CDプレーヤーに超低ジッタークロックを組み込んでみる


 要約してしまうと「クロックを交換してみました。音がよくなりました。めでたしめでたし」というだけのことなのですが、これはアナログ派の私がCDに対する認識を変えざるを得なくなった、まさに「事件」と言っていい出来事なのでした。



ジッター、イジッター(を思いついた人はまずオヤジでしょうな)

 やれ高精度クリスタルだ、ルビジウムだ、といった具合にクロックを巡ってデジタルオーディオの周辺が騒がしくなり始めたのはいつ頃からだったか。クロックのジッターが音質に及ぼす影響が指摘されるようになって久しいと思うが、個人的には実際にどのように音に現れるのかを自分で体感する機会はなかったし、巷の議論にももうひとつあやふやな印象しか持てないでいた。

 ところが、(有)フィデリックスのサイトの「技術情報」のコーナーに載せられた記事を読んだら、すぐにすっきり腑に落ちてしまった。ジッターの正体について、こんなに納得のいく具体的な説明を聞いたのは初めてだ。コンデンサーカートリッジをとことん研究した中川さんならではの解説だろう。
 高周波変調型コンデンサーカートリッジの技術というのは、言ってみれば「スタイラスチップの振動をジッターに変換し、それをさらに音に変えるワザ」である。もっとも、この文脈なら普通「ジッター」という言い方はしない。マクロ的に観れば「周波数変調」だし、ミクロ的な視点では「位相変調」である。そしてジッターはその位相の世界におけるノイズにほかならない。


 というわけで、にわかに頭の中がすっかりジッター祭りモードになってしまった私は、試作された超低ジッタークロックを即発注。もちろん悩む必要もないほどの安さも大きな理由だったし、交換方法が解説されていたことも後押しした。

 自分で実際に機器に組み込んでみるのが遅れていたが、そのうち記事の続編がアップされた。この文のおかげで、音質にどのような影響があるのかという具体的なイメージがはっきりしてきた。なるほど、扇風機!むー、これも実にピンと来る話だ。
 音に影響するのは音楽信号と相関するジッターで、相関しないジッターはあまり影響しないだろう、と考える人もいるようだが、扇風機のたとえが適切であるとすると、たぶんそうではないと想像される。さあ、早いとこ試さねば。


 フィデリックスのクロック基板はサイズが小さいので、発注したときには、ここ数年常用しているCDウォークマンに組み込むつもりだった。

 私の場合メインのソースはアナログなので、CDはとりあえず気軽に聴ければいいや、という位置づけだ。経験から、ちょっとやそっと頑張っても、CDから心安らぐ音を引き出すのは無理っぽかった。うんと高価なプレーヤーを使えばそれなりによい音を聴くことができるのかもしれないが、そこまでして聴きたいほどの盤もない。費用対効果のバランス点がCDウォークマンだったということだ。
 それにCDウォークマンには据置き型にない便利な機能がある。途中で聴くのをやめても、ディスクを入れたままなら、次にはその続きから聴くことができるレジューム機能である。長い演奏を切り分けて聴きたい場合には実に重宝するのだ。

 そういうわけで近年は、あまり場所を取らないのをいいことに、CDウォークマン複数台を、ヘッドフォン用にしたりトランスポートとして楠DACに繋いだりして使ってきた。

 当初はそのCDウォークマンに組み込むつもりでいたクロック基板だが、実物を見たら、給電部に設けられたRCのフィルタの100uFのコンデンサーがけっこう厚みがあり、CDウォークマンの薄いボディに内蔵するのは困難であることが判明した。バッテリーのスペースになら納められなくはなさそうにも思えたが、ハウジングに加工が必要で、配線そのものの取り回しもけっこう長くなりそうだった。さて、どうするか。



CDPを新規購入

 結局CDウォークマンへの組み込みは断念して、おとなしく(?)中川さんに倣い、PioneerのCDプレーヤーPD-F25Aを新規に買って、こちらに組み込むことにした。他にこの16.9344MHzのクロックが適合する手頃なプレーヤーも思い浮かばないし、PD-F25Aのクロック改造版は既に中川さん周辺の方々の絶大な支持を得ているようだから、ハズレの心配がない。なんと、今どき日本製であることも安心材料だ。

 そして、何といってもPD-F25Aは安価である。定価25,200円。もちろんWebでならはるかに安くに手に入る。本家パイオニアのショッピングサイトでさえ2割引きで販売している。もう「定価」の主旨など気にしていられないらしい。



 妙な形をしているが、PD-F25Aは25枚のCDを装填して連続再生が可能な、いわゆる「CDチェンジャー」である。BGM的にCDを聞くには重宝するだろう。業務用というわけではないが、店舗用に使う向きもあるやに聞く。他社には相当モデルは存在しないようだ。
 発売は1997年の終わり頃だというから、既に登場から12年が経過していることになる。世紀をまたいだ超ロングセラーだが、前身のPD-F25はさらに2年近くさかのぼるらしい。‘A’が付いて顔が変わっているが、メイン基板には変更はないようだ。
 長らくモデルチェンジされない理由は、きっと「これで十分だから」だろう。おそらくは音質は二の次で、ただその「多過ぎず少な過ぎずの枚数のCDを扱えるチェンジャー機能」ゆえに、コンスタントにほどほどの数が売れ続け、細く長く生きながらえてきたに違いない。オーディオ評論の対象として取り上げられることもなかったはずだ。

 オーディオマニアの感覚からは、こんなものはまじめに音質を追求しようとする本格的オーディオでは使えるはずがない、と思うのが普通だろう。なにしろ安い上に、音質上は何のメリットもなさそうなCDチェンジャーの余計なメカまで抱えているのだから。


 ところが、音質上有利に働く要素を全く備えていない訳でもない、かもしれないのだ。

 とあるサイトで、「CDプレーヤーを立てたら音がよかった」という報告を見かけたことがある。音の良さの理由として、ピックアップの姿勢についての考察が述べられていた。「ピックアップの制御が、トラッキング、フォーカスともに水平方向に動作するため、サーボが重力の影響から解放されることになる。それが音質上有利に働くのではないか」という主旨である。あくまで推測でしかないが、かなり説得力がありそうな気が…

 というわけで、このPD-F25Aのドライブユニットが、まさしく「立っている」んである。


 内部は見てのとおりで、前面のトレーに25枚のディスクを受ける溝があるのが分かるだろう。

 CDドライブユニットが目的のディスクのところまで平行移動しては、ディスクをトレーから拾い出し、くわえ込んで再生する。チェンジャー機能による連続再生を必要としない場合は、3番目あたりのスロットを使って再生するようにするとディスクの出し入れがしやすい。
 ドライブメカの制御信号やディスクから読み出したデータはすべて、下部シャシー内のメイン基板との間を結ぶ幅広のフレキシブルケーブルで伝達されているようだ。
 まあ重厚長大高剛性の世界とは正反対ではあるが、アルファスッドにもフェラーリにはないよさがある、というわけで、そっちの方向でいい音を追求するのは、腰痛持ちの私としては嫌いじゃないです。

 改造前の音だが、メカが立っているせいかどうかはさておき、これがなかなか悪くない。ちょっと低音が強いというか、大げさに聞こえてバランスがいまひとつに思えることがあるのだが、全体としては音楽がけっこう生き生きと伸びやかに聞こえる。ゾクッとするような繊細さとかデリケートなニュアンスの描出を求めるとちょっと違うが、気軽に音楽を聴く上での音の好ましさということだったら、期待以上の素質を持っているように思う。肩肘張らずに聴くならほんとにこれで十分かも。



オペ開始

 このCDP、チェンジャーメカゆえのちょっと変わった構造のせいで、基板へのアクセスは容易ではない。実は、手順を読み解くまでにだいぶ時間がかかってしまった。カバーを開けては中を見回してひとしきり首をひねった後また閉じる、というのを3回ほど繰り返して、こんなことなら最初から中川さんにクロック基板じゃなくて改造済みのPD-F25Aを注文すればよかったかなぁ〜と、ちょっと後悔してみたり。

 というわけで、だいぶ考えさせられたけれど、やっとなんとか開腹に成功。

 あきましたおめでとう。
 フレキシブルケーブルは外せるのかもしれないが、もし元に戻せなかったら悲惨なことになるので、邪魔だけどこのまま養生しつつ作業するとしよう。


 これがメイン基板である。ようやく全体を見渡すことができた

 見たところずいぶんパーツが少ない。実は裏側に表面実装部品多数。ジャンパーがやたらと目につくが、多層基板でないのでこうなってしまうのだろう。


 えーと、問題のクロックは、と…あ、ここだね。いたよ、水晶振動子。

 水晶振動子の側にあるTO92の石は2SK246だった。何の役割をしているのだろう?


 さて、水晶振動子の裏側はこんな様子。

 1MΩと270Ωの抵抗に、振動子両端とグランド間に小容量のチップコンデンサー。ほとんど教科書どおり。意外に分かりやすい♪ これを見てようやく作業全体の見通しが立った気分。


 さて、まずは水晶とチップコンを取り外してしまう。
 鉛フリーハンダが使われている今どきの機器を改造するのは初めてだが、やはりハンダが溶けにくい。おまけに表面実装部品は小さくて扱いにくい。さらに、最近私の目は近くにピントが合いにくい、というか、合わない。

 というわけで、ヘッドルーペのお世話にもなりながらの作業は案外楽ではなく、AT-1に鉛入りハンダを使っての金田式の工作のようには手際よくはいかない。チップコンを外すとき、ランドもちょっぴり一緒に取れてしまったりと、100点満点といえる仕事はできなかった。が、どうにか大きな問題もなく除去作業を完了。
 あとはフィデリックスの技術情報のページに示された通りにクロック基板を配線するだけだ。クロックの電源は、近くの+5Vラインの電解コンの脚のランドから引くことにする。

 無事実装完了。右端に少し見えているのがSONYのCXD2529QというDAC、というか、デジタルフィルタやアナログローパスフィルタまでひっくるめて1パッケージに収めた“CD Digital Signal Processor”である。
(今回はこの状態で閉腹してしまったのだが、実はクロック基板にはシールド用の銅箔テープが付属していた。その後、エンポケムービーに低ジッタークロックを中川さんが解説している場面の動画がアップされ、それを観たら、やはり銅箔テープでクロックをシールドしているということだったので、後でまた開けたとき処置したいと思う。)


 フィデリックス仕様は電源の整流ダイオードもショットキーバリアダイオード(SBD)に交換することになっているので、それもやってしまおう。本当はクロックの効果、SBDの効果それぞれを別々に聴いて確認したいところなのだが、なにしろ開けたり閉じたりが面倒な機体なので、どうせ悪くなることもないだろうし、この際いっぺんにやっつける。

 SBDは、日本インター11EQS04が40本一袋で投げ売りだったのを買い置いてあったのが、ここでやっと少しばかり消化できる。そもそも中川さんに依頼すれば、より音のよい品種が取り付けられてくるのかもしれないのだけれど。


 よーし、できたぜぃ〜。(^^)



聴いてみる

 どうもデジタルというのは、工作していても音が出るプロセスを実感しにくいので、ちゃんと鳴るのかどうか不安になる。とりあえずそこらにあるディスクを入れてスイッチを押してみたら、どうやら読み込んで再生が始まったので一安心。早速常用システムに繋いで試聴しよう。はたして、改造後の音はどうだろうか。


 まずは、DCマイク使用の五島音源や、最近届いたBill Evans “The complete Village Vanguard recordings, 1961”などをかけてみた。

 まず感じたのは中高域の明瞭度が格段に向上したことだった。たぶん低域も同様に明瞭になっているのだろうが、しっかりピントが合って、曖昧さがなくなったようだ。そのためか、改造前に感じた低音の表現がオーバーになる傾向はすっかり影をひそめ、まったく普通のバランスで聞けるようになった。周波数特性が変わるはずもないので不思議なことだが、こういうところが測定器と人間の耳の異なる部分だろう。
 ただ、これらのソースはまだ入手して日が浅く、じっくり聴き込んでいる訳ではないためか、この時点では「良くなって感激!」というほどの印象はなかった。

 改造作業を完遂してやや泡立った気分の中でもあり、あまり正確な判定もできぬかと、夕食後、落ち着いてから再度試聴。何を聴こう、と選んだのはこれ。

 〜♪ 「!」

 目を見張った(耳を聴き張った?)。

 いやはや、やはり試聴は聴き慣れた音源で、精神的にもよいコンディションでやらんといかんですな。これはもうかつての音との違いが歴然、澄みきった空間に響き渡る深くも鮮烈なオルガンと、ひとりひとりの声が見えるかのようなコーラスに思わずのけぞってしまった。このCD、やっぱり音よかったんだ。
 実はPROPRIUSによるこの超有名録音、LP盤を買いそびれて、まあこっちでもいいかと買ったものだ。聴いてみたところ、世間での評判から期待したほどの印象はなく、やっぱりLPのほうを買わねばダメか、と思っていたのだった。が、なんのことはない、再生しきれてなかっただけだった。

 このCD以外でも、アコースティックな音が中心の素直な録音のCDでは、低ジッター化の効果が顕著に現れる。録音空間の暗騒音が伝わってくるし、録音に使われたテープのヒスノイズの質などもよく分かる。邪魔な音がはっきり聞こえることにメリットはないように思われるかもしれないが、そこまで聞こえるからこそ、音の消え際の微妙な表情も紛れてしまわないではっきり聞こえる訳だ。
 暗騒音まではっきり分かるほどの高音質な録音という訳でなくとも、人の声などとても味わい深い聞こえ方をする。これなら長時間聴いても、ことさら聴き疲れせずにすみそうだ。


 CDの音には、これまでどこか底意地の悪さを感じるのが常だった。20万円以上のCDPならそこそこの音が出る、という説も耳にしたが、そこまでお金をかけないといけないというのは、そもそも根本的なところに問題がありそうに思えた。
 20kHzより上の帯域が思い切り無慈悲に切り落とされていることが一つの要因であることは間違いなさそうだ。が、録音されている音のスペクトルが20kHz手前でダラ下がりになっているCDも多いようであるし、もっとレンジの狭いはずのFM放送やカセットテープから滑らかでスムーズな音が聞こえることからすると、上限20kHzというCDの周波数レンジのみを意地悪サウンドの原因とするのでは論理が破綻しているように見える。
 しかし今、ほぼ原因が判明したと思う。これまでアナログ派が好まなかったいわゆるCDの音というのは、つまるところジッターというアクで風味付けされた音だったのだろう



 フィデリックスの高周波型コンデンサーカートリッジは、作るのがものすごく難しかったそうで、完成したのは全部で5個だけだったという。結局一般に販売されることはなく、コンデンサーカートリッジ大好き人間としては、せっかくの研究の成果がそのまま埋もれてしまうことに、返す返すも残念に思っていた。それがまさか、デジタルオーディオに舞台を変えて世に出されることになるとは、まったく嬉しい限りだ。おそらく中川さんご自身も予想していなかったことだろう。
 ということで、一番安いほうのCDプレーヤーに少しの手間をかけて、思いもかけないハイレベルの音を再生できたのは、実に愉快痛快な経験だった。今回の改造で私のCDに対する認識は大きく変わってしまった。今や「CDは音がよい」だ。
 これまでは同じ音源でもレコードで手に入るならなるべくそっちを買っていたけれど、これならCDをもっと買っていい。いや、むしろ積極的に買うべきかも。




◇   ◇   ◇




さらにイジッター

 中川さんにこのページを見ていただいたところ、疑問点についての回答といくつかのアドバイスをいただくことができた。どうもありがとうございました。
 謎だった件の2SK246だが、「発振を止める働き」をしているそうだ。なるほど、よく見るとどうやら水晶振動子とともに発信器を構成するIC内のインバーターの入力側をGNDにショートするスイッチとして使われているものらしい。クロックはのべつ発振している訳ではなく、必要に応じて動作を停止させていた訳か。


 さて、それでは、懸案だったクロックのシールドを施すとともに、授けていただいた「教え」を実行に移すことにしよう。

 いただいたアドバイスなのだが、

 1)整流ダイオードをあと1個、60V耐圧のSBDに換えるとよい
 2)本体カバー内面に耐水サンドペーパー(カーボランダム)を貼るとよい
 3)袋ナットをシャシー底面に接着し3点支持するとよい

とのことである。


 1)については、実は電源トランスのすぐ傍に1個だけ、まだ交換していないダイオードが残っているのだ。半波整流で負電源を作るのに使われているのだが、たぶんFLディスプレイ用の電源を取っているものだと思う。
 ここは前回ちょうど良いサイズで耐圧の十分なSBDが手持ちになかったため、手を付けずにいた。F114BとかのFRDでお茶を濁そうかと考えないでもなかったが、どうせならSBDで統一したいので先送りしていたという訳。
 11EQS06あたりを調達しようと思っていたところ、中川さんがSBDを送ってくださるとのことだったので、ありがたくお言葉に甘えさせてもらった。


 2)はMJで柴崎さんも書いていたことだ。耐水サンドペーパーは一部では「サウンドペーパー」とも呼ばれているほど音質に効果がある、とかなんとか。実は私も自作の楠DACの中に貼っていたりする。

 これは単なるオマジナイという訳ではなく、一応の科学的根拠はあるようだ。
 サンドペーパーのサンドすなわち研磨剤として使われているザラザラのツブツブは、炭化ケイ素(シリコンカーバイド[SiC])という物質である。「カーボランダム」という呼び方も聞くが、これはホチキスやセロテープ同様、商品名が一般名詞化したもののようだ。炭化ケイ素は天然には見つからない化合物で、初めて造られたのは19世紀末。ダイヤに次ぐ硬度を持ち安価なため、主に研磨剤として利用される。サンドペーパーに使われているものは黒っぽいが、純度が高ければ透明になるという。
 この物質、ただ硬いだけではなく、ガリウム砒素[GaAs]と同様、最も古くからある化合物半導体でもあり、この結晶で鉱石ラジオを作ることもできるらしい。詳しい原理は知らないが、その電気的な性質により、シャシー内に貼ると電波を吸収する効能があるという。デジタル回路からの不要輻射を低減してくれるなら有難い。

 ということで、中川さんはSBDと一緒にサンドペーパーも送ってくださったのであった。
(SBD共々お代は支払ってますので念のため。)

 3) の接地面の小さな硬い足で3点支持するというスタイルは、今ではいろいろなメーカーの機器で普通に見られるようになったが、オリジナルは江川さんだろうか。さしあたりホームセンターで適当な袋ナットを買ってこよう。ちなみに、パワーアンプCERENATEの足も非磁性金属の袋ナットである。



再手術

 それでは、再び開腹。もう手順は分かっているから作業はスムーズにできる。が、やっぱり面倒くさい構造だ。

 まずはあと1個手を着けていなかったダイオードを交換する。セラミックコンデンサー群の間にあるこれね。

 別段特に書き置くこともないので、細部は省略。ということで、1)はこれにて完了。

 では、クロックのシールドに取りかかる。

 ただ単にペタリと銅箔テープを貼るだけというのもつまらないし、そもそもそのままではパーツの凸凹であまり奇麗には貼れそうにないので、ちょっと工夫してみた。

 まずクッション性のある厚手の両面テープで、大きく出っ張った100uFコンデンサーを除いた部品面を覆い…

さらにサンドペーパーの切れ端を載せてみたところ。

 だいぶ上面を平たくできたので、これならそこそこスムーズに銅箔で覆うことができ、同時に不要輻射も僅かに低減されるであろう、という訳。

 ではあるが、「浅知恵」という言葉が頭をよぎらなくもない(^^;。

 これで上面を銅箔テープで覆ってしまう。裏面のほうはベタアースなのでシールドは不要だ。最後に銅箔にリード線をハンダ付けし、近くのグランドに落として出来上がり。


 ハンダ付けを伴う作業については、予定された分はこれだけだったが、実はもうひとつ、中川さんの教えにはなかったが、ウズウズしつつもやったものかどうか迷っていたことがあったのだった。それがこれ。

 出力端子周りの風景。ミューティング用のミニ形状トランジスタ群に囲まれて2本立っている電解コンデンサー、ルビコンの22uF/50V。信号はこれを通って送り出される。出力のピンジャックも値段なりでショボいが、コンデンサーも負けずにショボく見える。
 聴いた感じ、これのせいで音がどうこうということでもない、というより、これでよくあれだけの音が出るものだと感心するが、他の電源系に使われているものとは品種が異なるので、これはこれで音質を吟味されて採用されたものなのかもしれない。のだが、やっぱりもう少し立派なものにしてみたい、という欲が…

 とはいえ、こういうものは下手に換えるとかえって音のバランスを崩すことにもなりかねないので、他の改造のついでにやるべきことではない。が、やっぱりやってみたい、開けたり閉じたりが面倒臭い、だからここでやっちまおう、と作業をしているうちに思い切った、という訳だ。

 だいぶ前のMJに、加銅氏がいろんなコンデンサーの歪みを測定した結果をレポートしていたことがあったが、スチコンやポリプロピレンフィルムコンと比べると、電解コンの歪みは桁違いに大きかった記憶がある。換えるならできればフィルムコンがいい。
 だが、この狭いスペースに実装可能なもの、というけっこう厳しい制限があるので、フィルムコンはあまり現実的ではない。

 というわけで、同じ電解コンでももう少しグレードアップできないか、という方向の改造となる訳だが、今回は、MUSE KZ 47uF/25Vを2個、無極性接続したものを試してみたい。
 で、その無極性接続だが、市販製品でこの方法を採用している場合、繋ぎ方としては−極どうしを繋ぐのが一般的であるようなのだが、ここでは+極のほうを繋ぐ。ラ技に寄稿している宮原氏が、そのほうが音がよいようだと言っているのだが、私自身も楠DACの出力コンデンサーで試したところ、そちらのほうが微妙によいように感じられた。気のせいかも、ですけど。

 ということで、基板の穴の間隔に合う幅で電解コンの−側リードどうしが接近するように、すぐ目の前にあったティッシュの空き箱に、手元に用意していた両面テープで固定して…

+側のリードどうしをなるべく大きな面積で接触するように沿わせておいてハンダ付け。

 無極性KZの出来上がり。

 実装は案の定いっぱいいっぱい、密集状態になってしまった。セパレーションの点ではあまり好ましくなさそうではあるが、ま、よしとする。

 ところで、なぜにKZかというと、経験からその音質に信頼を置いているので、という訳ではなくて、まあMUSEのシリーズでは最上級品種だから、という安直な理由しかないのだが、とりあえず手持ちに買い置きがあったので。
 実はMUSEでもESや、もう廃品種となったBlackGateNなどの無極性型も持っていたのだが、正直なところ、単純にこの繋ぎ方をしてみたかった、というのがいちばん大きい(爆)。ま、自作派としては「自分で作った感」を少しでも出したい、だけですかね(^^;。



 さて、以上でハンダごては片づけて、2)のサ(ウ)ンドペーパーに移るとしよう。

 中川さんの助言では、筺体カバー裏面に貼る、ということだったが、思いつきで基板を収納しているシャシー内の上下面にも貼ってはどうかと進言したところ、サンドペーパーが1枚増えた。

 しかし、改めて見てみると下側シャシーの底面は真っ平らではなく、一部放熱穴も空いている。しょうがないので、小さく切って無理なく貼れる部分にだけ貼ることにした。

 使われていないネジ穴や切り込みがいくつかある。旧型では意味があったのかもしれない。


 上側シャシーのほうも凹凸があるが、こちらはさほどややこしい形状でもないので、サンドペーパーを適切に折り曲げることで大面積を連続的に貼ることができる。

 ネジや構造部品の出っ張りをクリアするためにところどころ切り欠きを設けたが、目分量でテキトーにやっつけたのであまり美しい出来ではないなぁ、反省(--)。

 そして、カバー内側にも。フレキシブルケーブルがこすれそうなところは避けて貼る。
 まだサンドペーパーが余っていたので、リアパネル裏にも貼り、さらに残った切れ端をも有効活用すべく、シャシーの窪みの平坦な面にも整形して貼る。写真では見えないが、CD受けの下にも長方形の窪みがあるので、そこにも貼ってある。いささか悪ノリ気味。やり過ぎはよくない、かもしれない。


 内部の施行はこれにて終了。あとは 3)袋ナットの足だ。

 重たい電源トランスは、正面から見て左寄りの後ろ寄りにある。また、CDドライブユニットが後方左右いっぱい移動する。といったことから、重量バランス的には後ろ側2点、前側1点で支持するのが合理的ではあるが、シャシー下面の形状から困難であり、前2点、後ろはセンターからオフセットさせて1点、というのが現実的だ。まあこのほうが前面パネルの操作ボタンを押したときの安定性に関しては有利ではある。

 袋ナットはステンレスのM6サイズを買って来た。が、ステンレスという材質はあまり好きではないので、いずれの変更の余地を残して、ひとまず瞬間接着剤は使わずいつものアセテートテープで留めることにする。

 一応くっついた。が、やっぱりテープはみすぼらしいな。放熱孔からクロックの銅箔の色が少し見えている。床に置いてみると、まずまず安定しており、ナットの配置に関しては概ねよさそうだ。


要慣らし運転

 以上、今回の「おイタ」はここまで。

 一応聴いてみると、換えたばかりの出力コンデンサーのせいだろう、やはりちょっと細かい音の解像感と低音の深さがいまひとつ。電解は本調子を出すまでかなりエージングが必要なことが多いものだ。
 というわけで、即断はせず、しばらくスピーカーから音を出さないでCDをかけてエージング。無人でもチェンジャー機能を活用して、いろんな種類の音楽CDを連続再生させることができるのは、こんな場面で都合がよかった。

 のべ10数時間くらいエージングが進んだ頃からだいぶ音がこなれてきた。高いほうの音、たとえばシンバルの響きなどに、スムーズな伸びとともに質量感が加わったよう。低いほうの深々とした感じも戻って来た。結果は良好。ただ、同時比較ではないので確かではないが、オリジナルの見た目にはまったく凄そうではないルビコンの電解コンよりも圧倒的に優れている、というほどでもないかもしれない。
 おそらくもっと良い品種もあるだろう。宮原氏のようにセラファインを聴き比べて、特定の耐圧・容量のものに決定的に良いものがある、というような意見をもてるくらいになれればよいのだが、エージングに時間のかかる電解コンの音をそこまで研究する情熱は私にはない。電解コンをカップリング用途に使ったときの音質傾向について研究された人がおられましたらアドバイスを乞いたいところです。


 さて、今回の追加工で、さらに雑味が減っていっそうスムーズな音になった…気がする。もっとも、クロック自体の効果による最初の驚きと比べれば、僅かばかりのことだけれど。

 しかしまあ、改めて聴いてみても、目の前から「扇風機」が取り払われた効果には凄いものがある。我が家史上、最もローコストなプレーヤーから、最もよい音が出てしまったわけで。CD再生機の正しい在り方を追い求めるなら、優先的にお金をかけるべきところはどこかよく分かった。
 音質云々以前に、ジッターの多いクロックでの再生では、そもそも16bit/44.1kHzというCDの規格を十分に生かせていなかったのだろう。フィデリックスのサイトの「技術情報」のコーナーに、アナログとデジタル(CD)のダイナミックレンジの比較に関する解説記事があるが、実のところCDの、実際に人間の脳の認識にとって意味を持つDレンジは、アナログとの比較の上での上げ底分に加え、クロックのジッターによって特に微小レベル側がだいぶ狭められていたものと思わざるを得ない。



 そういえばだいぶ昔、レコードを聴いているときは脳波にα波が出るがCDでは出なかった、という研究結果があったようだ。このフィデリックス製クロックを積んだCDPだと、とてもアナログ的な音で気持ちよく音楽が聴けるのだが、もしかしたらα波が出ていたりして。どこかで測定してもらうことはできないものだろうか。このページを見ている脳科学者の人がおられましたら…、いないか。




◇   ◇   ◇




イジッターreturns

 フィデリックスの超低ジッタークロックは、その後正式な製品版として“PureRhythm”が発売された。試作品からの変更点は、3.3V電源への対応と、発振周波数の対応範囲拡大。上級モデルPureRhythm1のほうにはローノイズ安定化電源回路も組み込んだという。

 私は「例のごとく」安いほうのPureRhythm2を購入し、これまでのクロックをこれに差し替えた。とりあえず、暫定的仮付け状態で、まだ銅箔のシールドも施していない。いずれ更なる工夫も加えて、ちゃんと施工し直す予定である。



 そして、私のCDに対する認識を大きく変えてくれた初代超低ジッタークロック基板のほうは、別の新品PD-F25Aに組み込んで、殊更オーディオに凝ってはいないけれど耳の確かな音楽好きの親友Kさんに使ってもらうことになった。

 そういうわけで、ここからはKさん用PD-F25Aの改造記である。


 新しいPureRhythmと比べると、今となっては見た目に若干野暮ったい印象を受けそうな初代クロックだが、土台の基板本体はセリニティー電源の余白で作ったこということで、サイズからすれば分厚く質量・剛性があり、その点では最初からサイズなりの薄さに造られたPureRhythmよりもよさそうに思えたりもする。初代クロックは発表されているオシロスコープの写真に見る波形もマイルド傾向だし、案外初代のほうが音はよかったりして。なんてことも少し思ったが、やっぱり譲るのはお金がかかってないほう、か。初代のコストパフォーマンスは史上最強だろう。


クロック専用電源

 さて、PD-F25Aに本体より高価なPureRhythm1を使うのはどうにも引っかかるので、2のほうを買ったわけだが、やはりクロックの電源の質を高めることの効果には興味が湧くのは抑えられない。この際自分でクロック専用電源を作ってしまおう。というのが、先に述べた「更なる工夫」の中身だ。せっかくだからKさん用のにも組み込むことにする。

 クロック専用電源という意味ではなかったが、実は当初、金田式+5V電源を作って3端子レギュレーターを置き換えてしまうことを考えていたのだ。しかしよくよく考えてみると、金田式電源はあまり都合がよろしくないことに気がついた。
 PD-F25Aは電源トランスが常時通電状態になっている。電源スイッチによりAC電源ラインがカットされるわけではなく、OFF状態はいわゆるスタンバイモードであり、コンセントにACプラグが挿してあればレギュレーターも稼働しっぱなしなのだ。金田式レギュレーターだと、誤差アンプに常時7,8mAの電流が流れているはずで、さらに基準電圧を作っている部分の電流も加わる。普通の3端子レギュレーターの倍以上になりそうだ。すなわち、私としては無視しがたい待機電力の増大をもたらすわけで、音がよくなったとしても、こういうことをするのにはちょっと抵抗を感じてしまう。
 となると、メインの3端子レギュレーターはそのままにしておいて(いずれフィデリックスから出るはずのローノイズ3端子レギュレーターに交換するという楽しみも残せるし♪)、クロック専用に電源を設けるほうがよさそうだ。扱う電流も小さくて済むから、作るのもそう難しくないだろう。シンプルな回路で無駄に電力を浪費せず、ローノイズな電源。実は心当たりがある。

 フィデリックスの「技術情報」のコーナーに、超高音質マイクアンプMA-8が紹介されている。かつて花王がDATのテープを発売していたことがあったが、その頃DATの高音質音楽ソフトも出していた。その録音に使われたのがこのMA-8で、録音の様子はMJの記事でも紹介されており、アンプともども中川さんの写真が掲載されていたのを憶えている。
 このアンプの回路図左上部分がファンタム電源部なのだが、当然ながら、ローノイズと低出力インピーダンスに十分配慮された回路のはずである。これを下敷きにクロック用電源回路を構成してみたのが下の回路だ。PureRhythm1のレギュレーター部がどのような回路かは知らないのだが、たぶんこういう路線なのじゃないかな、と想像してもいる。

 原理は、基準電圧をそのままゲイン1のアンプで出力する、という単純なものである。
 まず、J1,2は定電流回路で、出力が+5Vとなるときの電流値は約0.3mA強だ。この値は概ねJ1の2SK30ATM_GRのQポイント(温度係数が0になるところ)である。この電流が5kVR+10kΩの抵抗に流れて発生する電圧が基準電圧となる。0.47uFはノイズ低減が目的の積層フィルムコン。実際に使ったのはメーカー不詳でおそらくポリエステルと思われる小さなものだ。
 カスコードのJ2はJ1と同じK30GRでよいのだが、G-S間電圧をなるべく深めに取れるほうがJ1にかかる電圧が高くなってよさそうな気がして、似たような特性でよりIdssの大きい2SK246BLにした。

 続くJ3,4およびQ2で構成される部分が「ゲイン1のアンプ」ということになるのだが、早い話がNchJFETとPNPトランジスターのインバーテッドダーリントン接続によるソースフォロワーである。J4はJ3の動作点を適切に設定する。これがないとJ3に流れるのはQ2のベース電流のぶんだけになるので、それでは電流が少なすぎる。というわけで、目的に応じてK117のランクを使い分けている。Q2には「ちょっとDC」的な趣味を出してA725なんて持ち出してみたり。

 MA-8のファンタム電源部では、JFETの後にMOSFETがさらに2段続いていて、かなり出力インピーダンスが低くなっていそうだ。このTr1段だけの回路だと、シミュレーションしてみたところ、出力インピーダンスは230mΩくらいと出た。さほど低い訳でもないが、クロックの消費電流は7mA一定ということであるし、そもそもクロックの給電部にRCフィルタが入っているわけだから、これで十分だろう。というより、実はもう1段増やした回路をシミュレーションしてもみたのだが、出力に超高周波の発振が乗ってしまう。実物を作ったとしても、私ごときのウデでは御しきれない可能性があると判断して、そそくさと撤退したというのがホントのところ。

 2.2MΩは、無負荷状態では出力電圧がほぼ入力電圧近くに張り付いてしまうので、それを防ぐために入れたブリーダー抵抗である。なくても問題ないかもしれないが、一応入れておくことにした。これで負荷を外したときの出力電圧は5.3Vあたりに抑えられる。
 このレギュレーターのみで待機時に流れる電流は、基準電圧生成部のQポイント電流とこのブリーダー抵抗に流れる電流だけだから、十分少なく抑えられていると言ってよいだろう。

 給電部側に入れられたQ1はリップルフィルターである。ここはなくても定電圧電源回路として問題はないと思うが、簡単な回路であるし、どうせなら念には念を入れよう、ということで追加することにしたものだ。あえて貴重な2SC1400を投入。しみったれの私向きの兄弟石2SC1399にしないのは、もちろんあくまでローノイズが主眼だから。

 入力側の+VccとGNDは、CDPの正電源の大元の電解コンデンサーの足に繋ぐ。このGNDラインは、リップルフィルターで濾し取られるリップル分だけを直接電源基部に戻してしまい、できる限り基板上のGNDラインを汚さないように配慮したものである(考えすぎ?)。出力側のDGNDはクロック注入部近くのデジタル部GNDに落とす。


 既に「近況」でもちらりとお見せしているが、これが出来上がったクロック専用電源である。

 サイズは19×33mm。1/10インチピッチの基板で、7穴×13穴のスペースに全部のパーツが乗った。裏面はもちろんいつもの金田式7本撚り線での配線である。面実装パーツばかりで構成されたフィデリックスのクロック基板を見慣れてしまった今となっては、いにしえの蒸気機関車の趣さえ感じてしまう外観ではあるなあ(^^;。

 2個の47uFと出力の10uFは部品箱に眠っていたOS-CONである。昔DACを作ったときの残りだ。抵抗は進のRE35とRE15。
 手前のベージュ色の抵抗はブリーダー2.2MΩだが、見た目からは安物のカーボン抵抗と思われそう。ちゃんとノイズに配慮してヴィシェイ・ドラロリックの金皮です。

 006P電池で給電し、仮の負荷に620Ωを繋いでVRを調整して、出力をきちんと5.00Vにできた。そのままヘアードライヤーの温風をあててみたところ、4.97Vまで下がった。どうやら基準電圧発生用の電流がQポイントからはほんの少しずれていそうだが、0.6%の変動、この程度なら実用上はまったく問題なしだろう。


実装する

  某所にて定価の半額で調達できた真新しいPD-F25Aに、初代クロックともどもインストール。クロック基板だけのときは、配線の容易さからメイン基板の裏側に実装したのだったが、今回の電源はけっこうかさばるので、基板裏に収めるのは高さがちょっと苦しい。よって、空間に余裕のある表側に据え付けることにした。

 クロック、電源基板ともに、ゴムベースの厚手の両面テープで空いたスペースに張り付ける。
 クロック信号の注入部の配線には、本来の水晶振動子用の穴をそのまま利用できる。DGNDラインは、クロック近傍のジャンパー線のハンダをいったん取り除き、穴にリード線を一緒に突っ込んで引き出すことができた。配線には主に素線が細いライカル線を使っているので、素線を束ねた断面の変形自由度が大きいのが幸いしている。+Vccラインとリップル分帰還用GNDラインは電源トランス脇から裏側へと回り込んで配線。

 電源とクロック基板の接続には、電源の基板を切り出したときに出た端材を中継基板として利用した。サポート用のネジ穴が開いているのがなんとなく虚しかったので、そこをクロック信号の配線がくぐるように設置してみたのだけれど、機能的な意味はまったくないですね(^^;。

 このほか、整流ダイオードももちろんお約束のSBDに交換済み。ブリッジの正側に前回と同じ日本インター11EQS04、電流の少ない負側のほうは気まぐれで品種を違えて0.6A品の富士電機ERA82-004を使ってみた。1本だけの半波整流負電源用には11EQS06。あと、シャシー内サ(ウ)ンドペーパーも施工している。2度目なので、耐水ペーパーの切り方も少しばかり要領が良くなった。


聴いてみる

 改造前に、オリジナルのPD-F25Aの音はどんなだったか確認しておこうと聴いてみたが、初めて聴いたとき「なかなか悪くないんじゃ?」と思ったあの感覚はどこへやら、低ジッタークロック換装版と比べてあまりの落差にズッコケた。なんともざらついて見通しの利かない冴えない音なのだ。もうすっかり耳が改造されてしまったみたい。

 では、クロック専用電源の効果はどうだろう。はたして聴いて分かるほどのものかどうか、とも思わないではなかったが、ワハハ、一聴しただけで明らかじゃん! 大成功。音の背景がいっそうクリアになり、楽音のデリケートなニュアンスの生まれる瞬間が、消え入り際が、はっきりしっかりとことん伝わってくるではないか。こりゃ自分用のも早いとこクロック専用電源を乗っけてやらにゃあ。

 ただ、まだ新品状態だからかもしれないが、何か音の表情がやや単調に聞こえる。音に、明確にそれと意識されない程度の微妙な癖のようなものが付きまとっているように感じられる気もする。解像感の向上具合からしてクロックが原因とは考えにくいから、おそらくこれは出力のコンデンサーのせいだろう。オリジナルのままでも十分と考えてそのままだったのだが、ここは少し考慮の余地がありそうだ。MUSE KZを無極性接続にしたものに換えてそこそこの時間鳴らしこんだ私のCDPを聴いた後だと、解像度はともかく、音色表現の豊かさに関してはいまひとつ平板な印象が拭えない。


やっぱり換えよう

 Kさんには初め「出力コンデンサーはそのままでいいですね」と言っていたのだが、一度聴いて違いを感じてしまったら、やっぱりこのまま引き渡すのもすっきりしないので、改めて交換を提案した。
 今回はMUSEでも、KZでなく、もともとバイポーラであるESを使ってみることにした。いったんはオリジナルと同容量の22uFもしくは47uFのものを新規に調達しようかと思ったのだが、既に手持ちにあった35V/10uFをパラにしようと思いなおした。実はちょっと思いついたことがあったので。

 今は無きブラックゲートにもバイポーラ型のNやNXというタイプがあったが、ジェルマックスではこれらの無極性電解コンデンサーをより効果的に使用する方法として、「超電解接続」という接続法を紹介していた。
 ラジアル型、いわゆる「立型」の電解コンデンサーは、2本の電極リードのうち+側が長くなっている。電気的には無極性ということになっているバイポーラ型の電解コンデンサーもまた、通常の電解コンデンサー同様、一方のリード線が長い。これはおそらく、どちらの向きに直流電位を与えても機能的には問題がないが、構造的には完全に対称になっている訳ではないということだろう。ジェルマックスの「超電解接続」は(言葉どおりに受け取ろうとすると意味不明の観があるが)、つまりは2個のブラックゲートN(X)を、リード線の長いほうと短いほうを互い違いに組み合わせて並列にする接続法である。これにより全体で電気的にも構造的にも対称になるということだろう。

 ブラックゲートはもうなくなってしまったが、あの超電解接続を(それほど積極的でもなく、ではあったが)いっぺんやってみたいなあと思っていたことを思い出した。それなら今回、MUSE ESの10uF2個でやってみようじゃないか、という訳だ。もっとも、他のコンデンサーでやっても「超電解」は名乗れない。

 リードを切ってしまうとどっちがどっちだったか分からなくなってしまうので、あらかじめリードが長いほうにマーキング。これで、リードを切っても間違うことがない。2個並べて基板の穴に突っ込むのは苦しいので、1個は基板裏に配線する。 

 ついでに、電源の整流ブリッジ負側に使われていたSMG16V/330uFを、部品箱にあったMUSE FXの16V/470uFに交換した。これだけですごくよくなるというまでの期待はないが、少し気分はよい。

 さて、音はどうか。…あれ、妙におとなしい音。が、よく聴くと荒さのない品の良い音だ。新品ケミコンを通電開始直後に軽々に判断するのはまずいので、しばらく鳴らし込むことに。
 1時間もしたら、はたして生き生きした表情が少し感じられるようになってきた。しかも、以前のような癖っぽさは感じない。これならよさそうだ。本格的なエージングはKさんのところでしてもらうことになるが、ひととおり聴いてみてなかなかいい感じである。はたして「なんちゃって超電解接続」の威力が発揮されているのかどうかは謎だけれど。


仕上げ

 さて、この時点では本体カバー裏にサンドペーパーを貼るのがまだだった。最後の仕上げにカバー裏にも貼るとしよう。

 無理なく貼れるところはほぼ全て貼ってしまい、これで私のとほぼ同仕様だ。ところが今回は、音がくっきりはしたのだけれど、妙にどぎつくなって、あの深々とした空気感が失せてしまった。出力コンデンサーのエージングが進むには急すぎだし、そもそも傾向が変わり過ぎである。サンドペーパーのせいとしか考えられない。
 クロック専用電源のせいで変化が明瞭に現れるようになった、とか、サンドペーパーのメーカーや番手で音が違う(今度のは前のとは異なるメーカーで番手が少し粗い)とか、そういえば両面テープがなくなって新しく買って来たやつが良くなかった、とか、理由はいろいろ考えられそうだが、
ともあれこの音ではいかん、気持ちよくない。

 というわけで、カバーの天井に貼ったやつと側面の片側を剥がしてみた。カバー内に貼ったサンドペーパーの面積は、およそ半分ほどに減った。
 この状態で聴いてみると、潤いや深みが戻ってホッとする音で、しかも程よいキレもある。微妙なニュアンスの表現もみごと。ということで、どうやら納得できる音になった、メデタシメデタシ。これで納品としよう。
 Kさん、やっとできました、楽しんでいただければ幸いです。




 PD-F25A改をKさんに送ってほどなく、Kさんから感想のメールが届いた。もちろん音のよさへの驚きと喜びの声。そして1日置いて、もう一度駄目押しの感嘆メール。思っていた以上に気に入ってもらえたようだった。
 Kさんのメールをそのまま掲載したいところだが、「気持ちが高ぶったまま書いたので恥ずかしいから適当に書き直して」とのことなので、高ぶってたほうがそれらしいのだけれどなあ…と思いつつも編集して載せることにする。が、やはり私の文章になってしまってはあまり意味がないので、まあ要所要所の抜粋ということでご容赦ください。

 最初は「うん?」。やがてファンファーレが鳴り、コーラスが始まると、動けなくなってしまった。ひとつひとつの音が左から右まで、手前から奥まで、びっしりと、しかし重ならずに音場を埋め尽くしている。こんな経験は音の良いホールで実演を聴いたときならあったけど、自宅のステレオでは初めて。
 これは「カンターテ・ドミノ」を聴いての感想。Kさんは特に高音質ソースに興味がないのでこの盤は知らなかったそうだが、このページを見て買ってみたという。

 「鼻歌」がおそろしく生々しい。幽霊みたいと思っていたのに、こりゃ生身の人間だ。
 とは、グールドの「ゴルトベルク変奏曲」(後のデジタル録音のほう)を聴いて。そうなんですよ、あの鼻歌、解像度の低いシステムだと、ノイズのようなユーレイのような怪しい聞こえ方をする。

 コルボのフォーレ/レクイエム。椅子のきしむ音、足音、譜面をめくる音らしいものがこんなに入っているとは!
 
この演奏は私も国内廉価盤LPで持っているが、そんな音には気づかなかった。あらためて聴いてみたけれど、いまひとつモヤがかかっている感じで、よく分からない。やっぱり仏ERATOオリジナル盤じゃなきゃダメか。

 といった調子で、聴いてみたいろいろなCDについての感想が書かれていた。まとめの意味で、最後に次の文を挙げておこう。

 何を聴いてもスッと抜けが良くて、ひとつひとつの音が濁らずくっきり聴こえるのは驚くばかりです。だから小さな音が大きな音に埋もれない。小さな音はひそやかに。深々した低音。「産毛」の見える高音。
 CDの音の悪さは高域がカットされているからではなく、これまでちゃんと再生できていなかっただけ、という言葉に まったく同感です。

 というわけで、Kさんにも超低ジッタークロックの威力を実感していただけたようだ。オーディオ遊びで誰かに喜ばれることなど滅多にないので、私としても非常に嬉しい。 ま、これも中川クロックあったればこそですな(^^)。



 さて、遅ればせながら私のPD-F25Aにもクロック専用電源を載せることにした。回路は基本的に前のと同じで基板の形も同じだが、パーツが少し異なり、基板上の配置も僅かに変更している。OSコンの容量がちょっと大きくなり、基準電圧生成用の抵抗は10kΩのネオポットと直列に6.2kΩのRE55。そして、Q1,2には金田石をやめて別府石2SC1844/2SA991を起用してみた。これらもローノイズ用途を謳っている品種だから適性はあるだろう。ま、同じことをくり返すのはつまらなく感じてしまう性格、という訳です。

 

 出力電圧は4.80Vに調整した。PureRhythm2は低い電圧でも動作するし、波形も初代超低ジッタークロックより元気がよろしい(?)ようなので、たぶんこれで受け取る側のスレッショルドレベルに対して必要十分だろう、というつもりなのだが、はたして良いことかどうかは正直よく分からない。ま、升目いっぱいに字を書かないで少し余白を残す性格、という訳です。
 今回はドライヤーで加熱してもデジタルテスターの示す出力電圧値は4.80Vからピタリ動かない。基準電圧用の抵抗値10k+6.2k=16.2kΩにはちょうど4.6Vが発生しており、2SK30ATM_GRの電流は0.284mAということになるが、このあたりが正確なQポイントにかなり近いものと思われる。ちなみにこの2SK30ATM_GRのIdssは約4.8mAだった。

 メイン基板への実装方法も、中継用の切れ端基板の形が少し違うだけで前回と同様、クロックともども表側に装着した。
 PureRhythm2の取り付けは、Kapellさんのスタイルを参考にさせてもらって、熱収縮チューブの輪っかを基板に貼り付けてホールドさせている。先に仮付けしていたときの方法そのままなのだが、PureRhythm2は基板が薄いので、裏面に最初から貼られている強力そうな両面テープで直接貼り付けたのでは、後で移設したくなったとき引き剥がすのがおっかないからだ。
 専用定電圧電源の効果のみを確認したかったので、
まだクロック基板のシールドは施していない。


 で、音はといいますと、聴けば改めてワハハです、やっぱりこれはウルトラ級のクリアーさ!
 もともと超低ジッタークロック自体による音質向上度が非常に大きいので、それとの比で見れば僅かなことではあるのだが、専用の安定化電源でクロックを動作させると空間がいっそう透明になり、微小レベルの表現力が倍増する。ピアノのアクションの動きが見えるよう。「見えすぎちゃって困るの〜」という昔のコマーシャルがつい思い浮かんでしまうのであった。

 それにしても、このコストでこんな音が出てしまっていいのだろうか。これがあたりまえになってしまうことがはたして将来的にオーディオの「趣味性」にとってよいのかどうか…と、実のところ複雑な気持ちになってきてもいる。こんなページを作っておいて矛盾しているようだが、この技術、あまり広まらないほうが吉なのかも?




◇   ◇   ◇




イジッター最終章(?)

 フィデリックスの例のレギュレーターが販売開始となった。となれば、言わずもがな、予定どおり行動開始(^^)。

 LZN7805という品番が一応あるようだけれど、あまり周知はされていなさそうだ。Lは低、Zはインピーダンス、Nはノイズの意味でしょう。FIDELIXのサイトの写真に見られるものとは若干パーツの配置など変更されているようだ。

 ずっと前に鈴蘭堂で買った放熱器に取り付け、基板には両面テーブで貼付けて装着した。発熱は少なく特に放熱の必要もなさそうだったが、足が細いので固定がしっかりできるのは安心感がある。



オペアンプも交換

 PD-F25Aの信号の送り出しにはSOPパッケージのオペアンプが使われている。オーディオ用としてはごくポピュラーな4558なのだが、中川さんによれば、これをFET入力のものに交換するのが吉、と。レギュレーターの交換で改造は完了、と思っていたのだったが、これもやってみるしかなかろう。

 ということは、ひとまず付いていたオペアンプを取り除かねばならない。
 ところで、悲しいかな、最近いよいよ近くが見えにくくなっているので、やたらと小さい面実装部品を扱うのは非常に難儀である。8ピンのオペアンプにしても5mm角ほどの大きさ、というより小ささだ。そんなわけで、外すにしても付けるにしても作業にはこれが必須となる。

 某所で調達したヘッドルーペ。千円ちょっとの安物だが、十分実用になる。ヘッドバンドの額に当たる部分に巻いた野暮ったいティッシュは汗対策である。
 厚みの異なるレンズが4枚付属するが、倍率の大きい厚いほうの2枚は視界の歪みが気になってもうひとつ使う気にならない。それに、対象に顔をかなり近づけないとピントが合わないので、そもそも作業用にはあまり使いやすくない。
 そこで、庇部のレンズ取り付け部が2重になっているので、顔に近い側に1番薄いレンズを、そして対物側には2番目に薄いレンズを凸面を内側に向けて装着してみた。手持ちの写真用ルーペの構造を真似てみたのだが、これがなかなかうまくいって、倍率と見え味を両立させることができた。


 これで装備は必要十分だが、実際に面実装部品を外すという作業は下手にやるとランドを傷めそうでなかなかコワいものがある。前にチップコンを外したときに、少々無理矢理な感じになってごく少しだったがランドを剥がしてしまった経験から、ハンダを取り除くという発想ではダメだということが分かった。
 となれば、ハンダが溶けているうちに部品をランドからずらしてやるのがよさそうだ。であれば、ハンダが溶けた状態がある程度の時間保たれねばならないわけだから、逆にハンダを多く盛ってやって、なるべく冷め難くした状態でハンダを溶かせばよいことになる。融点の低い鉛入りハンダをタポタポとつけて、溶けたハンダで片側4本ずつのICの足を絡めて浮かせてしまおうという訳。

 基板を立てた状態でこれをやってみると、はたしてオペアンプは自重でホロリとランドからずれて外れた。ランドを傷めることも一切なく、あっけなく終了。

 オペアンプが去ったあとはこんな具合。ランドのハンダの残りは吸い取り線で取り除き、周辺に広がった吸い取り線のフラックスもエタノールで拭き取った。



 さて、差し替えるオペアンプに何を使うかだが、真空管で自作を始め、それからトランジスタに移って行った身としては、そもそもオペアンプというのは馴染みがない(ターンテーブル制御アンプでは使っているけれど)。よって、どのオペアンプがどんな音がしそうだというような経験的なものが全然ないのだが、参考にしようとWeb上の音の評価を調べてみても、書いてあることがかなりまちまちで、ほとんど参考にならない。
 ということで、これもまた中川さん好みの品種から、あまり巷の話題に上らないNECのオペアンプを送っていただいた。

 のであるが、ひとまず試したこちらはJRCのNJM082。これも悪くないので聴いてみて、ということでオマケしてもらったものだ。ポピュラーで安価なFET入力オペアンプだが、なるほど、なかなか素直で癖のない音を聴かせてくれる。深みや陰影といった面でちょっと浅い印象があるが、すっきりして嫌みのない音はオペアンプ界のAT-F3、といったところですかね。

 ならば、こっちはどうか。

 ということで、本命のμPC814であるが、やっぱり音は変わるものですね。
 透き通った音、ということなら082のほうが上のような印象がある。μPC814のほうは、癖と言ってしまってはナンだが、どことなく個性的な音の出方を感じさせるようなところがあるように思う。私の印象では、きれいだけれど、とことん透明というのとは違うような高音、柔らかいけれど、ときに締まっているとも取れる不思議な低音、といった案配。なのだけれど、音楽に面白みを感じさせてくれるのはこっちのほうだ。情報量という言い方があてはまるかどうかよく分からないが、音楽のニュアンスは082よりよく伝えているように感じられるのだ。
 こうなると、世評の高い様々なオペアンプの音を確かめてみたい気持ちにもなってくる。が、ひとまずμPC814の音は気に入ったので、当面はこれで聴いてみるとしよう。短時間にあれこれ取り替えても何がなんだか分からなくなってしまいそうだ。デュアルのSOPパッケージ品となると簡単に入手できるものは多くはないし、そう慌てる必要もあるまい。(DIP8だったらアレが使えたのに、ねぇ…)


 さて、レギュレーター交換の効果についてまだ書いていなかった。クロック以外の全ての5V系はこれまで「普通の」3端子レギュレーターから給電されていたわけだが、フィデリックスLZN7805の威力は明らかだった。まあどうせよくなるだろうとは思っていたのだが、実際そのとおりで、空間はいよいよ澄み渡り、よりデリケートな表情が聞き取れるようになってきた。オペアンプの交換と相俟って、PD-F25Aの音はまた一段とレベルアップしている。レコードはもう要らない、ということにはならないけれど、アナログを超えている部分があることは認めざるを得ないなあ。




その後

 思うところあって、再度、出力コンデンサーを交換した。今度はFine Gold(以下“FG”)。やはりMUSEシリーズの、これは上から2番目のグレードになる。

 「思うところ」というのは、中川さんがFIDELIXの新しいDAC“CAPRICE”に採用したのがどうやらMUSE FGであるらしいのと、今ひとつは、最近またアンプ作りを再開した別府さんが「よいケミコンがない」と言いつつ使っているのがやはりそのFGであったこと。私は、この人たちはとても耳が良い(もしくは私の音の嗜好がこの人たちと近そう)と思っているので、この人たちが使うとなれば、これはやはりどうしても試してみたくなってくる。
 もともとMUSE KZの音については、「ハデ系」との巷の評判が気になってもいて、確かに自分で聴いてもそんな印象だったので、もっとしっとりした表現を追求してみたいという気持ちがあった。

 ということで、前と同じように無極性接続としたFGを基板に載っけた。


 今度は容量はちょっと大きめにしてシリーズ合成で50uFだ。発注したショップの在庫の関係で耐圧も50Vと高くなった。結果、サイズが大きくなったうえ、FGのリード線はKZより細く、自立させるのは振動面を考えるとあまり得策と思えなかったので、寝かせてスポンジ両面テープで基板に固定した。

 ところで、少し小さいFGが2本立っているのが見える。これはオペアンプのパスコンとして取り付けたもので、オリジナルには無かったものだ。
 1つ前の写真で、オペアンプの傍にC411,C412というチップコンが見えるが、これが本来のパスコンである。ハンダ部分が不相応に大きく広がっているが、実は基板表側に通常のリード型のケミコンを実装するための穴が開いたパターンになっているのだ。マイナーチェンジ前のモデルではリード型のケミコンが実装されていたのかもしれないが、製造上の合理化なのだろう、パターン面に面実装型のコンデンサーを付けて済ませるように改変されたものと思われる。
 せっかく開いている穴なので、ここもいっちょう有効利用してみっか、と、10uFを取り付けてみたのだ。

 さて、その音だが、はたしてけっこうな違いが現れた。高音域のスムーズさが特に印象的だ。きれいに伸びて聞こえるようになり、シンバルにスティックが当たるときのニュアンスなどがよく分かる。KZではここまでの表情は描ききれていなかった。
 一方、低域のほうは容量を増やしたにもかかわらず、やや力感が減じた印象。こちらのほうが素直なのかもしれないが、KZを聴き慣れた耳には若干の物足りなさを感じてしまう。
 しかし、トータルではより好ましいほうに変化しているので、この方向でもう少し検討してみよう。


 表現力の向上には、増設したパスコンがかなり貢献しているような気がするので、出力コンデンサーはFGに決めて、パスコンに他のものを試してみることにした。

 とりあえずは手持ちにあるもの、ということで、MUSE ESはどうだろうか。
 ESはバイポーラー型で本来は電源に使うものではないし、そもそもメーカーはそういう使い方を推奨していない、というより禁じている。が、海神無線のサイトの情報では、表示されている耐圧はピークtoピークでの値なので、DCはその半分の電圧までかけられるとのこと。ということは、どうやらこのあたりは同じくバイポーラー型のBlackGateN/NXの耐圧表示とは違うようだ。あちらは表示耐圧までDCをかけても大丈夫だったはず。このような表示方法についての規格のようなものは定められていないのかな?
(ところで、金田式パワーアンプのパスコンに、BG-NXの代替でMUSE ESを使用しているのを見かけることがあるけれど、他人事ながら耐圧は大丈夫かな…)

 ま、ともあれ手持ちのES10uFは35V品なので、ここには十分使用可能である。というわけで、ひとまず交換。

 聴いてみると、交換してすぐはそこそこ悪くない印象であったものの、日が経つにつれて高音に何となく詰まった感じが出てきた。普通はエージングでよりよくなってくるものだが、どうも逆に進んでいる感じ…やはりメーカーも推奨していないことはしないほうがよい、か。


 ということで、ESのパスコン使用には早々に見切りをつけることに。となれば、もっと容量の大きいFGを新規調達するか、あるいは手持ちで考えるなら…そうだ、出力コンに使っていたKZの47uFをパスコンのほうに持ってくれば低音の表現力を取り戻せる可能性がある。案外いい考えかも。

 同容量の中では他よりも大きいKZ、サイズの点で実装はちょっと難ありだったが、リードを斜めにしてなんとか見栄えよく取り付けた。


 さて、期待の音はといいますと、概ね目論んだとおり。KZで出力していたときよりも高域の表情は繊細だし、低音の明瞭さや力強さのほうもほどよく回復して、表現力は円満に充実した感じである。最終的にたどり着いたこの「電源系にKZ、カップリングにはFG」という使い分け、してみると実は海神無線が推奨している使用法なのでした。


 あらためて、改造済み基板全景。

 ここまでに触れていなかったけれど、TOSリンクモジュールも将来に備え50Mb/s品に交換してある。



 さて、そんなようなことをして遊んでいるうちに、いよいよやって来ましたよ、CAPRICE。

 PD-F25A改のアナログ出力の音で十分満足していたのだけれど、これを通して聴くCDの音は、情報量にしろ表現力にしろ、その更に上を行く。まあ「予想どおり」である訳ですが、いやあ、本当にもう言うことないですなあ(^^)。

 ということで、ジッターをいじった話は、これにて完結(たぶん)。