光 害 に つ い て  2003.1 更新
 
北日本新聞  1999.4.29 掲載エッセイ 


   「星空がもたらすもの」 

 すっかり春になって寒さをあまり気にせずに星空を見あげられる季節になりました。 天気も割と安定してきて、星の見える夜も多くなってきています。
 夕方の西の空には、宵の明星(金星)が真っ先に見えてきます。これから五月まではさらに高く明るく見られるようになります。にぎやかだった冬のオリオン座はすぐに沈んでしまい、代わって 「しし座」や「おとめ座」などの、春の星達が夜空を埋めてきました。ところが、最近はその美しい星空に出合う機会がだんだん少なくなっているのです。

 それは過剰な街の明かりが、美しい星空を覆い隠してしまっているからなのです。 条件が良いとされる立山の稜線からの夜空でさえ、十年前と較べると明らかに地平線付近が白くかすんでいます。人間の生活に時や方向を知らせ、共存してきた星空が、いま徐々に失われつつあるのです。
 これを憂える声に応じて、近年ようやく環境庁でも「光害」が認知されはじめました。 星空のためだけでなく、植物や蛍などを含めた地球環境を保全するためにも「無駄な明かり」を見直していこうという気運が高まってきているのです。昨年も2回環境庁の呼びかけでライトダウンがありましたが、いまひとつ浸透していないようでした。

 たとえば街灯ひとつをとってみても、水平から上方に光がもれない構造になっていれば、エネルギー効率も向上し、交差点などでは直接見える光が障害光とならずに、逆に視認性が良くなります。本当に必要な照明かを見直すだけでも地球資源の温存につながります。

 
残念なことにここ富山ではそういった「光害」意識がまだ十分に浸透しておらず、目立つことを目的とした屋外照明があまりにも多いのが現状です。
 
「暗さ」をなくすことが生活環境の向上と錯覚し、外見・利便性のみを追求した結果がこれなのでしょうか。  
 
もともと人間の目というのは明るいことには柔軟ですぐ慣れてしまいます。郊外店舗など照明を明るくすれば一見目立つようですが、安易な増光は他店舗との明るさ競争を招くだけで、実はすぐに他のネオンの中に紛れてしまっているのです。
 
一方でこれを見直した例もあります。昨年度から富山湾のイカつり漁船間で行われた集魚灯の明るさの自主規制です。イカを集めるために行きすぎた明るさ競争に歯止め効かせるためだったそうですが、一般の屋外照明にも、上限を持たせるなど規制が必要なのではないでしょうか

 
さて、明るさには柔軟な人間の目ですが、暗さにはどのくらい対応するのでしょうか。
 
実は、人間の目にはちょうど6等星をみられる能力が備わっているのです。
 
これは、満天の星空ならば照明が無くても行動できるくらいの集光力なのです。
実際、空の開けたところならば、「星明かり」だけでも十分歩きまわることができます。

 
星明かりだけでこれだけ明るいのですから、これに月明かりが加わると雪原などはまぶしくさえ感じます。実際満月に近い夜などは、背後にくっきりと濃い影ができてびっくりさせられます。このように人間の目が昼のみならず夜にも対応できるのは、目の網膜に明るいところを見る視細胞と暗いところを見る視細胞の2種類があるからなのです。人間の長い進化の過程の中でも、星空を見るための能力は大切に培ってきたのです。
 
実は暗いところでは、青が基調の世界です。紺碧の空、青い月夜などと、目も青に感度が高くなっています。 そもそも空が青いのは地球の大気があるためですが、人の目も青に対応して良く見えるようになっているのです。昼間ほど色の認識は利きませんが、代わりに触感・嗅覚・聴覚など視覚以外の感覚も敏感になってきます。ちょっとした物音、風のながれ、草木の匂いも昼間より良く感じ取れるのです

 
そうして風を感じながら満天の星空を眺めているとき、我々は紛れもなく地球の一員であることを再認識するのです。
                    富山県天文学会員 中川達夫 (富山市)

 
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衛星から夜の地球画像nasa提供    光害ますます深刻化国際天文学連合会 警告

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