動かぬ雲   

「あの雲ちっとも動かないなぁ。」
天の川を見たことのない人が、野山で見る
天の川の第一声である。
 あたりは一面の星空なので、そこだけが白く
もやもやと雲のごとく漂っているからである。
 十八歳の時、初めてはっきりと見ることが
できた。
 長野県の美ヶ原である。全天を覆っていた
雲が切れ、満天の星空となってきた。
しかし視点は、しばらく動かぬ雲に固定し、
これが天の川だと納得するまで時間がかかっ
たものである。
 この天の川、雲のほかにも山火事の煙や
死後の霊の集まり、西洋では、ミルキーウエ
ー(乳の道)などと表現されている。
 一見動かないように見えるが、実は太陽や
月などと同じでだいたい一日で一周している。
およそ二分で太陽の直後分動くことになる。
 ためしに大地に寝そべり木々の間などから
天の川を見上げると、本当に動いていることが
わかる。
天の川だけでなく、空全体が回っていることが
体感できるのだ

自然との語らい

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