターの4つのポジションの設定は、抵抗2個目と4個目のところから信号を引き出して、一番右の0dBから1段左に回して約 -2dB、もう1段落とすと約 -4.5dB、そして一番左で -∞ すなわちmute、とした。当初考えた -3dB, -6dBはキリがいい感じではあるが、たぶんこのほうが私には実用的だろうと。

 配線完了後、別の基板に挿して出来栄えを眺める、の図。

 側板は片面銅箔の生基板を切り出して作った。銅箔はもちろんシールドのため。

 側板を、ずれないようにマスキングテープの簡易治具で位置を規制しておいて接着。

 006P電池は接着のための重しです。

 RK27 と並べて見比べる。全体の形状はちょっと違うが、端子とシャフトの先端の位置関係は概ね近い状態になっている。まあまあうまくいってるんじゃないかな。

 ボディー剛性は既に十分に思えるので、上面から背面にかけては銅箔テーブで覆うだけにした。これなら修理のために開けるのも簡単だ。もっとも修理が必要になることはほとんどなさそうだが。

 中にちょっとだけ細工を。お馴染みのサンドペーパー片を忍ばせる。今回は作りっぱなしで、効果の確認や調整はするつもりがないので、サイズは控えめ。

 この銅箔テーブの粘着剤には導電性はないので、側板との導通を取るためのハンダを施す。さらにスイッチのボディーとも導通を取るため、細い裸銅線をシャフトの周りに一巡りさせて同じところでハンダ付けして完成だ。

 おおらかな構造だが、これで CERENATE の基板から伸びているVR用のアース配線のYラグと一緒に銅線ごと締め付けてやれば、一応アッテネーター全体がシールドされるという寸法。
 底面はシールドがないが、基板のほうでアースパターンが広がっているのでおそらく問題ないだろう。

ATTに換装

 出来上がったアッテネーターユニットを CERENATE に搭載完了。

 ツマミを回してみると、ほどよい軽さで節度のあるクリック感。さすがに高級感はないけれど、240円のスイッチにしてはなかなかいい感触だ。

 で、音を聴いてみたらこれがビックリ。よくなるはずだと期待はしていたけれど、思っていた以上だ。それなりに質の良いコンダクティブプラスチックボリュームでも、やっぱりスイッチと固定抵抗のアッテネーターには敵わない、というのはパッシブプリでの感想と同じ。くっきりスッキリ澄んで躍動感のある音。晴れやかだが薄くなる感じもなく、微妙なニュアンスも力感もよく出してくれる。
 0dB状態では、さすが低抵抗10直列の威力、これってひょっとして43kΩの抵抗1本だけにするよりいい音が出てるんじゃないの、くらいに思えてしまうのだが、実際に抵抗1本にした音を聴いた訳ではないので説得力ゼロですな。
 そして1段、2段とアッテネートしても、音質劣化はほとんど感じられない。いや、実にイイじゃないですか、ススムRG1608。

 ただし、懸念していた切り替え時のノイズ、やっぱり出ました。スイッチを回して一時的に導通しなくなるときにブーンという。と言っても、通常の再生音量からすれば、ピアニッシモとは行かないまでもピアノくらいには収まりそうな小さい音なので、「バツッ!」というようなショックノイズにはならない。スイッチを操作すると、なんか「ブっ」とか「ボッ」とか言ってるんだが、くらいの感じで、スイッチを回すのに身構えてしまうほど神経に障ることはなかった。商品にするならこの状態では出せないだろうが、自分で使うぶんには十分許容範囲だ。

 理想にはもう一歩の安物ロータリースイッチを使って見切り発車的にやってみたアッテネーター製作だったが、思った以上に好ましい結果が得られた。音質にはとても満足できたし、ステップ数が少ないのも実際に使ってみたらこの仕様で十分と思える。でもやっぱりスイッチはショーティングタイプがいいな。

 音には関係ないが、パイロットランプの黄緑色のLEDをオレンジに替えてみた。改造済みの印のつもり。

質量付加

 まだボリュームに P9A を使っていたときにホームセンターで見つけた妙なモノ。

 「サーキュラースリーブ」?、何だそれ。

 家庭内DIYで使う金具とかチェーンなどが並ぶ棚にあったのだが、何でそんなものに目が行ったのかといえば、それが私が欲しかったやつにほぼ近いものなんじゃないかと思えたからだ。
 欲しかったものというのは、ボリュームのシャフトを延長するために使う、シャフトを連結するためのジョイントの、うんと肉厚で重たいやつだ。これをボリュームのシャフトに取り付けて、慣性モーメントの増大による音質向上を狙おうという魂胆である。いわゆるデッドマスですな。オーディオでは動くべきでないものが大きな質量を持つことは大概音質に寄与することになっている(稀に逆の主張を聞くこともあるけれど)。

 付いているイモネジが妙に大きいが、貫通穴がちょうどそれっぽい大きさで、まさしく肥大したジョイントに見える。6mmのシャフトに合うんじゃないのかな〜、材質は真鍮かな〜、だったら嬉しいんだけどな〜、などと思いながら手に取ってパッケージ裏面を見ると、まさしくその通りの物体であることが判明した。

 この時点で本来の用途がワイヤーロープの端に輪っかを作って留めるためのものであることを知った。留めネジが穴径と同じくらいのサイズで3個もあるのはそういう用途だからかと納得。ネジが無駄に大きく数も1個余計だが、シャフトが通りさえすればジョイントとしても十分使えそうだ。

 ただ、穴径6.0mmという情報がちょっと気になる。本当にきっちり6mmなのであれば、6mmのシャフトを通すのは無理かもしれない。が、ホームセンターの商品ということからすれば、この表示は穴の直径が正確に6mmであるという意味ではなく、6mm径のものが通せるよ、と言おうとしている可能性もありそうな気がする、というか、そうあって欲しい。

 1個650円ほどと、安い店なら1食賄えそうなくらいの値段なので、使えなかったら勿体ないからとりあえず試しに1個だけ買ってきて、延長シャフト用の6mm径ジュラコン棒を穴に挿し入れてみた。ら、おう、少しキツいかなという程度でまずまず無理なく通せる、使えるじゃん♪ となった。

 このスリーブ自体の直径は16mm、付属の3個のイモネジはM6サイズで長さが6mmあった。ということは、穴に6mmのシャフトを通した上でこのネジを締めると、ネジはそれぞれ1mm飛び出した状態になる。実際 CERENATE のボリュームの延長シャフトにこれを装着しようとしてみたところ、装着は一応できるものの、はみ出したネジが僅かに他のパーツに干渉してボリュームが回せなくなることが判明し、軽くガッカリ。

 ま、いずれそのうち長さが1mm短い5mmのイモネジを調達して出直すとしよう、ということで一旦保留したら、以降なんとなくそのままになってしまっていた。

 アッテネーター換装成功でこのスリーブのことを思い出した。パッシブプリでもツマミに重りを仕込んだら音がよくなったし、CERENATE もあれをアッテネーターのシャフトに付けてやれば一層音がよくなるのではないかな。小さく軽い安物ロータリースイッチだから、案外効果は大きいかも。

 という訳で、質量付加を再トライしてみることに。もう1個スリーブを買ってきて、長さ5mmのイモネジも調達(ネジって径より長さが短くなると高くなるんですね)。この際だからとステンレス製にした。元のネジは鉄製だったので、これで非磁性化もできて一石二鳥だ。

 質量付加の前に、CERENATE はセリニティー電源のバージョンアップのために FIDELIX に行っていたので、装着作業は戻ってきてから行った。

 付きました。

 取り付けられる場所はここしかない。できれば柔らかい樹脂のシャフトにではなく、ジョイントの役割も兼ねさせてロータリースイッチの軸に直接装着するのが望ましいが、冷却ファンがあるため連結部の周りに16mm径の円筒を収められるだけの空間がないのだ。

 こんな具合にACラインに入るコモンモードチョークがかなりギリギリな位置に迫っており、300°回るVRだとネジが1mm飛び出せば干渉してしまう。このアッテネーターのロータリースイッチの場合は回転角が90°しかないので、付いてしまえば大丈夫なのだが、取り付け時にネジを締めるために回転させる必要があり、やはりネジがはみ出ると都合が悪い。

 装着後の音を聴いてみたら、やっぱりそれなりの効果が現れた。音がくっきりしてより実体感が増す感じだ。セリニティー電源のバージョンアップと相まって、240円のロータリースイッチが2400円になった以上の音質向上がもたらされた、かも。

 最後に、こうした質量付加は、普通のボリュームの摺動子に対して施すほうがより効果を発揮しそうに思えるが、試してみようという人はあくまで自己責任でお願いします。衝撃が加えられた場合に大きな慣性モーメントがVRを壊したりする可能性もあるので、宅配便で送るときなど運搬の際には面倒でも外すのが無難でしょう。