POD-XEリフレッシュ作戦


 金田式アンプを使うようになってからは、もう使うことはないだろうなあと思っていたコンデンサーカートリッジCP-Xですが、エレクトレット型のCP-Yを聴いてあらためてコンデンサー型の音に惚れ直し、高周波変調型のこちらのほうも無性に懐かしく思えてきてカムバックさせることに…ということで、専用発振検波器POD-XEをリフレッシュしてみました。



バック・トゥー・ザ・エレクトロスタティック!

 CP-Yを聴いたことで、私の中に「あの頃」が戻ってきてしまった。またCP-Xの音が聴きたい…

 CP-Xは2個持っている。それぞれスタイラスを側面から光で照らしてルーペで観察してみる。摩耗でスタイラスの先端に平面部分ができていれば、そこに反射した光の点が見える。フィデリックスのサイトで学んだスタイラスの摩耗判定法だ。

 最初に入手したものは、明らかに摩耗の跡が認められる。ダンパーも腰がなくへたっている感じ。もう使用には耐えないだろう。後に入手したもう一つのほうは、私のところで実際に使った頻度はずっと多いのだが、ダンパーはそこそこしっかりしているようだし、おや、意外にも特にフラットスポットができているような光の反射は見られないぞ。ふ〜む、そういえば…

 かつてこいつを使っていたときは、おそらくはUA-3用と思われる細めの専用アームパイプを短く切り詰めて、無理矢理まっすぐに伸ばしピュアストレート化した上で、内部の配線は取っ払い、CP-Xから直接モガミ2526で信号を引き出していたのだった。



 かつての遺物。2551ピンプラグに2526極細同軸ケーブルの名残が少し。アームパイプに巻いてある黒いのは、そのままだと軽過ぎてバランスが取れないので、ブチルゴムと釣り用の鉛板重りを巻いてアセテートテープでカバーしたもの。

 長さの短いピュアストレートアームだと、レコードの外周から内周までトレースする間にスタイラスの向きが音溝の接線方向に対してけっこう変化する。スタイラスが音溝に接する部分がぐるりと移動する訳で、同じ部分ばかりが摩擦されることがなくなりフラットスポットができ難くなる、かもしれない(?)。そういえば、ピュアストレートを提唱していた江川氏も、針が長持ちすると言っていたっけか。



 こうしてカバーを開けて、内部のピンに直接モガミの2526をハンダ付けして使っていた。このCP-XはPOD-XEをジャンクで入手したときオマケで千円で譲ってもらった。これから使おうとしているのはこちら。奥のほうが最初に入手したものだが、疲労が進んで専ら観賞用といったところ。


 ともあれ我がCP-Xのスタイラス、これだったらまだそこそこの期間使えそうである。よし、決めた、常用システムに復帰させよう。ときどきCP-Yや103と交替しつつ使うような使い方なら十分実用になるだろう。となれば、専用発振検波器POD-XEには少し手を入れてやらねばなるまい。


 今回の整備をあらかた終えたPOD-XE。外見上は電源コードとトランスの接続ケーブルが変わっている。



まずはタマ

 紙袋にくるんで棚の奥にしまいっ放しになっている発振検波器POD-XEは、真空管を抜いたままだ。使用球はポピュラーなECC82/12AU7なのでどこでも手に入りそうなものだが、電極間容量の違いからか、あるいは実際のGmの違いからか、PODの高周波発振/検波という用途には球のメーカーによって微妙な相性があるらしく、海外有名メーカー製の高品質管が必ずしも好結果をもたらす訳ではないらしいことを経験している。手持ちの球ではもうひとつ相性抜群とまでは行かないようなので、ひとまず新しい球を調達することにした。

 ネットオークションを覗いていたら、使用数時間の松下製12AU7準新品が2本セットで出品されているのを見つけた。私が見た古いPOD-8やSRA-7Sといった機器には松下製の球が使われていたから、たぶん時代がそれほど離れていないPOD-XEも工場装着球は松下のものだった可能性が高そうだ。とすれば、相性については期待大である。オークションに添えられている写真がすごく下手で、印象はいまひとつだったが、出品者の評価は悪くはなかったので、迷わず入札した。
 黄金期の国産真空管でこういうオーディオに多用される品種ともなると、近頃では結構な値がつくものなのだが、写真の下手さの威力は絶大で(出品者の人、ゴメンナサイ(^^;)、全然大した値段でもないのに競合者は皆無、相場より遥かに安い出品価格のまま落札できた、ラッキー(^^)。やっぱり出品するときは極力奇麗な写真を添えるのが吉ですな。

 さて、棚の奥からPOD-XEを引っ張り出して調達した真空管を装着、UA-7のパイプを交換し(ピュアストレートではないやつ)、CP-Xをセット。久方ぶりにシステムに繋いで電源を入れる。と、ん?なんかトランス唸ってるんだが…まあいいか、とりあえず聴いてみよう。

 むー、ちょっとベールがかかった感じはあるが、音のひとつぶひとつぶがスッ、スッとストレスなく立ち上がってくるような印象の音の出方には、ハッとさせられるものがある。このあたり、やはりコンデンサー型ならではだ。よーし、復活させてやるぞ〜、といよいよ気分が高揚する。




電源トランスは「詰め直し」

 唸っているトランスだが、まーどういうことなのかおおよそ見当はついている。結果を予測したうえで、レジ袋の大きいやつの中で外付けのトランスのケースを開けてみると、案の定この有様。



 「その他」の頁でも既に紹介しているとおり、電源トランスはケースの中にウレタンスポンジにくるまれて詰め込まれているだけで、リジッドに固定されてはいないのだが、そのウレタンが経年劣化でグズグズかつネバネバになってしまっていた。ウレタンというのは何かと便利な素材だけれど、こういうところが厄介だ。

 とりあえずホームセンターで適当なウレタンスポンジを買ってきて詰め直しだ。といっても、その前にグズネバを取り除くのがけっこう大変だった。ケースに粘っこくこびりついたところなど、少々こそげたくらいでは取りきれないほど。溶剤でも用いないと完全には落ちそうにないが、そこまでする元気はない。どうせ見えないし、ということで、ほどほどのところで妥協。ホントは見えないところにも気を配るのが大事、なのですがね(^^;。

 新品ウレタンの効果は明らかで、これでもうトランスの唸りは聞こえなくなった。




本体整備

 交換すべきパーツが集まってきたところで、いよいよ本体のほうにかかることにしよう。

 POD-XEのデザインは好きだが、メインテナンス性は極めて悪い。ハンダをはずしながらでないとバラせない厄介な構造なのだ。今の時代にはおよそ考えられないだろう。組んでバラしてまた組んで、抵抗1個換えるのも大仕事になる。一つ変更を加えるごとに音の変化を確認しつつ作業を進めたいところだが、これではとてもそんな気分になれない。残念だが、複数の変更をまとめて一気にやってしまうのが現実的だ。それでも実際には幾度となくバラして組み立ててを繰り返すハメになったのだけれど。



 写真はすべての基板を外したドンガラ。四角い穴はメーターの突起を、丸い穴は真空管の頂部をそれぞれクリアするためのもの。丸穴の側にあるのは検波回路のエアートリマー。



 以下、行った作業を時系列どおりに並べると話があまりにとりとめなくなってしまうので、項目毎に整理した。実際は、あっちを取り替え、こっちをいじり、聴いたら気が変わってまたもあっちを…みたいに行ったり来たりのドタバタだったのだが。

 今回このページの作成にあたり、有限会社STAXおよび当時POD-XEのブースターアンプ部を設計した現フィデリックスの中川さんから、POD-XEの回路図を掲載することについて了承を得ることができた。STAX社からはPDF化された社内用の回路図も提供していただいたのだが、それをそのままここで公開することはできないので、私のほうで作図し直したものを載せることにする。原回路図と実機で微妙に異なっている点もあるので、そうした部分は実機に合わせることにした。
 回路図は、中川さんの真似をしてMicro-Cap9DEMOで描いた。あくまでシミュレーションソフトのGUIに過ぎないので、製図自体を目的として使うには不都合な点も多々ある(複数のタップを持つトランスやコイルをインダクターの記号を繋ぎ合わせてごまかさねばならない、とか、電解コンの記号がない等)のだが、図面が奇麗なのと、パーツの定数などの添え字の配置に自由が利くのが使い勝手がよくて、けっこう気に入ってしまった。が、うちのMacでは使えないんだな。自宅用MacもそろそろWinを動かせるIntel Macに乗換えるべきか。でもまだOS9を動かしたいこともあるし…おっと、これは独り言。




〈電源部〉

 既に大部分の抵抗・コンデンサーを交換されてしまっている我がPOD-XEだが、それも今となってはもう20年も昔のこと。電解コンデンサーはこの際、再度新しいものに載せ換えてしまうことにしたい。電気的には特に問題なさそうなのではあるが、最近の性能の良さそうな品種にちょっと興味もあることだし。

 電解コンが使われているのは主に電源部である。下がその回路図だ。

 なんと、半波整流である。音質上の理由があったかどうかは知らないが、そういえばマランツ#7も半波整流だった。電源基板を自作してブリッジ整流にしてしまうことも不可能ではないが、原回路に敬意を表してこのままで行く。

 使われている電解コンデンサーは、まず電源整流/平滑用に47μFが2個。これは耐圧250Vのチューブラー型だ。チューブラー型の電解コンは入手難で、ニチコンやエルナーのものが僅かに流通しているようだが、結局買ったのはEROの250V100μFだ。EROは今はヴィシェィに吸収されてしまったので、手に入るEROブランドのものはいわゆるNOSになってしまう。よって、「新品パーツに交換する」という主旨からはちと外れ気味になるが、まあよかろう。オリジナルに比して容量は2倍なのに、サイズはやや小さい。
 あと高圧系は、発振/検波の真空管回路用+B1,2のデカップリングにラジアルリードの250V22μFが2個。 以前はこの耐圧のラジアルリードのものがどうしても入手できず、仕方なく左の写真のようにチューブラー型を無理矢理立てて取り付けていたのだった。
 この耐圧だとオーディオ用途を謳ったものは見当たらないので、とりあえず品質の良さそうなニッケミのKXGという品種を調達した。ただし、容量はやはり大きくなって47μF。なにしろそれでもサイズが小さく、実装したときのルックスがイマイチなのだ。ケミコンは本当に小さくなったものだ。

 半導体構成となる出力アンプ(ブースターアンプ)のための電源部(+B3)には、250V22μFが1個と50V100μFが2個必要だ。これらはすべてラジアルリード。
 100μFは、前はセラファインにしていた。22μFは、オリジナルでは+B1,2と同じものが使われており、これらは3つ並べて実装されている。前に交換したときも、この配置の関係もあってやむなくチューブラー型で揃えたのだが、耐圧については実際は100Vで大丈夫だ。ここもサイズの点から倍増の47μFにして、低圧系はあとの2個の100μFを含め3個ともニチコンのオーディオ用高級品種であるMUSEのKZで揃えることにした。これで+B1,2のデカップリングと低圧系は5個ともサイズが同じとなる。オリジナルでは3個並んだところはサイズがもっと大きくてスペースも広く取ってあるので、これだと見た目にはもうひとつ面白くないのだが。


 写真はひとまず7個のケミコンを全て交換してみたところである。これで特に音に問題が出た訳ではないが、やっぱり見た目がなあ…オリジナルの状態からすると、起伏に欠ける景色だわなあ〜。と思っていたら、ちょっとよさそうなのを発見。
 ニッケミのKHAという廃品種で、200V47μFなのだが、KXG250V47μFよりも体積が倍以上もありそうだ。こういうのを見ると、やっぱりケミコンは大きくなくちゃあ、と思ってしまう。+B1,2は実測156Vあたりなので、これなら耐圧もOKだ。というわけで早々に買い直し。






 届いたのを早速付けてみると、お〜、でっかい煙突がそびえ立って頼もしい雰囲気になったじゃありませんか。って、我ながら単純だ。でも、見た目のメリハリも大事だ。って、中に隠れるのにトランスのときと言ってることが違うな。我ながらご都合主義(これって「主義」か?)(^^;。

 このケミコンの音は最初やや眠たい感じだったが、こういう大物はしばらくエージングをしないと本領を発揮してくれないのが通例。はたして、しばらく使っているうちに俄然しっかりした音を聞かせてくれるようになった。

 ただ後で、実は電源を入れてから真空管が暖まるまでの間、+B1,2は過渡的に200Vを超えて最高で207Vまで上がることが判明した。3.5%の耐圧オーバーになるが、な〜に、このくらいでは動じる必要はない、せいぜい10秒に満たない時間だし、なにしろ金田式で鍛えてますからなあ、はっはっはっ…(爆。
 まあ、一応マージンの範囲内だろうということで、いつもの呪文「自己責任、自己責任、ムニャムニャ…」。

 これでひとまず電源回路は仕上がったが、ボリウムを上げると少しハムが聞こえる。実用上S/Nが問題になるレベルでは全然ないのだが、改善できるものならしたいところだ。右chのほうが少し大きいようなので、電源トランスを本体右側のすぐ側に置いているせいかと思い、トランスを遠ざけてみたが、それほど変化はない。
 ひょっとしたらこれか、と疑ったのは電源トランスからの配線。上の回路図で判るとおり、+B電源のアースラインにヒーター電流が重畳されているのだ。これを分離してやればハムはなくなるかもしれない。そこで、電源トランスのコネクターを5pinから6pinへ交換して、配線を分離した。

 結果は、期待したのだが、ハムには全然関係なかった(^^;。あと考えられるのは、ヒーターが交流点火であるということくらいか。トランスを含めた電源部を一から別誂えで作ってしまえば解決できるだろうが、いまのところそこまでやるつもりもない。通常のVR位置で聞こえないから、実用上は特に気にもならないし。ま、もとのコネクターはだいぶ黒ずんでいたので、新しくなって気分がよろしい、ということでよしとしよう。





〈OSC/DET部〉

 PODの最も本質的な部分がこれ。下が片chぶんの回路図である。そもそもPはPickup、OはOscillator(発振器[OSC])、DはDemodulator(復調器)を意味する。demodulateの内容は、CP-Xによってmodulate(変調)された高周波をdetect(検波[DET])して音楽信号を取り出すことである。大まかに回路図の下のほうがoscillator、上がdetectorだ。

 能動デバイスはchあたり1本の真空管ECC82/12AU7だけである。STAXから回路図をいただいたのは、この一連の修復作業のだいぶ終わりのほうになってからというタイミングだったのだが、回路図の端のほうには不鮮明で判読困難ながらパーツリストも載っていて、この真空管の欄には「テレフンケン」と記されているのが読みとれる。実際にメーカー装着球がテレフンケンだったかどうかは不明だ。早くから判っていたとしても、テレフンケンじゃ高過ぎてちょっと手が出ない。私は松下球でいいや。

 後日、当ページの読者の方より情報をいただいた。その方の所有するPOD-XEには、まさしくあの管底◇印の球が付いていたそうだ。POD-XEが販売されていた期間すべてにわたってそうだったかどうかは定かではないが、TELEFUKEN ECC82が使われたのはまぎれもない事実だったようだ。


 電流計は検波の同調ポイントを確認するためのインジケーターで、OSCの調整に不可欠のものだ。もっと古いPOD-8や10ではメーターがなく、代わりにテスターの測定棒を差し込む端子が出ていた。

 回路図下のほうのECC82片ユニットを含む部分がOSC部である。ハートレー型であるとの解説をとある文献で見かけたが、素子の関係がちょっと違うように見える。発振周波数が可動コア入りのコイルで調節でき、PODの上面パネルのメーターの下に2つ並ぶ銀色のノブは、このコイルのコアを回して調節するための「調整棒」である。ツマミの先には樹脂製の六角形の棒が続いており、コアに開いた六角形の穴に差し込まれる。発振周波数は左chが約23MHz、右が約17MHzということだ。

 OSCが作り出す高周波は、0.22pFのC(これについては後述)を介して、上側DET部のECC82ユニットのグリッドに繋がっているコイルとトリマーコンデンサを並列にした共振(変調)回路に受け渡される。そして、このコイルの途中のタップに接続されるカートリッジCP-Xがレコードの音溝をたどることで、CP-Xのスタイラス周辺のコンデンサー部の容量が変化し、それに応じて共振の度合いが変化する(このプロセスがうまくいくよう、OSCコイルのコアを回して発振周波数を調節する必要がある)。すなわち受け渡された高周波が振幅変調される。つまりAMだ(音がAMラジオみたいになる訳ではありません、念のため)。この変調された高周波を、カソード抵抗に56kΩという高い抵抗値を与えられたECC82片ユニットが検波し、カソードに現れた信号からπ型フィルタで高周波成分を除いて音楽信号を取り出すのである……というのが私の理解なのだが、例によってトーシロの言うことなのであまり信用なさらずに。

 なお、変調回路の一部たるCP-X本体の内部回路はおよそ左図のようなことになっている(と思う)。中身は、高周波回路の用語としてはコイルと呼ぶのだと思うが、まあ空芯のトランスですね。インピーダンスを変換してスタイラス近傍のコンデンサ部の容量変化を効率よく検出するための構造なのだろうが、定量的な正確な話は私にはできませんm(__)m。

 DETのトリマーコンデンサは、原回路図では右chが10pF、左chは5pFとなっているが、実機では両chとも10pFのものが上面シャシーに固定されており、左chはこれに5pF程度のCを直列にして容量調整範囲を適正にしている。
 CP-Xも含んだこの変調回路は、共振のピークを2つ持っており(OSCチューニング用メーターで確認できる)、このトリマーで2つのピークが揃うように調整する。
 OSCの調整のほうは、コアを回してメーターで2つの共振の山を確認した後、いったんその谷間にあたる位置にコアを戻し、右chはそこからコアを共振の山に向かって登る中腹までねじ込み、左chは逆にコアを戻して、やはり逆側の山に向かって上る中腹まで引き出す。これで両chとも音がよく聞こえるポイントにコア位置を微調整する。(わからん説明だな…実際に使っている人にしか通じなさそうですが、悪しからず(^^; )

 DET部の抵抗は、既にほとんどシンコーのタンタル抵抗に交換してあったが、今回56kΩはススムに換えた。56kΩだけ1Wを使っていたのだが(他は1/2W)、かつては音がよいだろうと思ったのだけれど、今考えると、過剰なのは却って鈍くなりそう、ということで。

 高周波フィルタの100pFは、もとは貧相なセラミックコンデンサだったのを日通工のディップマイカに既に換えてあった。これは今回換えなくていいだろうと思っていたが、後でSTAXからいただいた回路図に、おそらくは改良のためのメモと思われる手書きの書き込みが数カ所あって、右chの高周波フィルタのところを囲んで「200p」とあるのが読みとれた。左より周波数が低い訳だからリクツに合いそうだ。これを見て、ちょうど部品箱にあった手持ちの200pFに付け替えた。容量が増えて聴感に影響が出ないか心配したが、私の耳にはまったく違和感はなかった。


 まだ整備途中段階のOSC/DET基板。緑色の四角いコンデンサーはWIMA の3300pFでEQ素子だ。OSCコイルのシールドケースはマイクロフォニックノイズを拾うので、振動対策のためブチルゴムとアセテートテープを巻いてみた。


 高周波フィルタのインダクター0.4mHは、写真左上のようなワックス固めの現代では見られない形状のパーツがオリジナルだ。
 細い線をいっぱい巻いてある訳だから、こういうものは純度の高い材料を使っている現代パーツのほうがよさそうだと考えて、たぶん太陽誘電製と思われる390μHのものを買い込んだ。寸詰まりの抵抗のような形状で、DCRを測ったら16Ω。ところが、古いほうが14Ωだったのでちょっとがっかり。
 せっかくだから一応新しいほうに付け替えたが、これによる音の変化は…よくわからないのだった。少なくとも悪くなったとは感じられないのでまあよいのだが、見た目に小さ過ぎてもの足りないので、いずれもうひと回り大きいサイズのものを買い直そうと思う。DCRももっと低いだろうし。




〈イコライザー部〉

 振幅比例型カートリッジ用RIAAイコライザーについての理論的なことについては長くなるので、いずれ予定している別のトピックで詳しく取り上げることにして、ここでは詳細には触れない。大雑把に言えば、段付きのハイパスフィルターみたいなものですな。
 POD-XEの場合、EQ回路は次の図のとおりである。検波(DET)部からの信号はここを通ってイコライズされてから、続くブースターアンプに受け渡される。発振/検波部とこのEQ部までが一つの基板に載っている。

 このEQ部については、既に私のPOD-XEの基板上にはオリジナルのパーツが全く残っていないが、今回あらためてここのパーツも見なおした。

 0.047μFはカップリングの働きもしているが、EQ回路の一部だ。これはジーメンスの積層フィルムコンに“安井風ベーク板挟み糸巻き加工”を施して使っている。これはひとまずそのまま使う。
 3300pFはこれまで日通工のディップマイカを使っていた(オリジナルはスチコン)。霞たなびくような雰囲気が出て、かつては情報量が多いように感じられたために使っていたものだが、今聴くと付帯音があるような気もする。ひとまずWIMAのFKP-2という品種のポリプロピレンフィルムコンを試してみた。ボックス形状で耐圧800Vのものである。音はカッチリした感じで悪くなかったが、もうひとつほぐれきらないような印象もあって、しばらく聴いた後でジャンクで入手してあったスチコン(富士電機製、オリジナルとは別物)に交換した。3300pFが1個しかなく、片chは2200pFと1000pFをパラにして3200pF。100pFのずれは約3%の誤差だが、この程度なら実際聴いて違和感はない(駄耳のせいか(^^;)。


 33kΩは、POD-XEの場合、続くブースターアンプの入力インピーダンスが500kΩだからこの値なのだが、前モデルPOD-Xではブースターアンプの入力インピーダンスが100kΩで、EQの33kΩのところは45kΩという値であった。つまり、後に続くアンプの入力インピーダンスとパラになるので、それを考慮した値でなくてはならない。続くアンプの入力インピーダンスが無限大だったとして、32kΩくらいが正確なイコライズ特性を与える値のようだ。

 というのが本来の姿なのであるが、実は私はこの33kΩを39kΩに換えてしまった。実際に音を聴くと、33kΩでは全体に甲高い印象の癖っぽいバランスで、しばらく聴いていると耳についてしまうのだ。39kΩにすることで、中域から低域にかけて、少しレベルが持ち上がる。ごくなだらかに低いほうが持ち上がった特性だ。シミュレーションしてみると100Hzあたりで+1dBちょっとくらいだが、聴感上のバランスは私が聴いた限りではこのほうが至極真っ当になるように感じる。ひょっとしたらカンチレバーのダンパーが劣化してリニアリティーが悪化している、といったようなこともあるのかもしれないが、PODに汎用性を考える必要はないので、理論的な正しさより実際の音を取るのでよかろう。



〈ブースターアンプ〉

 もっと古いPOD-8や10は発振/検波部からの信号を直に出力していた。組み合わされたカートリッジCPS-40の出力が大きくて、それで十分な信号レベルが得られていたからだが、CP-Xはカートリッジとしてより優れた構造となった代わりに得られる信号レベルが小さくなり、専用PODは出力をブーストするためのアンプを備えることになった。ゲイン約10倍のフラットアンプである。
 POD-Xでは、2SK30を使ったFET1石のソース接地アンプだった。回路としては特に変わったところのない教科書そのままのもので(実際はそうではなかったようです。詳しくは下の“交換針のことなど”の項参照)、出力インピーダンスは10kΩと発表されていた。当時のプリアンプのライン入力インピーダンスはたいてい数百kΩあっただろうから、それで十分だったのだろう。

 マイナーチェンジされて登場したこのXEでは、ブースターアンプはPNPのTrが増えて2石構成となった。回路は次のとおりである。ちなみに、この2SA561は電源部に使われている2SC734とコンプリらしい。

 実物を見たとき、FETを使っているのに入力にカップリングコンデンサーが入っているようなので訝しく思って基板のパターンをたどったら、半導体の選別や調整の半固定VRを要しない実に要領よくまとまった回路であることが判り、大いに感心したものだ。単電源のACアンプだけれど、1972年の設計なので、当時の標準的な半導体回路の流儀からすればずいぶんと進んだエレガントな回路といえるのではなかろうか。このアンプを設計したのも中川さんだったということを、最近になってフィデリックスのサイトで知って、なるほどと納得。

 で、パーツだが、片chあたり2つの100μFは、前に交換したときにはどちらもセラファインを使っていた。この品種にはちょっと特徴的な音色を感じるように思うので、これらも今回交換することにした。
 容量はそのままで、基板スペースに納まる範囲でできるだけ大きいもの、ただし無用に耐圧を高くしない、という条件で選んだのが、K30のソースパスコンには電源部にも使ったMUSE KZ、そしてA561エミッタのほうは同じMUSEのシリーズで無極性のESという品種。正直言って何種類も試聴して選んだ訳ではないので、音がどうとか判断はできないのだが、とりあえず結果はよいようだ。

 出力のカップリングは岡谷のVXに換えてあった。STAXのもう少し後の時代の機器の内部写真を見ると同じような色・形のものが多用されているので、たぶんこれだろうということで選んだものだ。容量は0.47μFに増量済みだが、そこへ今回さらに同容量のERO MKT1826をパラにした。これで出力コンデンサーは0.94μFになった。20kΩのボリウムで受けても低音は十分だ。
 入力のカップリングは、こちらも前にいったんVXを使ってみた。が、オリジナルの松下印が付いた芥子色のフィルムコン、耐圧が50Vしかないのにかなり図体が大きいことからすると、どうやら箔タイプらしい。見た目はいかにも古くさくてパッとしないが、リード線も磁石に付かないし、実はけっこういいものなんじゃないか、ということで再起用してみた。

 抵抗はほとんどシンコータンタル1/2Wに換えてあったが、470Ωがなぜか430Ωになっていた。当時注文したときに間違えたのか、誤発送されたのをそのまま引き取ったものか、それとも意図的に変えたのか、今となっては記憶にない。これによりNFBが少し減るのでアンプのゲインは増す。初段の動作電流はほとんど33kΩによって決まってしまっており、ここのところで40Ωばかり違ったところで、アンプの動作点に与える影響は33kΩの許容誤差ぶんよりもずっと小さい。こうしたところもこの回路の優れた点といえるだろう。
 A561エミッタに入る270Ωのみ、おそらくかつて注文し忘れたのだろう、オリジナルのカーボンコンポジション抵抗のままになっていた。抵抗値を測ってみたら、やっぱり左右それぞれ300Ω超と330Ω超だった。年数の経ったカーボンコンポジション抵抗は抵抗値が狂っていることが多いようだが、狂い方もまちまちだ。もちろんそのままでは気分が落ち着かないのでこれも交換する。金皮でもよかったが、なんとなくTRWのカーボンコンポジションを取り寄せてみた。5本帯のカラーコードは伊達ではなく、抵抗値を測ってみたらほとんど表示そのままの値だった。オールドストックだというのに、恐るべし、MILスペック。なんとなくついでに出力の270kΩも同じ品種のTRW560kΩに換えた。これも抵抗値は非常に正確だった。正確さはあまり要求されない場所だが。

 2SA561については、DCアンプファンとしては2SA725に交換してみたいという気持ちがちょっとあるが、今のところ能動素子の変更は思いとどまっている。


 ブースターアンプ基板。回路はコンパクトだが、基板もコンパクトなので、けっこう高密度な実装になっている。半導体以外は右側の大きな入力コンデンサのみがオリジナルパーツ。


ひとまず整備完了

 要所の線材も新しくして、あらかた整備は完了した。鳴らし込むうちに、ケミコンのエージングが進みつつあることが大きいのだろう、音がどんどん鮮やかになって、すっかり生き返った感じだ。音声信号がかなり多くのコンデンサーを通って出て来ていることを忘れそうになる。やはり手を入れればそれなりに成果があるものだ。

 とあるサイトで、CP-Yの音をCP-Xと比較して「何の変哲もない音」で魅力なしと評しているのを目にしたが、私にはCP-Yのほうが高次元の再生をするように聞こえる。ひと言で言えば、CP-Yは「水のよう」な音だと思う。極めて純粋。ただ、そのことが私たちが手にするほとんどのレコードに合っているかということになると、そうはいかないようだ。DECCAの名盤といわれるものも、CP-Yにかかると人工的な加工臭を露にしてしまうことが多い。本当によい録音だとすばらしい音を聴かせてくれるのだけれど。古い録音との相性も概してよくはない。
 CP-Xのほうは、もっとそれ自身の音に魅力があるように思える。POD-XEのOSCの調整棒を触るとマイクロフォニックノイズが出たりして、もとより構造からして高剛性重厚長大オーディオの世界とはほど遠いのだが、こういうユルさがもたらす音の伸びやかさがよいほうに作用している面がありそうだ。繊細かつもたつきのない音の出方はコンデンサー型ならではだし、CP-Yと異なり古いモノラルのレコードを聴いても楽しい。復活させて正解だった。

 現状では、右chの発振/検波の動作がもうひとつ本調子でない感じで、同調点がクリティカルで出力レベルも左chより低い。左chの同調状態を最良点から少しずらすことでバランスを取って聴いているが、いまひとつ面白くないので、ブースターアンプのNFB抵抗430Ωを左だけオリジナルの470Ωに戻してゲインを下げてみた。音質については違和感はないが、これでもまだ左chは出力レベルが大きめで、最良の同調点に持って来るわけにいかない。
 このあたりの改善がまだ次の課題として残っている。そして、イコライザー回路についても長らく暖めてきたちょっとしたアイディアがあるので、それを試してみたい。








(つづき〜更なる改善を求めて)


OSC/DET部最適化

 下の写真の真空管手前にある部品、これが何なのか見てすぐ判る人というのは、はたしてどのくらいいるだろう(自分がそういう人だったら悩まずに済んだのですがね…)。

 見た目にはカーボンコンポジション抵抗のような姿だが、やや太短い。カラーコードは、最後の銀帯は許容誤差10%の表示だろう。1本目の帯が細く少しかすれていて判り難いが、ルーペで見ると初めの2本はともに赤であることが確認できる。ということは「22」だ。そして、問題は3本目。灰色に見える。が、もし灰色なら10の8乗だ。とすれば、これは抵抗で2.2GΩ。しかし、そんな高抵抗のカーボンコンポジション抵抗というのは聞いたことがない。あるいは、もしかしたら青が退色したものかもしれない。とすれば10の6乗で22MΩ。これならあり得る値だが、残念ながらいずれにしてもうちのテスターで測れる値ではない。

 実は、そもそもこの場所は本来OSCとDETの橋渡しのトリマーコンデンサーが入っているところなのだ。もっと古いPOD-8では、ここには見たところ相当容量の小さそうなトリマーコンデンサーが使われていた。
 もしこれがコンデンサーなのであれば、3本目のカラーコードは灰でも青でもおかしい。コンデンサーの場合は、カラーコードで現される容量の単位はpFだが、灰や青ではパーツのサイズに対して容量が大きすぎるし、回路的にもあり得ない。銀なら10の-2乗で0.22pFとなり最も納得できる値になるのだが、退色したのだとしても、末尾の銀帯とは決定的に色が違いすぎだ。
 あるいは、DETの共振回路は共振周波数においてはインピーダンスがかなり大きくなるはずだから、高周波の伝達に高抵抗を使うこともできるのかも?

 と悩んだあげく、STAXに回路図の提供をお願いするとともに、メールで当該部分の写真を示して質問したのだった。

 対応していただいたSさんからは「サービス担当に確認しましたら、2pFほどのコンデンサー・・・ということでしたので、たぶん2.2pFかと思います」という返事をいただいたのだった。しかし、カラーコードから考えてこれはどうも疑問に思えた。ならば、と試しに2.05pFのマイカコンに付け替えてみたところ、はたして同調の具合がおかしくなってしまった。

 どうやらコンデンサーであるのはほぼ確実としても、やはり容量値が2pFあたりということはないようだ。

 届いた回路図を見ると、この部品があるべき位置に描かれていたのは1〜2pFのトリマーコンデンサーだった。いずれにしても実機とは違っていた訳だが、さらにパーツリストのこの部品の欄には「0.2pF」という記載があった。トリマーの調整値ということなのだろう。

 ということは…

 ようやく結論が見えてきた。やはりこの部品は高抵抗などではなく、あくまでコンデンサーであり、その容量は0.22pFに間違いない。すなわちカラーコードは赤・赤・銀なのだ。3本目の帯は許容誤差表示の銀とは色がまるっきり違うわけだが、これはおそらく塗っている工程が別で、使われている塗料自体も別物なのだろう。

 こうして、ようやく右の図が確定した次第。

 ところで、STAXからいただいた回路図には、両chともこのコンデンサーのところに手書きの丸囲みがなされ、「0.5pF」との記入がある(!)。
 これは製品発売後に判明した「最適値」ということなのだろうか。

 もしかすると、問題の右chの性能をこれで一挙に回復できるかもしれない。換えてどのくらい変化があるかはやってみなければわからないが、もともと付いているものが経年劣化していることも考えられる訳だし、この状況で何もしない手はないだろう。少し光明が見えた。よっしゃ、早速webで調達しよう…

 と、張り切って検索を始めたが、探せども、探せども…う〜ん、ないっ。0.5pFなんて、今の時代、耐圧50Vのチップコンデンサーしか見当たらないのだ。これではこの真空管回路には耐圧が全然足りない。双信に、やはりチップパーツだが、一応耐圧500Vのマイカコンで0.5pFがあるようだった。が、残念ながらこれは市場には流通していないようだ。1pFのディップマイカを直列接続して使うくらいしか手がないか…(--)

 情けない気分になりながらも探し続けていたら、やっぱり諦めちゃいけない、ついに見つけた、ありましたよ、U.S.A.に! もともと付いているのとほぼ同形状に見えるそれは「モールド型セラミックコンデンサー」。なになに、温度補償型で、容量値も極めて安定とな、お〜、よさそうじゃん。それで、あの無線機で有名なコリンズ社がオシレーター等に多用しただって、む〜、いよいよいいモノっぽい。どうやら製造もコリンズによるものらしい。一粒$2、鼻息荒げて早速注文、えいっ!「ポチッ」。


 STAXの原回路図に残された改良案と思われる書き込みは、既に報告済みの右ch高周波フィルタのC増量もそうだったのだが、更に他にもあるので、モールド型セラミックコンデンサーが届くのを、とりあえずそっちを試して待つことにする。

 OSCの100pFのところに丸囲みがあって、両chともこれに線を引いて「30〜50pF」という書き込みがあった。容量が半分以下ということになるが、そんなことをすると周波数が倍以上に上がってしまうのではないか? とも思ったが、調子がイマイチの右chの100pFを外して手持ちにあった39pFのディップマイカを試しに付けてみたところ、たいして同調ポイントが変化することもなく問題なく発振している様子だ。ただし、耐圧が100Vくらいのものだったらしく、しゅわしゅわぷすぷすとノイズが出ている。これではまずいので、耐圧の十分なものに替えることにした。
 容量値の許容幅もかなり広そうだし、しかもどうやら特に優れた温度特性が要求される訳でもなさそう、それにあまり音質にも関係なさそうだ。ディップマイカばかりというのも今ひとつ面白くないので、ここはオリジナルに敬意を表してセラミックコンで行くことにした。ただしやっぱりいくらかでも高級そうなやつのほうが気分がいいわな、ということで選んだのはスプラグの250V47pF。国産品より色が濃くて、表面の印字もカッコいい。
 もっとも、実際のところ、特に動作に変化はないようだし、音がよくなったようにも感じられないのだが、たぶんより最適化がなされたものと信じることにしよう。

 あと、改良の書き込みではなかったが、OSCの8.2kΩがカーボンコンポジションなので、こいつもおそらく抵抗値が狂っていることだろう、ということで交換することにした。POD-Xでは10kΩとなっていたところなので狂っても特に問題はなさそうだが、一応交換する。高周波回路ゆえインダクタンスが螺旋溝切りタイプより少なそうなススムにしてみた。はたして、特に動作に変化があったような様子は見られず。ま、気分も音のうち、ということで。


 さて、右ch問題の解決には繋がらないかくのごとき試みに時間を割いたりして過ごした1週間の後、ついにはるばる海を越えて、というか空を飛んでやって来ましたよ、モールド型セラミックコンデンサー。なんと便利な世の中よ。かつてCP-Xを使っていた頃には思いもよらなかった状況だわなあ。

 手に入れたのは0.3pFと0.43pFのもの。右chには原回路図の書き込みの0.5pFに近い0.43pFを使い、もともと調子のよい左chのほうはあまり大きく変わってもらってもしょうがないので、気持ち増量の0.3pFを使ってみようという魂胆だ。


 Webの写真では、もと付いていたものと同じような外観に見えたけれど、手にした実物は、形は似ているものの、モールドの表面がコンクリートのようなざらっぽい感じで、だいぶ表情が異なる。

 ところでカラーコードだが、これもやはり銀であるはずの3本目の帯が灰色っぽいのだった。これの場合誤差が5%で金帯なので、本来の銀がどんな色調か判らないにしても、3本目の帯が金のようにメタリック調の輝きを持っていないことは見て明らかだ。もしかしたら、誤差表示の銀色と定数表示のそれは、同じ銀でも違う塗料を使う(定数表示にはメタリック塗料を使わない)という取り決めでもあったのだろうか。識者の教えを請いたいところだ。


 さあ、期待半分、オリジナルのパーツから交換してみると、おぅ、効果は覿面、右chの共振レベルが目に見えて高くなったではないか!\(^o^)/
 それまでは真ん中ほどまでしか行かなかったメーターの針の振れが大きくなり、右1/3のゾーンにまでかかるようになった。ただ、同調ポイントのクリティカルさに関してはそれほど変わらないようだ。この辺はもっと根本的な原因があるのだろう。まあ、そこは大きな問題ではない。
 右chの動作はどうやら本調子を取り戻した。音量も増し、左に追いついてきた。結果、S/Nも大幅に改善。これで安心して音楽を聴くことができる(^^)。



イコライザー回路大改造

 上のほうで示したEQ回路はSTAXの原図の流儀で描いたものなのだが、描きなおすと右のようになる。

 高いほうの音は2つのコンデンサーをそのまま通過していく。中〜低音は0.047μFを通った後、100kΩと33kΩによるアッテネーターを経由して伝達される。最低域は、0.047μFと130kΩ//(100kΩ+33kΩ)の抵抗で構成されるハイパスフィルターでカットされる。これでフラットになるのが振幅比例型のRIAAイコライザー、というわけだ。

 こうしてみると、130kΩの抵抗はどうしてもなくてはならないものではないように見える。“DC流”の設計作法でも、基本方針として抵抗の並列使用は音がよくないということで極力避けることになっているが、何かこの130kΩがあったほうがよい理由があるのだろうか? オーレックスのエレクトレットコンデンサーカートリッジ用EQアンプでは、ちょうどこの130kΩを取り除いて、0.047μFを0.022μFに置き換えた回路が用いられている。
 また、高域にとって2つのコンデンサーは直列になっている訳だから、こちらも音の点であまり好ましいものとは言えないだろう。

 素人考えの生兵法かもしれないが、抵抗が並列になることを避け、さらに音質劣化を最小にするためコンデンサーが直列に繋がるのも避けるよう工夫して、可能な限りシンプル化してみたのが下の回路だ。とりあえず「パラレルカップリング方式」という呼称が頭に浮かんだのだが、インチキ英語のニオイが漂ってますか(^^;。

 実は、このアイディアはCP-Xをかつて使っていたときに既に頭にあったのだが、当時の私の知識では回路定数を計算することができなかったのだ。今ならできると思うが、今では回路シミュレーターが使えるので、それでカットアンドトライしたほうが早い(^^;。

 33kΩを規準にして、E24系列で他のC,Rの定数を選ぶと、C2=3000pF、C1=0.022μF、R1=120kΩとすることで、オリジナルのEQ回路とほぼ同じ特性が得られることが判った。低域端が0.2dBくらい高くなるようだが、まあ問題ないでしょう。
 私の場合は前述のとおり、なだらかに中〜低域を厚くした特性としたいので、33kΩのところは39kΩにしているわけだが、この場合はR1=130kΩ、C1=0.02μFとするのが適当だ。これでシミュレーションしてみると、下のグラフのように実用上はほとんど従来型回路で39kΩを用いた場合と同等と言っていい特性を示す。

 青のグラフがオリジナルのEQ回路の特性。赤は33kΩを39kΩに換えたもので、中域から低域にかけてレベルが若干高くなっていることが解る。緑がこの新方式の特性で、ほぼ赤に重なっており、50Hz以下と1kHz以上では解像度の関係で赤が覆われて見えなくなっている。

 で、このC1,C2用として是非使いたいピッタリのスチコンが手持ちにあるんである。が、もとの基板パターンとは回路が違うので、そのまま基板の部品穴に挿す訳にはいかない。また、C1用のスチコンのサイズがけっこう大きくて、この基板上に載せるにはそもそもスペースが苦しい。小さく切ったAT-1上に組んでオリジナルの基板に中2階よろしく載せてやる、C2を裏面に配線するetc...、あれこれ考えた末にたどり着いたのは、必殺、空中配線っ!(--; …ということでこうなった。



 電源基板のほうで、もうチューブラー型のコンデンサーを立てて使わなくて済むようになったと喜んでいたのだが、こんなところでまた立てることになってしまうとは思わなかった。0.02μFはOSCコイルのシールドケースに両面テープで固定しているので、実装状態は「ガッチリ、しっかり」とはほど遠いものの、見た目ほど頼りなくはない。


 さて、その音は…

〜♪

…(°°! ああ、なんということか…これはえらいことになった。かつてこのCP-Xから聴いたうちで最高の音が出ている。昔使っていたときにはK式制御SP-10がまだなかったということを差し引いたとしても、なおこの音質向上には目を見張るものがある。
 これまでCP-Xの音には、CP-Yと較べるとやはり時代が少し古いぶん、どことなくセピア色の音調が感じられた。しかし、今ではそんな印象はどこへやら、である。瑞々しいとは、まさしくこういう音のことを言うのだろう。
 この音を表現するのに「正確」とか「低歪み」といった言葉は思い浮かばない。極めて工業製品っぽくない、晴れやか、かつしなやか、湿気った感じなのではない潤いのある音。そしてその情報量の多さといったら…今まで小出しになっていた微妙なニュアンスが、蛇口全開、どばどば出てくる。手間をかけた甲斐が、あった〜。でも、ない〜、交換針がぁ(--)。


 かくして、めでたく改善の試みが功を奏し、我がCP-X/POD-XEはとっても私の好きな種類の音を奏でてくれるようになったのであった。当然ながらこれはもう常用システムへ返り咲き決定である。
 ところで、実は更にもう一段コンデンサをすっ飛ばす方法を見つけている(ヒントはECP-1にあった)。ブースターアンプ入力のカップリングコンデンサーは、初段2SK30のグリッドに+B3の電圧を1/2に分圧した直流電位が与えられているがゆえに必要となっているものだが、下のような回路にすればこのカップリングコンデンサを排除することができる。ただし、“PASS OUT”は使えなくなるが(もともと相当の高インピーダンスで受けなければならない出力ゆえ、あまり使い道はない)。




 初段2SK30のグリッドバイアスを与えている分圧抵抗39kΩ2個は交流的にはパラレルになるので、これと18kΩでEQ素子の39kΩ(本来は上述のとおり33kΩ)の役割を受け持たせている。EQのCが直流をカットしてくれるから、これでブースターアンプのカップリングコンデンサーは不要になる、という寸法。
 18kΩはショートして、2つの39kΩの代わりに75kΩを入れれば、75kΩが交流的にパラレルになるので、これだけで大体EQ素子の39kΩの役目を果たしてくれる。が、抵抗パラに全面的に頼るのは音質面でちょっと気がかりなので、半分だけ頼ることにして直列ぶん18kΩを加えてみた次第だが、意味があるかどうか。75kΩ2本のほうが無駄に電流を喰わなくてよりよかったりして。

 この回路はいずれ試してみたいという気持ちもあるにはあるが、現時点で出ている音が既にとても魅力的なので、今のところ先を急がねばというまでの気持ちは湧いてこないのでした(^^;。それに、そもそも高入力インピーダンスのDCアンプを作って現状のPASS OUTの出力を増幅してやったなら、一気に2個のカップリングコンデンサをすっ飛ばせる訳で。





(ひとまず完結編)


すっ飛ばせなかった

 上に書いたカップリングコンデンサをすっ飛ばす方法を試してみた。中川さんが「私なら75kΩにする」とおっしゃったので、迷わずそちらを選択したのだが、結果は近況のほうでも既に報告したとおりちょっと期待はずれで、楽音自体の質はアップしたものの、ハムノイズが看過できないくらいに大きくなってしまい、あえなくボツ。

 外した0.33μFのフィルムコンと1MΩの抵抗



 どうやら、電源が完全にノイズレスというわけではないので、ゲート電位を決める抵抗の値が小さくなったことで、電源の残留リップルが2SK30のゲートに現れてしまった、ということのようだ。

 期待たっぷりで試みた新しい改造が失敗に終わる度に、そのまま元に戻すのも癪なので、例によっていじましく次善の策を練る諦めの悪い私であった。

 さて、電源をずっと低ノイズのものに替えない限り、初段ゲート電位を決める抵抗はMΩオーダーの高い値であることが必要のようだ。となると、やはりブースターアンプ入力のカップリングコンデンサーは除けない。だったら、能う限り質のよいコンデンサーを使うしかない。SEコン…0.047μFがあるけれど、ちょっと実装するスペースがないな。ここはやはりスチロールコンデンサーか。

 スチコンで、なんとか実装可能なものとしては、手持ちに0.024μFがある。これをカップリングに使えば、初段2SK30のゲート電位を決める抵抗がオリジナル通り2本の1MΩだと、入力インピーダンスが500kΩになるので、ブースターアンプの入力部で159/(0.024×500)=13.25Hzのローカットフィルタが構成される。これはちょっとfc が高い気がする。そこで頭に浮かんだのは、真空管DCプリのATRに使ったメタルグレーズフィルム抵抗6.8MΩの余りがまだあったこと。1MΩをこれに換えれば、入力インピーダンスは3.4MΩとなり、カップリングが0.024μFでもfcは1.95Hzにまで下がる。このくらいなら十分だろう。

 というわけで、EQ部以降の回路は最終的にこうなったのであった。


 初段のゲート抵抗値がかなり高くなるので、使われている2SK30がごく初期の老兵ゆえゲートリーク電流が心配になり(測定した訳ではないです(^^;)、ゲートリークが小さいに違いない最近の2SK30ATMに交換することにした。となれば、能動素子は原機のものを尊重するという方針はもう崩れてしまうわけで、それならば、と、2段目の2SA561のほうも試してみたかった2SA725に心置きなく換えてしまう。ついでに電源部の2SC734も2SD756に換えた。いかにも“ちょっとDC”的な選択であるが、これでTr類はすべて非磁性リードになって、その点でも気分がよろしい(もともとの石はどれもこれもリード線が磁石にくっつくのだった)。


 スチコンは立てて実装するしかないが、EQ回路に使った0.02μFの場合と異なり、周囲に支えになる構造物が何もない。基板に密着させてハンダ付けするのは熱に弱いスチコンの場合避けたいので、NEGLEX2497の内部構造に使われている樹脂材を適当に切って脚にしてみた。少し頼りないが、まあなんとかなっている。もうこれより大きいコンデンサーは入りそうにない。

 さて、悪かろうはずはないと予想していた音はというと、やはり期待どおり、もとのフィルムコンデンサーのときと較べるとずっと純度が上がった印象だ。この音ならもうカップリングコンデンサーを排除しようと躍起になる必要はない。もちろんあのハムも消え、ノイズレベルは元に戻った。

タマも交換

 たまたま東芝の12AU7の新品が安く売られているのを見かけたので、PODに使ってみようかと入手してみた。国産真空管の最盛期の製品だし、なにしろ「通測用Hi-S」である。信頼性は確かだろう。


 左の2本が松下製、右が東芝。東芝球は頭部の肩のカーブがややきつく、プレートが少し長い。外見から受ける印象は異なるが、どちらも造りは奇麗だ。


 実際に使ってみると、この東芝球はなかなかよかった。PODの発振/検波の動作自体も良好だったが、電源を入れてから動作が安定するまでに、あまり時間がかからない。そして更に時間が経っても、同調のドリフトが少ないのだ。このあたりは松下球よりも優れているようで、おかげで使い勝手がかなり向上した。
 音のほうは、当初は松下球と較べると僅かにさっぱりした感じだったが、決して悪くはないし、使っているうちにエージング効果でしっとりした落ち着きも出てきたようだ。

 その他、ダメ押しの音質対策として、入力のシールド線をそれまでのSONYのOFCケーブルからNEGLEX2800に換え、電源のフューズはキャップに電線を直にハンダ付けしてみた。

 だいたいこれで思いつくことはほとんどやり終えた感じだ。あとできるとすれば、電源トランスを特注してもっと強力な電源部を誂えるとかになるだろう。そうなると、オリジナルの形体から離れる大改造になってしまうので、もうひとつ気が進まない。現状でかなりの満足度に達してしまったので、当分はこのまま使って行くつもり。




交換針のことなど

 CP-Xの交換針が手に入らないことを嘆いていたが、運良く一度に2本入手することができた。中古ではあるものの状態もまずまずで、これでしばらくは安心してCP-Xでレコードを楽しむことができる(^^)。大事に使わねば…

 CP-Xの交換針は2種類が存在した。初期のものがR-1、CP-Xがtype2となってからのものがR-2と呼ばれている。違いは、R-2になってカンチレバーが「極細のピアノ線」、つまりいわゆるテンションワイヤーで支持されるようになったということだ。ということは、R-1は多くのMMカートリッジのように、カンチレバーが土台にダンパーを介してくっつけられているだけということか。しかし、カンチレバーはコールド側の電極なのでグランドへ繋がっているはずなのだが、R-1の場合は繋いでいるのが支持の役割を受け持たない単なる配線ということだろうか。(後記:古いカタログに、R-1は“板バネ”による支持だった旨の記述を見つけた。)

 下の写真の2本を見比べると、カンチレバー基部の真鍮色の土台の「生え際」の様子が異なることが判るだろう。右がより時代が新しいものである。左はカンチレバーをそのままダンパーが支えているようだが、右はカンチレバーの根元に“つば”があり、そのつばをダンパーが支えている。もちろんダンパーの中をテンションワイヤーが貫通しているはずだ。

 実は左が今まで使っていたもので、POD-XEを入手したときに一緒に私のもとにやってきた。最初に入手して既に引退させたものも、外見上はこのタイプだ。
 今度新しく手に入ったものは2本とも右のタイプなのだが、ここに写っていないもう1本はカンチレバー根元のつばの部分が樹脂製になっている。この写真のものはご覧の通りつばが金属色だ。最後の頃のR-2は間違いなくつばが金属だったので、樹脂製のもののほうが古いことになる。
 形状の違いからすると、右がR-2で左がR-1である可能性が高そうだが、POD-XEが出たときにはたぶんCP-XもR-2を装着したtype2になっていたと思うから、あるいはもしかしたら左もR-2で、R-2になってから途中で仕様変更があった、ということも考えられなくはない。このあたりのことをご存知の方がいらっしゃいましたら、是非情報をご提供ください。

 で、これらの針、聴いてみるとはたして音も少し違う。左の針のほうが、音が伸びやかで活気が感じられるのだ。右のタイプはやや大人しく抑制された感じになる。R-2ではR-1に較べて特性が改善され、高調波歪みやクロストークが小さくなったことが謳われているのだが、特性が少し劣るはずのR-1であるかもしれない左の針のほうが音がよいように感じられるのが面白い。もっともこれは、あくまで比較したらのことで、右の針も十分使える音だ。


 ところで、入手した2本の針と一緒にCP-X type2の取り扱い説明書(本来R-2にも同じものが付属する)と、CP-Xのカタログが付いてきた。おかげで興味深い情報を得ることができた。既に書いたR-2についての情報は、ほとんどこの説明書から得たことである。

 R-2はかつて最後の頃のものを新品で購入したことがあるのだが(残念過ぎて思い出したくもないのだが、実は不注意でカンチレバーがもげておシャカに…うぁぁぁ(;_;))、なぜかそれにはCP-X/R-1のほうの説明書が付いていた。その頃にはもうtype2/R-2用の説明書の在庫がなくなっていたのだろうか?
 今回初めてtype2/R-2用の説明書を見ることができたのだが、この中にCP-Xの周波数特性のグラフが載っていた。それを見ると、案の定なだらかに右肩上がりの特性になっている。PODのイコライザー特性を、あえて理論値から少しずらして中〜低域が若干上がるように設定した私の改造は、どうやら的外れではなかったようで安心した次第。

 CP-Xのカタログのほうでも新しい事実を知ることができた。読んでいて「あれっ?」と思ったのがPOD-Xのブースターアンプについての記述なのだが、「FET使用の3段アンプ」と書かれているのだ。
 私は、図書館で見つけたオーディオ技術に関する解説書に載っていたCP-Xについての回路図付きの記事をもとに、POD-Xのブースターアンプは2SK30の1段ソース接地アンプだとずっと思っていた。

 CP-Xがメディアに紹介されたのは、ラジオ技術誌'71年1月号の林尚武氏自身による記事が最初だと思うが、記事の文中には、発振検波器としてPOD+FET1石アンプの構成のものを新たに“POD-X”として発売する、といったようなことが書かれていた。そして記事に添えられたPOD-Xの写真は実際の製品とは少し違っていて、OSC,DETのコイルの基板上の配置が異なるようだった。記事の写真は明らかに試作段階のものだろうが、どうやら「FET1石」というのも試作段階だけのことだったようだ。
 私が読んだ解説書の記事というのは、おそらくこの試作段階のPOD-Xをもとに書かれたものだったのだろう。というわけで、上のほうで書いたことはお詫びして訂正しますm(__)m。

 もうひとつ、POD-Xの電源トランスが本体に内蔵されていたというのも、実際は違うかもしれない。POD-Xの取説の写真を見ると、XEで外付けトランスのDINコネクターがある位置にはフューズホルダーが付いており、明らかにトランスは内蔵になっていると思われるのだが、オークションで見かけたPOD-XはXEと同様にDINコネクターが付いていた。途中で仕様変更があったのでないとしたら、取説の写真の個体もまたプロトタイプということになりそうだ。