人は心に秘密を持つことがあります。誰にも言えない秘密、それを抱えているだけでも辛くなるでしょう。それでも、人は秘密を守ろうとします。
人によっては、それは、自分を守るためでしょうし、また、別の人にとっては、自分以外の誰かを守るためなのでしょう。
簡単に話せる事は秘密ではありません。人に知られては困るから秘密なのです。
ですが、子供の頃の秘密はずいぶんと違います。自分だけの秘密の隠れ家とか、秘密の遊び場とかいったものは、大人の深刻な秘密とは異なるものです。
そこで、私は師に聞いたのです。
「子供にとっての秘密は独占欲だったりして、大人のそれとは違うように思います。人は大人になるにしたがって、抱える荷物が増えて行きます。これは、心の成長に繋がるのでしょうか。」
師は答えられました。
「心の成長とは何を基準にするのであろうか。耐える力の事であろうか。
人の心は、その人の置かれている状況に応じて変化して行く。ある時は苦しみ、ある時は喜ぶ。またある時は、涙を流し、次の瞬間には怒鳴り散らす。それらの心は全て感情の発現にすぎず、成長の証しではない。
感情に振り回される事なく、耐えることが出来れば、それは、自分の信念によって、己を律したのである。
たとえ、人が自分を守るために自分の秘密を守っているだけであったとしても、自分の意志の力によって、感情に打ち勝っているのであれば、それは心の強さである。
ただし、感情自体は人の意識の正常な表現である。そのため、心が強くなったという一面においてのみ、それは、成長したと言えるであろう。」
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