WM-D6のDCアンプ制御を試みる |
やっとお呼び…
なかなか活き活きした音を聞かせてくれるWM-D6なのであるが、どうもこのところもうひとつテープ走行に安定感がない気がしてならない。再生音に頼りなさを感じることはままあるし、場合によっては回転むらも聞こえてくる。 となれば、いよいよ「あれ」を持ち出すか(・_・)。 |
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というわけで、いよいよというか、今ごろというか、出てきました。 作ったのはいつだったっけか。ターンテーブル制御システムを作ったのよりも5,6年ほどさかのぼるだろうか。それよりさらにはるか昔、不動品のWM-D6を入手、カセット録音システムを作ろうとして、挫折。うまくいったモーター制御部だけを独立させて作り直そうと思い立って作った「WM-D6用モーター制御システム」である。 制御基板とドライブアンプ、そして制御部用レギュレーターをケースに収めたものである。このような構成は単行本に発表されたオープンリール用のキャプスタンモーター制御システムを参考にしたものだ。 |
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とりあえずこれを作っておいて、後で再生アンプと録音アンプをそれぞれ作ることにしよう、という魂胆だった。しかし、カセットテープ再生にあんまり情熱を持っていなかったんでしょうなぁ…録音の機会のほうもなかなかなかったし。ということで、モーターがちゃんと制御できることを確認しただけで、その後何の進展もなくただ眠らせていただけだった。 久々に電源をつないでみると、レギュレーターの出力電圧がちと高く、5.7Vほどある。調べてみたら誤差アンプ入力部の抵抗が一部本来の定数と異なっていた。たぶんこの頃使っていたデジタルテスターの表示を信じて調整したのだろう。そのテスターというのは、最近買った新しいものと較べたら電圧表示が1割ほども低めに出ることが判ったため校正に出したやつだ。たぶんあの頃もう低めに出るようになっていたんだな。 WM-D6をそおっと改造 この完動品のWM-D6の回転系をこの制御アンプを使ってDCアンプドライブし、アンプ部はオリジナル機のまま使ってみることにする。それならちょっとした手間でできるし、いざというときは復旧するのも簡単だ。 さて、実際にテープを走らせて音を聴くのは初めてである。期待に胸躍らせて、PLAYボタンをON! おおっ…というか、音、震えてるが…(・・;。 |
ヘッドフォンで聴きながら調整中。電池はハンダづけで連結するのがメンドウなので、電池ボックスを使っている。とりあえず有り合わせで品種バラバラ、しかも単2のほうは製造年のかなり離れたものを混ぜごぜ(^^;。 |
調整すれども…
単行本にはオシロスコープを使った調整方法が示されているが、とりあえずメンドクサいので(あんまり“まじめ”じゃないな(^^;)、その主旨に沿った手順で試みることにする。つまり制御をかけない素(す)の状態でのテープ速度を正規の速度より若干速めにしておいて、そこに適量の制御を加えるというものである。 もしや、と思って、旧方式(サンプリングパルスをクロックでなくFGから取る)を試してみた。私が最初にWM-D6のモーター制御に成功した(と思われた)のはこの方式でのことだった。テープの再生音は聴いていないが、モーターの回転の様子だけなら今回よりも制御がスムーズにかかっていたような印象があったのだ。 う〜む、どうもはかばかしい結果が得られないんだが…(悶)。 |
古いものがヨイ?
制御回路出力の加速コンデンサの容量を変えてみたりもしたが、どうも根本的な解決にはならない。万策尽きた感じだ。あと思い当たるとすれば…そんな、ねぇ、まさか、ねぇ…とはいうものの、やはり疑わしきは試してみんといかんなあ。 |
WM-D6の動力部周辺。モーターがゴムの貼られたフライホイールディスクを直接ドライブ。 |
このフライホイールブロックというのは、言うまでもなくテープ送りの要の部品だ。モーターの力は直接このフライホイールに伝達される。フライホイールにはゴムが貼られており、モーターの軸に取り付けられたテーパー形状のローラーがこのゴム部分に押し当てられてフライホイールを駆動する。そしてフライホイールの軸がキャプスタンそのものである。同軸に、テープ巻き取りの動力を取り出すためのベルトが掛かるプーリーと、FGのフェライト磁石ローターが組まれているので、部品としての名称は「フライホイールブロッククミ」となっている。 カセットデンスケTC-D5もそうらしいが、WM-D6のこのようなドライブメカは「ディスクドライブ」と称される。これを“DD”と略すものだから、かつてのウォークマンDDなどはダイレクトドライブであると勘違いしている人がときどきいた。どうも狙ってネーミングしたっぽい。 フライホイールブロックを交換すること自体はそれほど難しくはない。裏蓋を開けて基板を外し、キャプスタン軸を支えるスラスト軸受けの金具を外せばそれでフライホイールを抜き挿しできる。ただし、この金具にはプレイボタンを引き戻すバネも掛かっているので、ちょっと要領はある。 |
フライホールブロックASSY。左側のFG用ローターが白っぽいので古そうに見えるが、実はこちらが新しいもの。写真では分からないが、ゴム部分を肉眼で見れば誰でも判断がつく。 |
フライホイールブロックを取り去ったところ。フライホイールディスクをドライブするためのテーパーのついたローラーがモーターの軸の先にあるのが判るだろう。キャプスタン軸穴周囲の円盤状のものがFGのステーターだ。 |
さて、フライホイールブロックは交換した、というか古いのに戻した。古びてガタが出た感じの、ざらついた走行音が帰ってきた。あんまり嬉しくないが、回転むらのほうはどうか…
これは…、まずまず、なのではないかい? まあリクツはともかく、ひとまず実用になりそうな感触が得られたことだし、改めて制御部の調整を行うことにしよう。ひょっとして、これなら金田氏の書いていた通り、回転音が最も静かになるように調整するのがベストなんではないか、と。 |
使えるものは使うべし
横着を決め込んで聴感と山勘だけで調整しようとするものだから手間取るわけで、オシロスコープを持っているんだから使えばいいんだよね。普段は片づけてあって引っ張り出すのがメンドウという、ただそれだけのことなのでした(^^;。重い腰を上げて、ヨッコラショと持ち出してまいりました。 |
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写真のオシロの画面で、上側の矩形波がFGパルス、下がクロックパルスである。といってもクロックパルスはシミみたいなほんの小さな光の点なので、この写真だと単なる一本線にしか見えないが。 金田氏の指示の通り、まず制御をかけない状態でFGパルスの周期が780μsくらいになるように速度を調整。テープは規定よりもけっこう速く回る。制御VRを回していくと、じきに定速にロックする。FGパルスの周期は923μs(写真はこの状態)。 やはり聞いて感じた通り、回転音が最も静かな状態ではクロックに対してFGパルスのぶれが甚だしい。すなわち回転むら甚大。まさしく文字通り一目瞭然で把握できる。 |
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もう後は波形のぶれがいちばん少なくなるよう制御量を調節するだけだ。こりゃ耳で聞くよりもずっとやりやすいわ。最初から使うべきだな、オシロスコープ(^^;。 問題の回転むらは自己録再でも目立たなくなった。ピアノの音もちゃんと音程が一直線に保たれる。注意して聞くと、高い音の一部の帯域で少しだけフラッターが聞こえることもあるが、新しいほうのフライホイールブロックを使ったときよりはずっと軽いレベルだ。強いてアラを探すような聴き方をしない限り、音楽に浸るのを妨げることはない。だいいちもう調整もこれが限界なのだから、気にしても健康によくないだけだ(^^;。 |
さて、やっと「本機の音」について述べ得るところまでたどり着きました(^ε^;ヾ。アンプ部はオリジナル機そのものであるにもかかわらず、このしっかりした表情はどうだろう。どっしりと安定した低音、すっきり冴えた高音。モーターの回転音には拘束感が感じられるのだけれど、再生音にそんな感じはまったくない。むしろ伸びやかで晴れやか。音の空間が拡がり、見通しがよくなった。やはりこれでいいのだ。
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< 第 2 部 >
穴があったら…(^^;;; その後思えてきました。どうもねえ、やっていることに対して過剰なのではないかと。いや、このモータードライブアンプのトランジスタのこと。走行抵抗が変わるせいだろう、使うテープによって制御が適正量からずれるような様子も見られ、思ったほどの動作安定性は得られなかったし、レコードやCDからダビングしたテープを聴くだけのことに、なにも貴重なメタルキャンタイプを使うほどのこともないわなぁ…。 んじゃま作り直すか、とNo.171のターンテーブル用ドライブアンプをもとにして新アンプをこさえてみることにした。ただし、終段は従来通りゲインを持たないタイプとする。初段も高価な2N3954はやめて2SK30ATMにして、なるべく安上がりに構成しよう。No.171同様、初段のカスコードは無し。金田氏の最初のWM-D6用ドライブアンプもそうだった。ただ、2SC1775のところは2SC1399で全面的に置き換えることにする。どうせならちょっとでも音がよさそうな石を使ったほうが気分がいいからね、まだ安価に入手できることだし。電源のパスコンは、V2Aがもったいないからニッセイのポリプロピレンでよし、と。 というわけで、おもむろに部品箱をほじくり返し、足りないパーツは発注し、基板をカットし、しばらくぶりに7本撚り線をこしらえて、それほどワクワクするでもなく、淡々と製作にとりかかる。 |
最初の頃はこの程度のことでもかなりエネルギーを要したけれど、今ではことさら肩に力が入ることもない。基板パターンを配線しながら、う〜む、俺もけっこう上達したなあ(#^^#)、なんていい気分で製作に勤しんでいたのだったが…
「あ…」 基板のパターンを眺めていて、突然雷に打たれたかのごとくカラダが固まってしまったのだった。 |
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ここからここに抵抗を配線するんだよな〜、と想像しているうちに思い出してしまった忘れ物、というのは終段のドライブ抵抗だ。2段目の電流出力を対アースで電圧に変換して終段をドライブする。なくてもアンプとして動作してしまうが、これを忘れていたのではそもそも金田式GOAにならない。 落ち込んでいてもしょうがないので、ここはよいタイミングで新しいドライブアンプを作ることを思い立ったことをこそ喜ぶことにして、古いアンプのことは忘れよう。金田式に取り組む者には前向きな姿勢こそ相応しいではないか〜(爆)。 |
明かりに透かしてパターンのチェック。 |
気を取り直して(どうも気を取り直さねばならんことが多いな(^^;)、製作を続ける。配線もひとまず終了して、終段のアイドリングを調整するが、なぜか400mAもの大きな電流が流れる。なんと仮付けしたバイアス調整VRを外してしまっても電流は小さくならない。さては、とドライバーのC959を交換したらあっけなく解消した。ジャンク箱のを再利用したC959が壊れてしまっていたのだった。 バイアス調整用の抵抗値は結局0Ωで終段アイドリング電流が約11mAとなった。少なめだが適正範囲だろう。使用時はモーターに定常トルクを与えるためにオフセットを発生させるが、そのための半固定VRを初段正電源側に入れている。NFBをかけてのオフセット調整もスムーズにできた。 |
やはりジタバタ… さて、ドライブアンプはひとまず完成したので、さっそくNFBは外し、終段負側電源は指定通りアースに繋ぎ直し、ケースに組んで動作確認である。 一息ついて、テープを聴く。スムーズで伸びやかないい音だ。やっと安心してテープが聴けるようになった。 下は今回製作したモータードライブアンプの回路図である。図中の赤い※印の抵抗(つまり前回忘れていたやつ(^^;)は、オリジナル機では2.7kΩが指定されている。これは、ほぼ同等の回路である他のGOAパワーアンプと較べ、かなり小さい値である。この値の意味はなんだろう。 |
このアンプは2段目までで定電流アンプを構成するが、その電流出力をこの抵抗で電圧に変換し、終段をドライブしている(そういえばMJライターのY氏はこの見方に異を唱えていたが、電流出力という発想を理解していなかったのではないだろうか)。ドライブアンプにもゲインの適正値が存在するはずだが、このアンプはオープンゲインで使用されているから、NFBの定数でゲインを調整するわけにはいかない。そこで、この抵抗の値によってゲインを適正値に設定しているのだ。おそらく2.7kΩという値は、金田氏が実験によって割り出したものと思われる。 ドライブアンプのゲインが少々違っても、制御基板の出力VRを調整するのなら制御系全体としては同じことではないか、という気もする。しかし、よく考えてみると、制御基板の出力レベルが変わるのとドライブアンプのゲインが変わるのとでは、まったく同じというわけではない。 おう、いいんでないかい! テープを取っ換え引っ換えしてみても、走行音にこれといった変化はなく、スムーズに回っている。音を聴いてみてもスムーズだ。あるいは3.9kΩではなくて3.6kΩや4.3kΩが最適値ということもあるかもしれないが、どうにか一応の実用レベルに達した模様である。しばらくはこれで聴いてみることとしよう。 |
後記:よく見たら・・・ いやはやなんとも面目ないといいましょうか、旧メタルキャンTr仕様のドライブアンプなんですが、「例の抵抗」、ちゃんと付いてました(^^;。もともとターンテーブル用のドライブアンプで、あの抵抗は基板の表側に配置するようになってます。だいぶ前に作ったものですっかり忘れてしまっていた、というわけでして、まことにお騒がせいたしまして申し訳ございません〜m(_ _;m(って、騒いでいるのは私一人ですが(^^;)。 気を取り直しなおして(爆)、その抵抗、見たら3.9kΩが付いてる。ということは新しいドライブアンプに付けたのと同じ値ではないか。たぶん作ったときも、ゲインが低めになるはずだから、と少しだけ大きな値を選んでいたのだろう。
要準備運動? 一応実用レベルに達したと思われた新しいドライブアンプだったが、その後ちょっとした不具合があることが判った。 何度かテストを繰り返した末に判ったのは、やはり制御は心もち強めにかけるべきであるということだ。動作音がもっとも静かな状態に制御量VRを調整してしまうと、冷えた状態から電源を入れて動作が安定するまでに約3分を要するのだ。電源を入れたばかりでテープをかけると、制御がかからず、例の「ぐぐぐぐぐぅ〜」という音を出しながらモーターが規定の速度より速く回る。もちろんこの状態での音は震えており、しかもピッチは上がってしまっているので、音楽を鑑賞できる状態ではない。しばらくすると突然ふっと安定になって静かな回転を始め、それからは別の品種のテープに入れ替えても変わらぬ静けさで回転する。
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