ECP-1をレストアしてCP-Yを聴く


 ECP-1とは、“Equalizer for Condenser Pickup system”、STAXのエレクトレットコンデンサーカートリッジCP-Yの専用イコライザーアンプです。2007年の今からすれば、30年ほど前の製品ということになります。内蔵されたニッカド電池で動作しますが、私のもとへやってきたこれは、さすがにその古いニッカド電池が液漏れして使えない状態でした。今回この電池を交換し、ようやく念願のCP-Yの音を聞くことができました(^^)。



CP-Yを聴きたくて

 スタックスのエレクトレットコンデンサーカートリッジCP-Yを入手したのは2002年、WE球DCプリを作り出す直前のことだった。もちろん中古である。コンデンサー型カートリッジについては別頁「その他>休眠中」でもCP-Xに関連して少しばかり書いているが、コンデンサー型などの振幅(変位)比例型カートリッジのEQカーブは一般的な電磁型カートリッジとは異なるので、専用のアンプがないと使えない。このときはEQアンプはなかったので、CP-Yの音を聴くことはできず、いずれEQアンプを自作することを心に決めたが、それからしばらくしてWE球による真空管DCプリアンプを作って結果が良かったため、以降はそちらのほうをいじってはレコードを集め聴くことが、我がオーディオ生活の中心になってしまった観がある。しかし、CP-Y用EQアンプの自作はずっとテーマとして思い続けていた。

 そのCP-Yの純正イコライザーアンプがECP-1である。自分で作るより前にそのECP-1がやって来てしまった。それでEQアンプを自作する気がなくなったとういわけではないのだが、手に入った以上、ひとまずはこやつで純正スタックスサウンドを聴いてみねばなるまい。

 とはいうものの、実は、これはすぐには使えない。
 ECP-1の電源は、本体に内蔵されたニッカド電池である。30年ほども前に製造されたニッカド電池が健康に生きながらえているはずもなく、筐体カバーを開けてみると、あな悲しや、痛々しき液漏れと腐食の痕…
 というわけで、まずやるべきはニッカド電池の交換である。というか、手を入れたところといえばほとんどそれだけなので、わざわざコンテンツにするほどのことでもないとも言えるが、もともとスタックスのコンデンサー型カートリッジには思い入れがあるので(「できるかな」のネタもいっこうに増える気配がないようでもあるし…(^^;)、無理に勿体付けて独立した項目としてこのページを作製することにしたんでした。

 それでは、電池交換の前に、ひととおりCP-YとECP-1について紹介しておこう。



CP-XとCP-Y

 旧スタックス、すなわちスタックス工業株式会社が世に送った最後のコンデンサーカートリッジがCP-Y(正確には最終モデルはそのtype2)である。その前のCP-Xまでは高周波変調型だったが、このモデルで初めてエレクトレット式が採用された。エレクトレット式は、大雑把に言えばエレクトレットコンデンサーマイクと同じようなものだ。
 これらコンデンサーカートリッジはともに、カートリッジそのものが発電するMMやMCとは異なり、それ自身では音声信号を発生できない。CP-Xには変調すべき高周波を発生するとともに、検波して音声信号を取り出す「発振・検波器」が必要だ。CP-Yのほうも、本体内に内蔵されたICを動作させるために外部から電源を供給する必要がある。コンデンサーカートリッジはその信号を振幅(変位)比例型カートリッジ用のRIAAカーブでイコライズする必要があるが、それらの「専用のEQアンプ」には単なるイコライジングだけでなくこうした機能も与えられているわけである。
 エレクトレット式のコンデンサーカートリッジは東芝が先に製品化していた。CP-Yの内蔵ICの内容はインピーダンス変換のためのシンプルなFETバッファと思うが、おそらく東芝製エレクトレットコンデンサーカートリッジに使われているものと同じだろう。


 STAXのコンデンサーカートリッジ2種。'70年に登場した高周波変調式の CP-X(奥)、そしてエレクトレット式のCP-Yの発売は'77年。

 CP-Xは、コンデンサーカートリッジの「コンデンサー」部、すなわちカンチレバーとそれに対向する電極がむき出しになっている。レコードの音溝に刻まれた信号は、この部分の容量変化として検出されるわけだ。CP-Yのほうも形としては同様の構造である。東芝のものは内部構造の図解を見ると、ダンパーよりも後方にコンデンサー部分が配置されていたようだが、ここはやはりカンチレバーそのものを電極として使ったスタックスのほうが理想に近い。
 CP-Yの場合、そうしたコンデンサー部の構造は、全体が金属カバーに覆われているので見ることができない。カバーの穴からカンチレバーの先端だけが覗いている。これは、電極に貼付けてあるエレクトレットが半永久的に帯電したままの物質なので、むき出しでは集塵器となり、レコードをかけているうちにホコリだらけになって使えなくなってしまうからだ。
 このカンチレバーが覗いている穴の隙間は、塵の侵入を防ぐために、内部に向かって円錐状に伸びたラバーでシールされている。スタックスでは「チップダンパー」と呼んでいるようだが、この部分の構造に関しては特許を取っているらしい(たまたまその米国特許文書
[PDF]を見つけたが、CP-Yの内部構造図も見ることができるので、興味のある人はご覧ください)。
 ここはエレクトレット式でカンチレバーに対向してエレクトレット電極を配置したい場合に悩ましい部分だ。このようなラバーシールがカンチレバーにまとわりついていたのでは、当然カンチレバーの自由な動きは妨げられるはずだから、信号の検出感度の低下は免れない。東芝方式のようにエレクトレット電極がダンパーよりも後ろにあれば大丈夫だろうが、それでは通常のMMやMCと似たような構造になってしまうわけで、スタイラス直近の振動を拾うことができるというコンデンサー型の大きなメリットを放棄したようなことになる。
 この点で、電極むき出しでもDCがかからないため吸塵の心配のない高周波変調式のほうが、より理想的といえるだろう。



ECP-1


 これがCP-Y専用イコライザーアンプECP-1。スイッチが2つ付いた細長い箱である。後方パネルにはごく当たり前に入出力のピンジャックと、アースターミナルが付いているだけだ。が、右ch入力ピンジャックの外側電極は、アースではなく、CP-Yを動作させるための正電源端子となっている。

 ECP-1の電源は内蔵されたニッカド電池だ。右は前面パネルだが、電源スイッチは“ON”のさらに上に“PLAY”というポジションがあり、レコードを演奏するときはここに入れる。“ON”の状態では電源は入る(パイロットランプが点る)が、音は出ない。実は“ON”では出力はアースにショートされた状態だ。つまり電源スイッチがミューティングも兼ねている。シンプルで要領のいい造りだ。
 もちろん充電装置も備えている。OFFの状態で“CHARGE”のスイッチ(これはモメンタリー)を押すと、リレーが働き充電状態となり、電圧が規定値に達すると、自動的にリレーが解除されて充電がストップする。説明書によると、満充電で動作時間は40時間となっている。
 ところで、ECP-1が開発された時代には、まだニッカド電池のメモリ効果についてよく知られていなかったようだ。説明書に「演奏しない時は常に充電するよう心がけてください。こうすることにより、バッテリーの寿命を長く保つことができます」とある。現代では、ニッカド電池やニッケル水素電池の使用上の注意として「『つぎ足し充電』はバッテリーの寿命を短くするので、できるだけ使い切ってから充電する」よう勧められているのはご存知のとおり。

 内部の空間のほとんどは電源関係で占められている。EQアンプは上面基板の背面パネル側1/3ほどの部分に過ぎない。大きなケミコンはバッテリーと並列になっている。



 さて、これがそのニッカド電池。単3サイズのセルを10本組にしたものが2パック内蔵されている。ということは、±12Vかと思われそうだが、これらは直列に繋がれ、+24Vとして用いられている。

 電池の下に液漏れの跡が見える。錆のようなものがついていたが、これはそれをこそげ落としてある程度奇麗にしてしまった状態である。

 ところで、この液漏れ跡の形、そしてシャシーの縁の傷の位置…かの“STAX Unofficial Page”のECP-1のページに載せられている写真のものと見れば見るほど…なんだけれど、私のところにやって来たこれって、もしかしたらひょっとしてあれそのものなのか???



 大きな空芯コイルはバッテリーからのアースラインに入っている。これはブロック型ケミコンともども後期型では省かれたようだ。



 シンプルなEQアンプ部は、左右で構成が異なる。振幅比例型のコンデンサーカートリッジの出力は左右で位相が逆になっているので、片chの位相を反転しなければならないからだ。右chは3石、左4石である。左右で回路構成の異なるアンプを、同等の音質に仕上げるのはなかなか難しそうに思える。

 バッテリーを外すとEQ基板がよく見える。奥が右chで、あっちを向いているコパルの半固定VRはゲインバランス調節用。ジーメンスの積層フィルムコンが多用されている。


 両chとも、初段は2個のNchFETによる、真空管回路でいうところのSRPPのような回路だ。5極管特性のFETで3極管のSRPPと同じ動作になるのかどうか私にはよく解らない。使われているFETは2SK68A。後期型では2SK117に替わったようだ。
 2段目は、右はPchFET(2N5460)によるソースフォロワーである。ドレインは初段下側のソースに接続され、電流的なNFBがかかるようになっている。ソース抵抗と直列に半固定VRが入っており、これを調節することでその電流NFB量を増減させ、ゲインが小幅ながらコントロールできる。カートリッジの左右の出力バランスを補正するためのものだ。
 同じ2N5460を、左chの2段目ではソース接地で使っている。つまり、左chは正相アンプ。これで右chと位相が逆になる。ドレインの負荷抵抗はやはり初段のソースに繋げてNFBを掛けている。これだけだと初段と合わせて3石だが、実はこの2N5460のソースがあと1個の2SK68Aのソースと繋がっている。このK68Aはゲートが電源電圧を抵抗で分圧した点に繋がっているだけ(ドレインは+24V)だ。このような回路は、ひとつの例を除いて他では見たことがない(私が無知なだけかもしれないけれど)。設計に携わったのは、現フィデリックスの中川伸さんだ。「ひとつの例」とは、その中川さんが、MJ誌'85年7月号の特集「コントロールアンプはこうなる」の中の記事で紹介したシンプルなフラットアンプの回路である。こちらは初段がSRPPでなく定電流負荷で、正負2電源構成である点が異なるが、2段目の骨格はよく似ている。




手術中

 それでは作業にかかるとしましょうか。もとのバッテリーを外すと、漏れ出た液の成分が固まった錆のようなものがパラパラと落ちる。もちろん奇麗に取り除く。しかし、これってやっぱりカドミウムを含んでいるのかね。うう、体に悪そう…

 外したニッカド電池。コネクタの端子のひとつが、ブキミに真っ青の錆のような粉を吹いている。漏れ出た液が毛細管現象でケーブルを伝ってきて端子の金具を侵したのだろうか。これは再利用したくない…

 さて、替わりに入れるのは、と…まあ“ちょっとDC”的にはやっぱりどうせならK式指定のものにしたいと思うわけでして。そういう理由でもなければ、自分でやろうとなんかしないで大人しくSTAXさんに依頼するのが吉というものだろう(もっとも、バッテリー交換は以前は対応してもらえたようだが、今やってくれるのかどうかは知りません。STAXのサポートのページにもECP-1については載っていませんね)。

 というわけで持ち出したのは、ネットオークションで安く仕入れたパナソニックの、ニッケル水素全盛の今はもうディスコンの“ニカド700”こと、P-3NPSである。金田アンプが電池式GOAだった時代には標準の電池はネオ・ハイトップだったが、真空管DCマイクのヒーター電源など、持ち運べる必要があってなおかつ大きめの電流を要する用途にはニッカド電池が用いられた(新単行本の管球式録音アンプでも指定されているのはこれ)。当時松下のニッカドは、1000mAhとより容量が大きくなったP-3SPSが既に発売されていたのだが、金田氏の指定はこの700mAhのほうなのだった。より性能のよさそうなものが簡単に手に入るのに、わざわざスペック上は見劣りするほうが起用されているのは、ひとえに音がよいからに違いない。ま、言及がないので勝手にそう思ってるわけですが。

 700mAhという値は、この3倍以上の容量を持つニッケル水素電池があたりまえになった今から見ればずいぶん小さいようだが、もともと内蔵されていたものには「三洋」の名前と一緒に400mAhとあったから、これでも実に7割5分増しである。ということは、ECP-1の説明書に記載された40時間という動作時間は、これに交換することで一挙に70時間にまで延長されるわけで、充電がごく簡単な操作でできることもあり、実用的にはまったく文句のないところだ。
 あと、もっと容量の大きなニッケル水素電池に食指が動かない理由として、RSのカタログに載っていた充電池についての説明の中に、ニッケル水素電池を直列にする場合は10本まで、ニッカドなら20本まで、とあったということもある。理由は不明。多く繋ぐとどのようなワザワイがあるのか、ちゃんと書いておいて欲しいものだ。ともあれ、今回は20本が直列になるので、ニッカドのほうがより安心、というわけ。


 さて、もちろんこれをいつものK式スタイルでハンダ付けで連結して使うわけだが、念のため申し添えておくと、パッケージには「ハンダ付けはしないでください」と書いてある。でもしちゃうもんね〜、自己責任、自己責任と…よいこのみなさんは真似しないでください。
 ハンダ付けがよくない理由は、熱によって正側電極の構造が壊れる可能性があるからであるらしい。A月電子などで売られているハンダ付けのできるタブ付きの電池を使えば無問題なのだが、あくまでP-3NPSを使いたくてやっているわけなので、そういうのは端から選択肢にない。とにかく過熱しないようひたすら気をつけて手早くやろう。

 では、とりあえず電池を10本ずつ「固め」よう。オリジナルのように熱収縮チューブの大きな奴で塊にできればよいのだが、売っているところを知らない。ボール紙で箱でも作って収めるのが無難か、といったんは思ったが、もっと手っ取り早い方法を思いついたぞ、ええい、両面テープでくっつけてしまえ〜♪

 というわけで、本を並べて直角を作って、電池がきちんと揃うように貼り合わせて…


 ほうらできた(^^)。使った両面テープは10mm幅の強力タイプ。3mmほどの長さに切って、接触し合う部分の上下2カ所を留めている。この程度のことでも、軽い単3サイズだとかなりしっかり塊になっている感じだ。

 これであとはハンダ付けすれば完了だ。しかし考えてみたらオリジナルのように2つのパックに分ける必要もない。20本をひとまとめにしても問題はなさそうだし、ハンダ付けもラクにできる。さて、どうまとめるか…

 ホームセンターに行って、使えそうな部材を物色しつつうろついて考えたのがこれ。3mm厚のヒノキの板を、間に1枚、周囲に4枚使って、10個ずつの2つの塊を囲ってマジックテープのバンドで締め付けた。ちょっと野暮ったい、が、まーよかろう。
 電池間の配線には7本より線を使った。ダイエイ電線ではかさばるからだ。7本より線は細く思えるが、基板のパターンの箔の厚みを考えると、むしろずいぶん太いとも言える。EQアンプの電源には十分だろう。
 ハンダ付け自体は、気を遣うべき+電極のほうが予備ハンダも簡単に乗ってやりやすかった。−電極のほうは熱が回り難いせいか、少々手こずった。

 黒い線はもちろんアース、赤が+24Vである。もう1本の白い線は+9.6Vのところから引き出している。これはCP-Yの電源用だ。
 緑青のような異物が吹き出たコネクターはもう使う気がしなかったので、外して電池からの線を直接基板にハンダ付けすることにした。サービス性は低下するが、そう頻繁に電池を外したり付けたりする機会もないだろうから、よしとしよう。だいたいこのほうが音の点でも絶対に有利なはずだし。



手術成功

 無事インストールが完了した。電池の上下に絶縁と隙間埋めのためにスポンジゴムのシートを挟んでいるが、生ゴムなので、経年劣化でぼろぼろになって崩壊するとイヤだからラップでくるんである。
 



 ということで、ついに念願のCP-Yの音を聴ける時が来た。が、さしあたりECP-1を置くところがなくて、応急にスピーカーの上に、インシュレーター代わりにプチプチシートを折って敷いてセッティング。さあ、どんな音が…

 う、美しい…あ〜、そうだよ、この音だ、私のオーディオのルーツは。自作CV851シングルでドライブする平面バッフルのP-610の前にちんまりと座ってCP-Xの奏でる音に聞き耳を立てていたあの頃を思い出しました。もう言うことないです。って、これじゃ読んでる人には解らんか(^^;。
 普通のMMやMCとの違いというのは、ヘッドフォンでのダイナミック型とコンデンサー型の違いとそっくり相似形と言ってよいと思う。ひ弱なのではない研ぎすまされたやさしさで奏でる音楽が聴覚にしみわたる。う〜ん、ヤバい、DL-103ではもの足りなくなってしまう。しかもこの古いECP-1がこんないい音だと、新たに専用EQアンプを自作する意味がなさそうに思えてきた。

 はて、そういえば、今やうちでは入り口から出口までスタックスで聴くこともできることになったのだなあ。
 というわけで、もうひとつ遊んでみました。コンデンサー型ヘッドフォンSR-X/mk3と、ドライバーアンプSRA-12Sを引っ張り出してパワーアンプと繋ぎ替え。SRA-12Sもまた、ECP-1とほぼ同時期の中川さんの作品である。数年前に入手したが、スピーカーの箱を作ってもらった方のご近所にあるオーディオショップで永らくデッドストックとして眠っていた。ケミコンが心配だったので、全部自分で交換済み。
 やはりオールスタックス、相性はよくて、情報量の多い瑞々しい音が聞けた。長時間は御免だが、たまにはヘッドフォンもいいものだ。


 しかし、コンデンサーカートリッジはやっぱりすばらしいけれど、今となっては交換針が手に入らないのが残念でならない。ずうっとこれで聴いてはいられないのだ。針の減らし甲斐を考えると高音質盤しか聴く気がしなくなるなあ…電波を出すCP-Xは今では売り物にならないのかもしれないけれど、エレクトレット型なら無問題なはずだから、STAXさん、CP-Yを復刻してくれないかなあ…






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 その後わかったことだが、どうもこの左右で構成が異なるEQアンプは、ソースフォロワー送り出しの右chが、左と較べて僅かに出力レベルが低いようだ。これはゲインバランス調整用の半固定VRでも調整しきれない(というか、このVRはそもそも原理的にあまり効き目がなさそう)。シミュレーターで試してもみたが、やはりそのとおりの結果が出た。そして、出力レベルばかりでなく音の出方についても、どうも右のほうは大人しい感じがするのだった。

 そこで、ちょっと改造を試みた。ソースフォロワーに使うFETは「|Yfs|が小さいと充実感がやや減退する傾向になる」という金田氏の言葉があったので、ソースフォロワーの2N5460を2SJ44に換えてみたのだ。|Yfs|がそこそこ大きく、その割には入力容量が小さめなので(P型のJFETとしては、だけれど)適性がありそうに思える。
 聴いてみると、なかなかいい感じだ。当然ながら出力レベルが上がったりはしないが、より音がしっかりして細かいニュアンスもよく聞こえるし、音質が左chとバランスするようになったように思える。

 調子に乗って、中川さんがマイクアンプに使っていた2SJ104が手持ちにあったので、さらにこれも試してみた。が、こちらはダメ。ある程度予想していたが、|Yfs|こそより大きいものの、巨大な入力容量がセットになるので、微小電流で動作している初段がドライブしきれないのだろう。音の微細な部分がうやむやにされてしまうような感じ。というわけで、結局最初の2SJ44に落ち着いた。



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 さらにその後。

 右chの信号レベルが低いのがやはり気になってしょうがない。そこで、回路定数をいじることで改善を試みることにした。具体的にはNFBの抵抗を変更するのだが、併せてEQ素子のCの容量についても若干の変更が必要になるので、抵抗1個換えて完了、というような訳にはいかないものの、上手く行けば根本的な解消が可能となるだろう。出力のソースフォロワーの石も、2SJ44から再びもとの2N5460へ戻せる。

 オリジナルの抵抗は、たぶん金属皮膜と思われるものと、一部カーボン皮膜らしき白っぽいものが使われている。POD-XEにも同じ品種が使われていたが、実はこれらは磁石にくっつくのであまり嬉しくない。この際だから、定数変更のついでにこれらを非磁性のものに換えてしまう。オリジナル状態を良いコンディションに保って使っていくのもいいものだと思うけれど、私の場合ついついこういう方向に行ってしまうんですなあ。

 ニッカド電池を外せば作業はラクだが、そのまま狭い空間にピンセットで部品を差し入れて手術した。新しい抵抗の品種は混成で、RE35,RE55,AMRS,TAF,Vishay-Draloricといった具合。使い回しのRE55はリードの長さが足りず、一部パターン面に実装。

 この改造に手をつけてから気がついたのだが、そもそもこのECP-1の右chの回路、負荷によってゲインが変わってしまうのだ。つまるところ、負荷インピーダンスが低いとゲインが低くなってしまう。
 右chの出力段はソースフォロワーなのだが、そのドレイン電流が初段のソースにフィードバックされる構成である。負荷インピーダンスが低くなると、ドレイン電流振幅が大きくなる。つまり、帰還電流の振幅が大きくなるのでゲインが下がる。ソースフォロワー自体は出力インピーダンスを低くするはずだが、この回路では結果的に電流出力アンプのような振る舞いをすることになる。私は20kΩのボリウムを繋いでいた訳だが、この機種が現役だったころには、普通のコンポーネントのライン入力インピーダンスは50kΩとか100kΩといった値が一般的だったと思う。20kΩはおそらく想定外だろう。右のレベルが小さくなる訳だ。
 左chは普通のNFBのかかったドレイン出力なので、こうした現象は起こらない。やはり左右で回路構成が異なるというのは、なかなか難しいものだ。


 というわけで、定数変更の方針がよりはっきりしてきたので、既に付け替えたものを再度変更する。
 20kΩの負荷を繋いだ状態で左chとほぼ同じゲインが得られるように初段のソース抵抗を選べばよいことになるわけだが、もとの値から2割ばかり小さいのでいいだろう。これに伴い、並列になるEQ素子のC,Rも変更せねばならない。Cについては不足分の容量のスチコンをパラに追加することで対応する。
 ついでに入力の0.022uFもスチコンに換え、また出力のカップリングCにも表現力増強を期してスチコンをパラにし、電源のパスコンにもスチコンを入れて…といささか悪ノリ気味(^^;。いや、しばらく前に中古のスチコンがたくさん手に入ったもので、使えそうなところにはどんどん使おうと。

 パターン面はこんなことに。“取って付けた感”、横溢(^^;。


 スタックスのHS-7/type2はかなり気に入っているシェルだが、常用のアームに付属していたものの他にもオークションで手に入れて、今では複数持っている。いちばん最近やってきたのは、あまり奇麗でなくて安く落札できたものだが、既にピンにリードをハンダ付けした跡があったので、心置きなくハンダ付けできる。というわけで、やってみた。
 リードチップはOヤイデから購入したものだが、実は最初ハンダ付けを失敗した。しっかり付けようと思ったら、ハンダが表面張力で筒になった部分に少し流れ込んだのだ。それでもほんの少しだったし、カートリッジのピンが入る余地は十分あるだろう、と思ったのだが、流れ込んだハンダのせいで筒が拡がり難くなってしまっていて、結局うまくピンに嵌らなかった。
 加工前にいったんチップにカートリッジのピンを挿して筒部分を拡げておき、ハンダ付けの際は、筒部分に流れ込まないよう少量のハンダで仕上げるのがよいようだ。ということを学ぶのに無駄にしたリードチップが勿体なかったが、まあ授業料ですな。

 市販品に倣って、チップとリードのハンダ付け部分を熱収縮チューブでカバーがてら色分けした。

 リード線にはライカル線を使ってみた。材質はOFCとかではなくて単なるタフピッチ銅らしいが、特にヘンな音はしていないようだ。7本より線にチューブを被せたもののほうがよいかもしれないが、とりあえず工作がし易いのがよろしい。写真の赤と黒がアース側リードだが、何故アース側に赤を使っているかというと、CP-Yの場合はこれが+9.6V給電線なので。
 HS-7は本来シェルの指掛けをカートリッジと一緒にネジ留めするのだが、共振を避けるべく指掛けは省略している。

 ところで、写真のCP-Y、上のほうの写真に写っているものと側面のナンバーが異なることに気づいた人はたぶんいないと思うが、実はしばらく前にまた別のを入手したもので、針の程度がきわめて良好なのでした(^^)。


 さて、工作完了、さっそく試聴。問題の左右レベル差は…ふむ、概ねよいようです。ふぅ、これで安心して音楽に浸れる。異なる回路構成から来る左右の音質差は、あるのかもしれないが勘ぐったりしないで聴いているぶんには判らない。耳のいい人が聴くと判るかもしれないが。非磁性抵抗とスチコンによるドーピングの効果もそれなりにあったようで、繊細な表現に磨きがかかって、いっそう澄んだ音が出ている感じだ♪。